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無理?でも「通訳者になりたい!!!②」

大炎上・大やけどの初通訳のあと、どうしても状況を変えないといけないので、帰国子女の友人のMMさんにご協力を願い、自分がリードできる通訳の枠組み作りを必死で考えた。(もしご興味のある方は「無理?でも通訳者になりたい!!!」前回作を読んで頂けたらです。)

どういうものかと言うと、こちらが相手側、海外社員のSkype上での会話に一定制限を加えさせてもらう、つまり私が全部話の進行役をして、会話を掌握できるようにする、というもの。

「こんにちは。私はご存知のように、前任者から変わったばかりの通訳者で、まだこの会議に慣れていません。まず、それを少しお含み頂き、こちらがお聞きすることにだけ、答えてもらう、という進め方、OKですか?」こんな感じ。

もちろん、こちらの社員の方々に先にお話し、了解を得た。そこはやりやすいようにやってくれ、と会議メンバーのリーダーの係長さんは行ってくださった。後のお二人、男性社員、女性社員も協力くださった。もちろん相手の海外社員さんにも誤解の生まれないよう、笑顔でお願いする形に。

この辺りでそろそろ一度某通訳学校の話を挟まして頂く。私ってやはり少し、面白いエピソードに恵まれてるかも。まぁ個人レベルの大した事ではないが・・・。

前回に書いていた、この通訳仕事の前任者、某通訳学校の講師、私が後任になります、ってなった時、そりゃ勉強が私には必要、私は某通訳学校に入学する、ってことをその時その方の前で決めた。そうしたらその方も、「是非お待ちしています!!」って。

そう、ほんとに待っていてくれた。超びっくりした。初日教室に行ったら、再会できた。はい、まさかの私のクラスのReadingの先生・・・。

ほんとに偶然で、多分向こうは、担当クラスの名簿見て、もし私の名前がご記憶にあったら、微妙だったと思う・・・。「仕事のこと、話し掛けんといてや~」オーラはまぁまぁ出ていた。

すぐに個々のカウンセリングがあり、特別な話はできません、って言われた。こっちもそのつもりである、何故なら、進級判定はこの学校ではめちゃくちゃsensitive(敏感な)話で、先生と私が仕事の前任者後任者って言うのはほんとに二人だけの秘密。(なんだかドキドキする表現、でもめっちゃ女同士)その事は1年半の通学中も今も関係者には口外していない。

「こんな偶然があるくらいだから、この仕事は運命的で、私は通訳者として成長できるのかも☆!」。なんでこんな風に常に意味ありげに物事を捉えられるのか・・・、自分でも都合のいい感性だな、と思う。で、大抵は凡事で終わるのもまた私。(この通訳学校戦闘記は、もう全然単体で書けるのでそれはまたいつの日か。)

つまり、通訳仕事に行きながら、通訳学校にも通い始め、もう気持ちだけはグイグイ。もちろん一回目の失敗は震えた。でもその対策を考えて、もう失敗はダメ!の2回目を迎えることに。

お相手は前回の大やけど、同じインドネシアの社員さんだった。もうすぐに切り出した。

(先にも少し書いたが)「前回は私の力不足でご迷惑をお掛けしました。ご存知のように、私はまだ前任者から交代してすぐなので、少しビジネスの話もまだキャッチアップできていません。私がまずお尋ねして、~~さんが答える。それもできれば2文くらいで、一旦切ってもらっていいですか。先に~~さんの話を一旦通訳しますから。」と。

基本的にはあの仕事は、表を送ってきているのも海外支社だし、会議の発信自体は、向こうが、という形。その話を聞いて日本の社員さんが思うところを突くような形。だから絶対海外社員さんの話は聞き取れないといけない。

「今日のtopicを2,3文でまず話してください。」

相手が話す、私がキャッチする、キャッチできない時はYesかNoで答えられるような質問で内容を測る。

少し時間はかかるし、確かに独特なやり方。そんなの通常の通訳じゃないのは分かっている。カッコも悪いが、聞けなくて逃げ出すよりはマシなはず。

社員の方々の理解もあり、この形でなんと2回目はそれなりに討議が進み、社員の方々も、話し合いの疑問点が解消されたし良かった、と。

月に一回はタイの海外支社とも会議、月に3回くらいの通訳だったが、一回目の大炎上ほどの炎上はもう起きず、奇跡的に4月、5月と回をこなせて行けた。

今のコミュニティ通訳でもそうであるが、相手がわーーーって一方的に話すのを、聞き取れる人はそのまま聞いて!だが、大抵相手はスピードアップしてくる。私はもう全然そこまでは無理。途中で「ちょっと一回話を確認させてもらえますか?」で切る。そして、こうですか?あーですか?とYes/No形式で質問する。

「No~,」って言われたらビビるにはビビるが、もう一回集中して聞くと、掴めたりすることが多い。会話の主導権は相手に全て握らせ切らない。私がまだコミュニティ通訳の端っこで、職員の方々に疑われながら?も、今の仕事ができているのは、やはりこの一回目の通訳業で学んだのだと思う。

某通訳学校もそれなりに順調にスタートして、この仕事を三年続けられたらだいぶ力がつくな、そう思いだしていた。

でも正直に吐露すると、出勤の3日前くらいから寝つきが悪くなる。そう、前回は乗り越えられたが今度は大丈夫かな、また1回目みたいにならないかな・・・。前日は良く寝ないと絶対聞き取りに影響するのに、夜中まで何だか頭が冴えて・・・。力も無いのにそんな仕事に就くから。震えるようにあの期間暮らしていたかもしれない。

「DMMやるか?インドネシアの先生とかいるで。」心配していつも話を聞いてくれていたソウルメートのMiちゃん。彼女もオンライン英会話をしていたのでそう言ってくれたがあの頃は馴染みが無く。今もしこの仕事ができるなら、毎日インドネシア先生やりますやります!って感じ。多分アジア訛り英語に慣れられると思う。

苦しみつつも6月頭になり。契約は3か月更新、何とか一回目をクリアしたかった。そんな時派遣会社から一本の電話が。

「ダメだったら言ってくださいね。いつもの定例会議の後に、新しいインドの工場の監査の通訳があって。向こうは~~さんで、って言われていますが、続けてだし、きつかったら言ってください。」

正直、「私で」って言ってくださったのが嬉しかった。やっと定例会議を何回かこなせて、少しは認めてくださったのかと。でも、監査?大体あまりそこが分からない。いつも通り9時入り、11時定例会議、13時から監査に向けての会議、お相手はインド人(もうここで無理って気付け!)ここまでしか情報は無く。

時間が戻るなら、本当にこの時に戻って「続け様はちょっと・・・、粗相があってもいけないので。」粗相をする前に言うべきだった。(ビジネスシーンの粗相です・・・一応ね、やばかったと思うが)

中心担当者はいつものメンバーの女性社員だった。この方良い方だと思うのだが、なかなか男勝り、普段助けて頂くことも多かったのだが、そうやな~、対女性の対応は慣れているつもり、あの手のタイプの人にどう対応すべきだったかとか、そんな余裕はあの時の私に無かったな~。

その日は朝からイライラされていた。いつもは9時に着いて10時45分まで社員さんには会えない、その15分にセッティングしながら、「今日はどの辺りの数字のことを聞かれるんですか?」「話題になりそうなことはどの内容ですか?」片手にあの分かりにくい数字の表を持ちながら必死で聞く。

いつもは時間があるので、翻訳者の方に一応挨拶に行っていた。この方しか会社内で同業者じゃないから。この方から「次の会議、多分この話題になるよ」とか聞かせてもらえたりもして。取れる情報はしっかり取っておかないといけない。

でもその日は、その女性社員さんが私を朝から探されていて。「もうどこ行ってんの!こっちは一分一秒惜しいんやから!」すみません、としか言えなかったが、いつもと雰囲気が違う、言い方もきつく。その方が監査の担当者だからもちろん無理もない。「もういつもの定例のは適当でいいから、この資料見て」と。

もちろんこの日までに、監査とはどういうことで、どういう用語を知っていないとダメとか、調べられることは調べて。その新しい工場の事はもちろんまだプレスリリースもされていないから、本当に事前準備はほぼできない。出勤してからしか資料の見れない通訳。これは正直きつい。見て、と言われてみても、新しい工場の図面等、これまた??。

「今日はこの先この会議をどう進めていくかが議題だから、図面は気にしないで。」全部当たり前に英語の資料だし、agenda(議題)も載っているが、正直2時間だけで定例会議&この監査の内容を網羅するのは・・・、で。

定例会議はいつもより力無い感じで終わった、私というより、その女性社員の方も質問は一切されず。きっと頭は監査でいっぱいだったと思う。何故か珍しくその日はマニキュアをされていて。今日は美の追求が深いな、と思うお化粧具合だったり。(そんなんだけは緊張してても気付く変な性格)

昼になって監査の会議が始まりびっくりした。部屋がいつもより大きい。え、で、そこにドンドン知らない社員さん入ってくる。机も大きいし。

「え、いつもより大規模な会議?・・・」テレビの画面も遠いし、お饅頭マイクも遠い。それより、え、何人の会議なん??で。

結局部屋にはいつもの方々プラス7名くらいで10名、ビビったのが、タイ支社やインド支社の責任者、本社からも担当者が二人ほど、Skype参加で・・・。

これって、まさか一回目みたいに、私がイニシアティブ握れなくなるパターンなんじゃ・・・?

この人ら全員に「私はビギナー通訳者です、私が聞いた質問だけ答えて・・・」なんてアナウンスできないやん!!

女性社員、いつもよりえらい饒舌、他の男性社員に高い声で陽気に話している、「あの、~~さん、この会議いつもみたいに・・・」って話しかけたら、女性社員の方、「あ、ごめん、今日は忙しいから、あまり質問しないで。」えーうそー、その男性社員さんと昔話してるでー、今。

濃い目の化粧も、資料を握る手から見えるマニキュアもそういうことか。色気という意味ではなく、それは彼女にとって大切な舞台だったんじゃないかと思う。男性社員と肩並べて頑張ってきた人。私が家で呑気に専業主婦している間もこの人は戦っていたんやんもんな・・・。

どうしようかな・・・と思っているうちに、もう始まってしまい・・・。

聞こえてきた英語は・・・、そう、今や「Hinglish(ヒングリッシュ)」として英語界で確固たる地位を築く、インド英語・・・。

もうあれは英語じゃないよな、って誰か分かる人に言いたい。あれは違う、もう英語って思って聞いたらあかん。

そんなのより、もう話も背景も何も分からない。まさかの大やけどどころか、まだ傷もふさがっていないのに、大火の中に放り込まれて・・・。

聞こえなくて一瞬、間ができ。それが助かったのか、奈落の底への切符だったのかは分からないが、本社から参加している若い男性社員さんが高い英語力の保持者だった。

「~~くん、話分かる?」女性社員の声。「あ、はい、概略で良ければ・・・。」背景知識もある上に、この方聞けているだけじゃなく、全然私より喋れた。会議中誰かが「すごいね、~~くん、留学確かしてたよな。」「はい、一年だけ。」皆が普通に話している中、私だけ時間が止まっている。

会議が少し進みだすが、「この人、通訳者やんな??」不思議な疑問は誰の心にも起きてて当然。女性社員も、本社のEnglishくんも、進めつつ私に気使ってくれている感じがすごく分かり。

勿論必死に、もう全力で聞くけど聞けない、聞き取れない、何の話か分からない。でも皆が私なんかに気を遣ってポーズ、変な間ができている。もうあかん、と思った。

「~~さん、すみません、本当に恥ずかしいですが、私聞こえません、私は気にせず聞かれたことを訳して会議を進めてください、そのまま英語で思う事も話されてください。」マイクに近づいて言った。

恥ずかしいなんてそんなもんじゃなかった。泣き出していいなら、逃げ出していいならそうしたかった。でもこの方らの大切なビジネスの仕事の時間を私なんかの、身の程知らずのバカの通訳のために潰したらあかん、そう思って、皆に聞こえているその中で職務を棚上げする、そんな考えられないような事しかあの時の私にはできなかった。邪魔したくないっていう思いだけだった。でも存在自体が邪魔な事、なんで4月に気付かなかったのか・・・。

「あ・・、分かりました、では・・・」Englishくん、ごめんなさい、でもありがとう、あなたがいなかったらどうなっていたかと思う、でも本当に今思い出してもあんなに情けない瞬間は無かった。

何だろう、なんだか視線を感じた。あまり上げたくない顔だったが、ふと目線をあげた。

向かいに座っていた男性社員、不思議そうに、いや、呆れてるって感じか。

「何なん、あんた。」

そんな無言のセリフが初めて会う男性社員さんの表情から聞こえてきた。

私なんでこんなことを経験することにしてしまったんやろ。

大丈夫かな、乗り越えられるかな、と思った私の初通訳仕事。

でも大やけどの傷口に塩をすりこむような痛みと共にwill be fired, 「クビ」へとこの後進んでいく。

でも本当に辞める原因になったのは、私のこの失態のせいではなく、実は私の社会人としての未熟な姿勢からだった。

今もそのことは大きく反省している。(またまさかの③に続く、書きすぎやねんって!)

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