台本を公開しながら更新して完成させてみる~『ありの一決』という台本⑤~

『ありの一決』          作 湊游

[登場人物]
トゲっち(刺 倫太郎:トゲ リンタロウ)
ジバさん(治場 環菜:ジバ カンナ)
ムネオ(赤棟 薫:アカムネ カオル)
ナベ(鍋蓋 遼:ナベブタ リョウ)
ヒメ子(家姫美智子:イエヒメ ミチコ)
仙人(網目奏:アミメ カナデ)
会長(葉切潤:ハキリ ジュン)
マスター

キャンプ場にあるコテージを模したような空間。キャンプ好きが高じたマスターが経営している飲食店が舞台。雰囲気は内装だけで実際は街中にある。ただし、都会というほどではなくいわゆる郊外と呼べるような地域に存在する。
表通りに面した側に、入り口の扉と窓に面したカウンター席がある。カウンター席の端側にはノートが一冊あり、来店者が好きなことを書ける自由帳として使われている。店の真ん中には巨大なテーブルがあり、さらに店の奥側にもカウンター席がある。そのカウンターの開口部を挟んでキッチン。そしてトイレに続くドアと、店のある小さなビルの2階以上に向かう階段へ続くドアがある。壁にウォールハンガーがあるが、これは最近になって仕様を新しくしたもの。


 
会長は傘の水を丁寧にドアの外に払ってから傘入れに立てかける。
 
ナベ あ……。
ジバさん おお。
ヒメ子 ……。
マスター いらっしゃい。よく来たね。
会長 皆さん……お久しぶりです。ずっと連絡もせんで、すみませんでした。
全員 ……。
ジバさん まあ座りよ。謝罪会見みたいやん。
ナベ そうっすよね。やっとみんな揃ったってことで。
会長 ……うん。
仙人 病気は良くなったのか?
会長 病気ってわけじゃ。
トゲっち マスターまだスープあります?
マスター 用意するよ。
仙人 スープ?
トゲっち うん。さっき出してもらってて。
マスター 網目くんの分もあるからね。
仙人 ありがとうございます。
 
話が途切れ、また沈黙が支配する。
マスターがお湯を沸かして準備をする音が響く。部屋の外は弱まらない雨の音。
 
ヒメ子 ありがとう来てくれて。
会長 うん、まあ……。
ヒメ子 ……やっぱ無理でしょ、もう。
ナベ 無理ですか?
ヒメ子 うん。潤にちょっと会えて良かった。
会長 分からんけど、じゃあ良かった。
ヒメ子 今はみんなちょっと分かるんじゃない?
会長 ちょっと?
ヒメ子 潤の気持ちというか立場というか。
会長 えっと、その……。
ジバさん とりあえず今この空気は、会長のせいちゃうよ。
会長 ……そうなん?
ジバさん うん。
会長 そう。
マスター 潤ちゃん、注文はどうする? 何か飲む?
会長 あ、ありがとうございます……けど、ごめんなさい、お水でいいです。
マスター かしこまりました。
会長 すみません、皆さん。今日は相談というか提案というか、話そうと思って来ました。
トゲっち うん。
会長 大学の頃にみんなで作ったネストっていう団体じゃけど、ここまで良く続いてきて、色んな思い出もたくさんできたけど、自分はちょっとやっぱ続けられんって思って。
全員 ……。
会長 なんで、うちは今日でネストを辞めよう思います。
トゲっち ……おつかれ。
ムネオ そうだな、おつかれ。
会長 ありがとう。
ナベ 今日場所決めてももう次来ないですか?
会長 ……うん。
ナベ 了解です。
ジバさん じゃあ今日はお別れ会やね。
マスター ごめんね、お水どうぞ。
会長 ありがとうございます。
 
お水の入ったグラスをを会長に差し出す。沈黙。
会長はその合間に出された水を飲む。
 
ヒメ子 ごめん、すごい色々な何かに水差すけど、アタシもやっぱ今日が最後にする。
会長 え。
ジバさん そっか。
ヒメ子 ごめん。全然潤は悪くない。
仙人 キャンプどころじゃないな。
ヒメ子 このまま何事もなく続くのは、あたしも無理。
会長 ヒメ子ごめん。
ジバさん 気にせんでええんよ。
会長 だって作ったのは自分じゃ。
ヒメ子 タクシー、電話してくる。
 
ヒメ子は席を立って店の外に出てゆく。
マスターが一瞬ヒメ子に声をかけようとするが踏みとどまる。
 
ムネオ 俺のせいだよな。
ジバさん 違うよ。
トゲっち うん、俺もそのうちこうなると思ってた。
会長 ごめん、2人に全部押し付けて。
トゲっち そんなことないよ。
ジバさん そうそう私らは勝手に、動いてただけやし。
トゲっち でもなんにもなってねーしな。
ジバさん うん。
トゲっち 結果残せず。
ムネオ それでも、やっぱりごめん。
ナベ ムネさん、一気に丸くなりましたね。
ムネオ しょぼくなっただけじゃないか?
ナベ そんなことないですよ。いい方に行ってます。
ムネオ いい方か……お前は本当にオレにきついな。
ナベ はい。ナベさんにだけです。
 
マスターがスープを2つ運んでくる。
 
マスター はいどうぞ。
仙人&会長 ありがとうございます。 
仙人 まあ、時は進んでいくな。俺はもう浦島感ある。
トゲっち だよな。
会長 うちよりも来てへんかったんやものね。
ジバさん そうそう。
 
ヒメ子が部屋に戻ってくる。
 
ヒメ子 15分もすれば来るって。
ナベ あ、わかりました。
 
ヒメ子が椅子に座ると一瞬、7人がお互いを見合う。
会長が全員を見てから話し始める。
 
会長 じゃあ皆さん……残念ではありますけれど、今日をもってネストを解散しようと思うんですが、ええでしょうか?
ヒメ子 賛成。
ナベ はい。
 
ジバさんとトゲっちは無言で頷く。
 
仙人 どっちでもいい、は無し?
ナベ 決めてください。
仙人 じゃあ、いいと思う。解散に賛成。
 
ムネオだけが一人視線を皆に合わせずに考えている。そして口を開く。
 
ムネオ ……うん。賛成します。
会長 ……ありがとうございました。全員一致で採決ということで、ネストは正式に今日で解散します。
ジバさん&ナベ はい。
トゲっち お疲れ様でした。
仙人 本当に全員賛成でいいんだな?
ムネオ いい。少なくとも俺は賛成でいい。
ジバさん 私にはこれからもソロキャンがあるし。
ナベ ジバさんきついっす。
ジバさん 嘘? 今のダメ?
会長 うちはおもろかったよ。ジバさんソロキャンハマっとるん?
ジバさん 後で説明するわー。
会長 わかった。
仙人 最後の最後が全員一致か。
トゲっち あー。
仙人 俺の記憶だとたぶん無いもん。
ヒメ子 揉めたことの方が多いでしょ。
ムネオ 大体オレだったよな……。
トゲっち 俺もけっこう無茶な話してたよ。
ナベ まあ、それも若いころっすよ。
ムネオ 年下が言うな。
ナベ いやでも学生の頃のムネさんよりは今年上ですから。
ムネオ まあな……ん? そういうことか?(ひとりで)
ジバさん 色々やったなあ。
会長 そうじゃね。
ジバさん 最初はキャンプ同好会やなかったもんね。
ナベ そうでしたっけ?
仙人 何やってたんだ?
会長 いや、なかったというか、何でもないただの集まり。
ムネオ 一応あったのが変な名前同好会な。
ヒメ子 何それ?
ジバさん 変な名前ってか、珍しい名前の3人が集まったなって、それだけ。
トゲっち 葉切、治場、赤棟?
ジバさん うん。
仙人 確かにあんま聞かないな。
ジバさん けっこうレアなはず。私は小中高自分と兄貴しかいなかったし。
ナベ へー。いそうですけどねえ。
ジバさん 漢字違いはちょっとおるみたい。
ムネオ そんで周りから浮いてた3人な。
会長 まあ……事実。
ジバさん 最初の語学が一緒やったんよね。
会長 ドイ語ね。
ムネオ そう、で、キャンプ用品ってドイツ語多いから選んだー、あ、キャンプとか好き? みたいな。
トゲっち あー、そうか。それで最初に来た時、君はこっち側って言ってたのか。
ナベ あっトゲさんもかなりレアですもんね。
トゲっち うん。
ムネオ ごめんちょっとトイレ。ずっと忘れてたのが戻ってきた。
ナベ じゃ欠席裁判開いときますね。
ムネオ おい!
仙人 被告人は静粛に。
 
ナベが机を叩いてつけあがる。
ムネオはナベと仙人を睨みながらもトイレに向かってゆく。
 
ヒメ子 (鼻で笑って)本当どうでもいい話ばっかり。
トゲっち いいんじゃね? もう最後だし。
ヒメ子 まあね。いやそれにさ、珍しい苗字って言っても消えてくじゃん。
会長 そうやね。
ジバさん あー。
ヒメ子 あたしはもう長谷川だから。
仙人 さっきはすまんかった。
ヒメ子 いやいや別に。苗字にこだわりないもん。そもそも「姫」ってキャラじゃないから。
会長 ……ヒメ子言うんは嫌やった?
ヒメ子 そんなこともない。マジでこだわりない。
会長 そっか。良かった。
ナベ クールっすねえ。僕は小学校の頃は豚呼ばわりだったんで……。
ジバさん ナベが?
ナベ 大分ぽっちゃりしてたんです。
ヒメ子 豚はさすがに辛い。そこまでは。
ナベ その時は何でわたなべさんじゃなくてなべぶたさんに生まれたのかなあって悩んでました。
仙人 豚なあ。人間が勝手にそう呼び出しただけなのにな。
ナベ いや、そうなんですよ。
トゲっち 一緒にされて豚さんがかわいそうだよな。
ナベ ちょっと、トゲさん。それどう反応したらいいんですか僕。
仙人 とりあえず豚さんに感謝と謝罪をしたまえ。
ナベ え、なんでこうなるの。
ジバさん いじられがおらんとな。
ナベ まさかのパターン。
 
ムネオがトイレのドアを開ける音がする。
 
ナベ ムネさん早く!
ムネオ 何々?
ナベ いや、お席を確保しておきましたから。
ムネオ は?
仙人 席はもういらないぞ。
ナベ え。あ、あー……。
ムネオ オレ今度は何やった?
トゲっち 大丈夫。何もしてない。
ムネオ そう?
ジバさん 雨、弱くならんね。気をつけてね。
ヒメ子 うん。
仙人 朝まで続きそうだな。
 
仙人がスマホを見て言う。
 
ムネオ みんなで役員決めた日、あれもけっこう雨だったよな。
トゲっち だったかな。
ムネオ あの日、なぜか自分は幹部に決まって、この同好会を動かしていくって思ってた。
仙人 さっきの続き?
ムネオ うん。だけじゃなくて、ここで集まった9人はきっと何かに選ばれた9人で、大雨から逃れて、みんなでスゲーことをする9人なんだっていう、なんか、謎の自負みたいな、そんなことを結果が出る直前まで妄想してた。ちょうどあの日に。
ナベ なんですかそれ?
ムネオ いやだから妄想だよ。
ナベ 中二っぽい。
ムネオ そうだよ! いや、ごめん……そんな恥ずかしいというか、幼稚な考えを持ってた。
ジバさん 実際は幹部にもならんかったけどな。
ムネオ そう。それを受け入れずにずっと来てたな。
ヒメ子 ちっさ。
ジバさん そこまで言ったらんでも。
ムネオ いや、本当その通り。
全員 ……。
ムネオ だから、ちゃんと自分で口に出してみた。
仙人 徹底的に折れたな、これで。
ムネオ たぶん。
ヒメ子 (仙人に)何でも傷ついたらいいもんじゃないと思うけど。
仙人 もちろん。
ヒメ子 網目みたいに傷を傷と思わないやつは気をつけといたら。
仙人 ああ。
ヒメ子 あたしはそう言うことを考えてる人を信じたくて潤に会長やってほしかったから。だから……潤ありがとう、でも、ごめん……しんどいことさせた。
 
ヒメ子はそう言ってうつむく。
 
会長 うちは……うちは、何も考えとらんよ。いつもふわっと皆が自由にやれたらええかって、それ一番無責任やし、上手いこといかんなって思う時にはもう自分がここでやってくのもダメになっとったし。
ヒメ子 いい。今さらよくしようって、そういうのがなんか腹立つ……でも、今からでも何とかしようってできる方がいいのも分かる。
 
スマホのバイブレーションが響く。ヒメ子が席を立って電話に出る。
 
ヒメ子 あ、はい。ありがとうございます。はい、すぐに行きます。
 
ヒメ子は喋りながら自分の荷物と上着を取る。 
 
ヒメ子 じゃあ、来たから。他に乗る人いる? こんなあたしだけど。
会長 じゃあ……。皆さん、すみません。うちもここで引き揚げます。
仙人 気を付けて。
 
会長が席を立ち店を出てゆく。
 
ジバさん 私も一緒に乗るわ。マスター一旦全員の払います。(他の4人に)また後で明細出すからアプリで送って。
マスター はい。ありがとうございます。9500円です。
ジバさん ありがとうございました。そして、すみません。
マスター いえいえ。
 
ジバさんは支払いを済ませ、レシートを受け取ると自分の荷物をまとめる。
 
ジバさん みんなごめん。けど私はこれからもまた会える時には会ったらって思うから。ちょっと今日はあの子らと最後に帰るわ。
トゲっち 了解。
ナベ 僕もちょっとしたら出ると思います。
ジバさん じゃあ。
ムネオ おつかれ。
仙人 また。
 
ジバさんが店を出てゆく。しばし沈黙。そして仙人が口を開く。
 
仙人 潮時か。
ナベ すぐ終わります?
ムネオ もうこれ以上やること無いしな。
ナベ らしくないっすね。
ムネオ キャンプする意味がな。
仙人 キャンプならいつでもできるだろ?
ムネオ そうだな。
仙人 俺はいつでも歓迎だぞ。
トゲっち ありがとな。
仙人 雨やんだら……行くか? 明日でも。
ムネオ アリだな。
トゲっち 明日休み?
ムネオ んー……いや休みってか、今仕事ないから。
トゲっち&ナベ&マスター え!
ムネオ 実はこないだ仕事辞めたんだよな。
トゲっち どうしてよ。
ムネオ いや大したこと無いよ。辞めたくなったから辞めただけ。
ナベ ガチでらしくない……。 
トゲっち 次はいつから?
ムネオ 決まってない。
 
仙人が拍手する。
 
ナベ 網目さん!
仙人 ごめん。
ムネオ いいよいいよ。ありがとう。
仙人 働きたくなったらいつでも。
ムネオ うん。
ナベ この話もみんなにする予定だったんですか?
ムネオ 最初は。それどころじゃなかったけど。
仙人 大暴露回。
ナベ ねえ。
トゲっち 2人は何かないの?
ナベ ないっすよ。
仙人 ない。
ナベ ……あるんですか?
トゲっち ……なんでヒメ子と別れたか、な。あれ、子どもができなかったからだよ。
ナベ それは……それはしょうがないですよ。できない時はできないし。
ムネオ うん。
トゲっち 違うんだよ。俺には子どもできないのよ。
ナベ&ムネオ え。
仙人 治療は受けたのか。
ナベ え、え?
トゲっち うん。
仙人 そうか。
トゲっち あれきついな。なんかどうやってもダメだとさ。すんげえ自分って何なのって思ってしまう。
ムネオ じゃあヒメ子から?
トゲっち いやいやそういう訳じゃない。たくさん話し合った、色々。でも……2人ともあれかな。何とかするには若すぎたのかな。
ムネオ そうだな。
ナベ その……奥さんは?
トゲっち ん?
ナベ 今の奥さんはどう思って(いるんですか)?
トゲっち ああ。そうそう。それで今度結婚したら、一緒に息子もできることになってさ。
ナベ え? そんなのあり?
トゲっち そこは向こうは気にしないみたい。
 
トゲっちはスマートフォンに写る自分の奥さんと息子の写真を3人に見せる。
 
ムネオ おお。
ナベ あ、そういうこと。
仙人 5歳くらい?
トゲっち うん、来年小学生。
仙人 なるほど。
トゲっち マスター すみません、何か最後に変な話してしまって。
マスター いいよいいよ。来たくなった、またらおいで。
トゲっち じゃあ、そろそろ帰るな。怒られるから。
ムネオ 早く帰れ! 幸せ者め。
トゲっち うん。
 
 トゲっちが立ち上がり荷物と上着をまとめ始める。
 
ムネオ 怒られるってのもいいことかもなあ。
ナベ いやいやムネさん。
仙人 おれが変わりやろうか?
ナベ 仙人はいい。そういう感じじゃない。
仙人 そうか。
ナベ けど、すみません。じゃあ僕も帰りますね。
 
ナベも自分の荷物をまとめ出す。
 
ナベ トゲさん、すみませんちょっと結婚のことで聞きたいことあって。
トゲっち うん? いいよ。
 
トゲっちとナベは残る3人に挨拶する。
 
トゲっち それじゃ、ありがとうございました。
ナベ ありがとうございました。
ムネオ じゃあ。
トゲっち 仙人またいつか会おう。
仙人 おう。ベトナムとかに来るんなら会えるかも。
トゲっち 何の用事で。
仙人 そりゃ新婚旅行だろ。
ムネオ お前、子どもいるんだぜ?
仙人 任せろって。普段子どもの相手してるんだから。
ムネオ ああ……いや違うだろ。
ナベ まあまあ。じゃ、マスターもすみません。これで。
マスター ありがとね。ナベちゃんもがんばってね。
 
ナベとトゲっちが出てゆく。
店の外から聞こえる雨の音は大分と小さくなってきている。
 
ムネオ みんな偉いなあ。
仙人 ムネオは何か始めたのか?
ムネオ え?
仙人 辞めたってことは何かチャレンジしたかったんだろ?
ムネオ まあ……まあな。
仙人 シンプルに独立?
ムネオ そんな所。
仙人 厳しい道選んだな。
ムネオ うん。
仙人 中身をまだ言ってないということは、いい結果じゃない。
ムネオ オレわかりやすいな。
仙人 それがお前のいい所だよ。
ムネオ ……はい。
仙人 キャンプ行くか。
ムネオ は?
仙人 うん、行こう。
ムネオ いやいや。
仙人 明日仕事しなきゃいけないのか?
ムネオ は、無いけど。
仙人 じゃあ行こう!
ムネオ おい。
仙人 こんだけ用意あるんだし。
ムネオ オレはこれ準備じゃねーよ。
仙人 俺は最低限いつも持ってる。
ムネオ 待てって。
仙人 マスターどう思います?
マスター え……でも、アリなんじゃないかな。意外と。
仙人 でしょ。よし、じゃ雨が止んだら出発。
ムネオ そういう問題じゃねーだろ。
仙人 ガタガタ言うな。商品売るんなら無い瞬間体験するんだよ。いつ使いたいとか気持ちが分かるだろ。
ムネオ あっ……!
 
そう言うと仙人もムネオも荷物をまとめ出す。
 
仙人 すみません、今日はほんの一瞬でしたけど。
ムネオ ありがとうございました。失礼いたします。
マスター こちらこそ、ありがとうございました。2人ともまたいつでもどうぞ。
仙人 じゃあ行ってきます。
 
仙人が店を出る。ムネオは一瞬何かがずれているような気がして立ち止まるが、すぐ歩き出す。
 
ムネオ 行ってきます。
 
ムネオがドアを開けて出てゆく。
 
マスター やっぱり騙される方だなあ……あ!
 
マスターは会長の傘が2本に増えていることに気づく。
 
 
 
【了】

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