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【林業の豆知識!】地拵えの種類とメリット・デメリット①


今回は、林業に携わる皆さんや、興味のある皆さんに「地拵え(じごしらえ)」という作業の種類についてご紹介いたします。

地拵えは、安全かつ効率よく、苗木を植えられるように、伐採跡地(山に立っている木を伐った後の山)に残された伐倒木(倒された木)や枝などの林地残材を整理する作業です。 地拵えを怠ると苗木を植える時の事故に繋がったり、効率が悪くなることがあります。一見、目立たない作業に見えますが、とても重要な仕事です。

そして、地拵えのやり方次第では、「土壌流亡を防ぎ、林地保全を促進する」というメリットや「地力(苗木を育てる土壌の能力)低下を招く」というデメリットを持ちます。

1.「潔癖地拵え」と「粗放地拵え」

地拵えは、大きく「潔癖地拵え」と「粗放地拵え」の2タイプに分かれます。

潔癖地拵えとは・・・

地表面を徹底的に除去する地拵えの方法です。灌木(かんぼく、低木のこと)などの侵入や再生が遅れるため、下刈り(山林に植えた苗木の周りの草を刈る作業)を省略することができます。

地表面をレーキ(林業用機械)でかいたり、残された根や落葉層まで除去し、特に天然更新(天然力を活用して森林の再生を図る方法)を促進する場合は、鉱物質土壌まで露出させます。また、散在する枝条(しじょう、木の枝のこと)を集め、焼き払ったり、ブルドーザーやトラクタ 等で耕耘したり、ササの地下茎を剥ぎ取ったり、徹底的に地表面を除去することも。
 
ただし難点として、地表面を除去するため、特に鉱物質土壌を露出してしまうと、地力の低下や表土流亡の発生招く恐れがあります。
枝条や刈り払った有機物を利用し、地表面を覆うことで、地力の低下や表土流亡の発生の対策・緩和に繋がりますが、地表面を除去した後、再び、枝条を集積して地表面を覆うとなると、労力・コストは大幅に上がります。

粗放地拵えは・・・

必要最小限の作業しか行いません。(一般的な地拵えが、これにあたると思います。)だからと言って植栽作業や移動に支障をきたすような仕上げ方はNG。雑草木の除去程度が低いと、萌芽能力が高い植物や再生能力が早い植物に、植栽した木が覆われてしまいます。

難点は、作業の仕上がり加減が作業員さんの能力や経験値に左右されやすいと考えられるので、雑草木やつるが繁茂し、視界が悪くなる、残された材や枝条が植栽や下刈り作業の障害になりうるということです。

一方、潔癖地拵えと反対に地表面の露出が比較的小さいため、地力の低下、雨滴や地表流下水による表土流亡が少ないという点があります。

もちろん、どちらの地拵えがイイというわけではありません。現場や植生状況に応じて、どちらが最適か、部分的に潔癖/粗放を使い分けるべきか、等を判断することになります。

ただ、コストという現実問題がある以上、基本的に粗放地拵えになると思いますが、下刈りの省略化具合によっては、潔癖地拵えの方がトータルコストは抑えられるかもしれません。

初期に集中して投資するか、分割して投資するか、地形・地質・植生など現場の条件によって、トータルコストが抑制できるのか、そういう研究報告があると、経営判断の1つの指標になると思うんですが・・・。(検索したところ、めぼしいものは無かったんですが・・・いい情報があればコメントなどでぜひ教えてください!)
それと、地域によって、高性能林業機械を使った地拵えを行うところもあると思うので、それは潔癖地拵えになるのかも・・・。

2.下層がシダに覆われた山の地拵え

ちなみに、「下層がシダに覆われた山はどうすればいいですか?」と質問をされることがあり、そのような質問には、以下の様にお答えしています。

①シダを弱らせるため、徹底的に下刈りを行い続ける。時期は6~8月。シダの再生状況を見ながら年2~3回繰り返し、シダが枯渇するまで数年続ける。

②シダの地下茎ごと焼き払う。(立木あると無理だけど。)

③重機類を使い、地下茎を除去する。(立木あると無理だけど。)つまり、時間やコストが掛かりますよ。というお話をさせていただいています。

④その上で、繁茂しているシダがウラジロだったら、良好なウラジロが採取できる様、管理する。成功すれば、木材生産よりも利益がイイかも。(基本、立木がないと難しいかも。)

邪魔者がお金に替わるかも・・・というお話もさせていただいています。

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(※こちらの記事は、『山いこら♪』2020年04月10日 | 林業・森林整備・現場技術に関するお話「地拵え 種類」で投稿された内容を、許可を得て一部再編集して投稿しております。)

ライター情報(リライトのみ)

■氏名:奥川季花
■所属:GFnote編集部編集長
■紹介文:和歌山県出身。高校時代に紀伊半島大水害で被災した経験から、土砂災害リスクを下げる山づくりに関心を持ち、林業に関わるようになる。土砂災害リスクを減らすために山と人との関係をデザインするソマノベースという事業を立ち上げる。現在はやグリーンフォレスターズや造林事業を展開する株式会社中川などに勤務している。

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