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おびかたるしま(帯語島)のものがたり⑥

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『3人の奮闘ふんとう・ツワブキの葉②』

 
朝陽あさひが優しい木漏こもれ日となって、3人の足元を照らし始めていた。
その光に向かい、ひたすら山道やまみちを登っていった。
しばらくすると突然視界が開け、大きな岩が重なり合う岩場の坂道に出た。

「これで身体をつなぐんだ。」
ガブはヨシから預かった、ちゃん麻縄あさなわを自分の身体にくくり付け、残りの部分を2人に渡した。

ヨシとタケも同じように身体をくくり、3人は麻縄あさなわつながった。
ガブはそれを確認すると、朝露あさつゆに濡れた滑りやすい岩場を、一層力強い足取りで進んでいった。

「まだまだ途中だぞ!気を抜くな!ヨシ、寝るな!タケ、しっかり前のヨシを見てろ!」
ガブは大声で2人をはげましながら、自分自身にも言い聞かせていた。

岩場は朝露あさつゆに濡れ、輝いていた。
優しい光が差し込む朝靄あさもやの中、3人はしっかりとちゃん麻縄あさなわつながり、右へ左へそして上へ、手も脚も五体の全てを使って1歩ずつ歩みを進める。

そして3人の目の前に、難関の大岩が現れた。

「ここは、1人1人で登るしかない。」
3人をつないだ麻縄あさなわを外し、ガブが先に大岩を登った。

大岩は岩の割れ目に手を掛けて登る難所で、ひと1人がやっと通れる程度の幅しか無い。

ガブは大岩の上にある大木に、麻縄あさなわくくり付けた。

「ヨシ!上がってこい!下を見るな!ちゃん麻縄あさなわが守ってくれる!ほら!」
ガブははげましの声を上げると、大岩の上から麻縄あさなわはしを投げた。
タケはそれでヨシの身体をしっかりくくった。
「ガブ兄いいよ!」
タケは、上にいるガブに大声で合図した。

ちゃんが守ってくれる。上にはガブ兄が、下にはタケ兄がいる。
かぁっ行くよ!』
呪文のように言葉を唱えながら崖を登った。

ヨシは自分の置かれている立場がよくわかった。
『これを登らないと2人に迷惑をかける。いや、絶対にマテルの滝へ行くんだ!』
ヨシにとっては、まさに命懸けの挑戦である。

ガブは大岩の上から、目一杯の力でヨシを引っ張りあげようと、奮闘ふんとうしていた。

「ヨシ!頑張れ!あと少しだ!」
ガブが声をかけたその時、麻縄あさなわが岩で擦り切れ、ヨシの身体が岩にぶつかった。

「あぶないっ!!」
ガブとタケが叫んだが、ヨシの身体は、うまく岩の隙間すきまに挟まった。

ちゃん!自分の力で登れということだね!わかった!登るよ!」
ヨシは独り言をつぶやいた。
そのとき、頭をでるように風が吹き抜けた。

「ガブ兄!わっ、自分の力で登ってみるよ!」
そう言うとヨシは、小さな身体で1歩1歩バランスを取りながら、ゆっくりと岩場を進み、見事に自分の力で登り切った。

流石さすがのガブもこれには驚いた。
「お前は、口ばっかりの大人どもと違うとこをみせたなぁ!今からヨシ兄だ!」

しばらくしてタケが登ってきた。

「お前ら兄弟は凄いなぁ!」
ガブが改めて2人をめた。2人は誇らしげな顔で笑った。
「さあっ!あと少しだ。」

大岩の上では、水が2方向に流れている。3人は更にその上を目指した。

「ちょっと待って!」
ヨシはそう言うと、ふところからツワブキの葉を取り出しよく揉んだ後、ペッとつばをかけて擦りむいたひざに貼った。

「そうそう!それでいいんだ!」
ガブも岩場で擦りむいた自分のひじにツワブキを貼り付けながら、満足げに言った。

タケはそんな2人を横目に、
わっも怪我すればよかった・・・。」
とつぶやき、ヒルにやられたふくらはぎの
ツワブキを貼り替えていた。


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おびかたるしま(帯語島)のものがたり⑦|岩城安宏(Yasuhiro Iwaki)|note

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