見出し画像

英国・・・イングランド・スコットランド・アイルランド・ウェールズのロックシーンについて Part11 IDLES『Ultra Mono』


イギリスはブリストルにてIDLESは結成された。2009年から活動を続ける彼ら、実働は10年を超えるバンドなので、とてもじゃないが若手バンドの括りに入れるのは本人らにとっても失礼だろう。

ボ-カルはジョー・タルボット、ギターはマーク・ボーウェンとリー・カーマン、ベースにアダム・デボンシャー、ドラムスはジョン・ヴィービスの5人組だ。

画像1

中心人物のジョー・タルボットについて書いていこう。ジョーは、1984年8月23日にウェールズのニューポートで生まれた。彼はウェールズ出身の人物だ。幼少期にイギリス南西部デボン州のエクセターへと移り、幼少期を過ごした。

エクセターにあるシックス・フォーム・カレッジに進学し、IDLESのベーシストとなるアダム・デボンシャーと出会う。その後2人はブリストルに移り、ウエスト・オブ・イングランド大学のセント・マティアス・キャンパスで共に学業に励んだ。

卒業後に2人はブリストルに今はなきナイトクラブ「Batcave」でクラブイベントを始める。このとき2009年、IDLESはこの頃に結成されている。

バンドとしての成功を目指し、彼らは自分たちに厳しい活動をつづけた。だが暗中模索の日々に疲れていたことをインタビューで答えている。いくつかピックアップしてみよう。

ジョー・タルボット「当時、オレはひどく怒っていた。ニューポートとブリストルを行ったり来たりしながら、毎日病院に通い、母が亡くなるまで見守っていたんだ。ソファで寝たり、パブで働いたり、DJをしたりしてお金を稼ぎ、魚のように酒を飲み、ドラッグに溺れてた。オレが惨めで、怒っていました。それが私の人生だったのです。」
「俺たち自身が何をしているのか全く分からなかったので、生産性を上げるのに時間がかかりました。約3年間、バンドは技術を磨き、アルバムに必要な素材を作るために頑張った。でもすぐに手に負えなくなってたんだ。」https://www.clashmusic.com/features/brute-force-the-contrary-world-of-idles

この発言は、2012年に『Welcome EP』を発売してから、2015年に『MEAT EP』や『Meta EP』を発売するまでの3年間についてを語っている。この間、音源らしい音源は発表されておらず、いくら活動をしていても反応を感じることすらも難しかったのがよくわかる。インディーで活動を続ける人たちにとっては心中察する部分は多いだろう。

ファーストアルバム『Brutalism』のジャケットには、ここで語られているタルボットの母が写真が載せられている。タルボットが16歳のとき、母親が脳卒中で倒れ、半身不随となった。そして彼の母は、ファーストアルバムを製作途中で亡くなったのだ。

ジョー・タルボット「バンドにとってその時期はとても難しい時期だった。というのも、オレたちは無意味なことを引きずっていたんだ、俺たちも当時20代後半だから、ラジオでヒットする曲を作らなければならないとかいけないのか?とかね。誰も食いついてこないし、誰も気にしていないから、あきらめなければならないとかね。ちょっとポップな曲で人気が出るかなと思って作った曲もあったが、俺たちらしくないクソな曲だった。でも、それだけ必死だったというなんだ。母が亡くなった後、みんなで会って、自分たちは一体何をしているんだろうと考え合った。もう一度やり直さなければなかったんだ。

母親の死という非常にパーソナルな内容をファーストアルバムにして打ち出す。とても勇気のある判断だったと言えようが、それも彼にしてみれば「どうせ多くの人は聴いてくれないだろうと思っていたし、どのように受け取られるかという先入観や不安がなかった」ということなのだから、当時の彼ら周辺の状況・心境に加え、半ば破れかぶれのようてもあったのががわかるだろう。

2017年3月に発売された『Brutalism』当時といえば、イギリスがEUから脱退するブレグジット(Brexit)の真っ只中にあった。2016年6月23日の国民投票以前にも以後にも、大きな波紋を広げていった時期にある。

同時に、彼らは今作で既に社会的事象にむけたメッセージを吐き出している。特にイギリスにおけるNHS=国民保健サービスについてだ。

一旦、NHS=国民保健サービスの概況をまとめてみよう。

富裕層でも貧困層でも全ての国民が等しく、しかも無料で医療を受けられる制度のNHS=国民保健サービスは、第二次世界大戦後の1948年にスタートして以降のイギリス国民にとって大きな支えになっていた。

なんのこっちゃ?と思うが、「揺りかごから墓場まで(from the cradle to the grave)」が生まれたきっかけになったシステムだと言えば何となく伝わるだろうか。

このサービスを利用するには、必ず事前にGP(General Practitioner)と呼ばれる家庭医の診療所に登録し、GPによる診察を通じ、病院で専門医による検査や診察を受けるという、医療機関の機能分化が徹底されているのだ。

ということもあり、日本のように全国どこでも自由に診療を受けられるわけではなく、国民個人個人にマッチした然るべき医者と病院や診療所を受けられることになる。イギリス国民にとってこのサービスは国の誇りと思っている人も多いようで、2012年のロンドン五輪開会式にてまさしくここを表現した部分があったほどだ。

とはいえ、2010年代の緊縮財政や経済悪化が続き、当時のイギリスでは医師不足のため、診療の予約がなかなか入れられない状況が続くなど、医療サービスそのものの低下を招いた。

察しが良ければお分かりだろうが、タルボットの母もNHSのサービスを使った。だが、このNHSのサービスをこれまで以上に削減しようという意見もあるし、彼自身が母親の看病を通じて感じていたNHSの現状もある。それを楽曲に落とし込んだのは「Mother」だ。

The best way to scare a Tory is to read and get rich
The best way to scare a Tory is to read and get rich
The best way to scare a Tory is to read and get rich
「Toryを怖がらせる一番の方法は、本を読んで金持ちになること」
(「Mother」より)

Tory=トーリー党は、かつて存在したイギリスの政党で、現在の保守党の前身にあたる政党だ。

1980年代~90年代のサッチャー・メージャーの保守党政権では、国家財政を再建すべく公的医療支出の抑制へと動いたため、NHSのサービスは悪化していき、医療サービスの供給不足は待機患者数の深刻な増加を招いた。

1997年から始まったトニー・ブレアとゴードン・ブラウンによる労働党政権下においては、医療供給体制の整備や待機患者数の減少など大きく改善させた。この医療サービスの向上と効率化に悩む諸外国からも、その取組は注目を集めた。

2010年に就任していたデイヴィッド・キャメロンが首相に就任して保守党になったら・・・やはり保守党の緊縮政策もあって悪化傾向となった。

ちなみに、ブレグジットにおけるEU離脱派の意見の中にあったのが、「EUに払っている週あたり3億5000万ポンドの予算をNHS(国民保険サービス)に回す」というものだ。実際にうまく施行できているかはしっかりと見つめなおす部分が大きいだろう。ここで大事なのは、こういった20数年に及ぶ政府・政権による変化のなかで生きてきたタルボットが、明らかな左派・労働党側な言葉を吐き出したことにある。と同時に、タルボットはこうも語る。

「オレらは政治的なバンドではない。党派的ではなく、政治は日常生活の一部であるという意味さ。オレにとって、それは基本的なことだよ」

__________________________________

セカンドアルバム『Joy as an Act of Resistance』では、より鮮明なメッセージを吐き出すようになっていく。2枚目のシングルになった「Danny Nedelko」の歌詞を見てみよう。

「Danny Nedelko」は、2017年にブリストルで結成されたバンドHeavy Lungsのボーカリストのことだ。ウクライナからの移民である彼とIDLESと親交が深いこともあり、曲のテーマとして歌うことになったわけだ。ここだけを知ると、現場シーンの横の繋がりをとても感じさせるほほえましい印象があるが、歌詞を読むと鮮烈なメッセージが分かるだろう

My blood brother is an immigrant
A beautiful immigrant
My blood brother's Freddie Mercury
A Nigerian mother of three
He's made of bones, he's made of blood
He's made of flesh, he's made of love
He's made of you, he's made of me
Unity!
~~~
My best friend is an alien (I know him, and he is!)
My best friend is a citizen
He's strong, he's earnest, he's innocent
My blood brother is Malala
A Polish butcher, he's Mo Farah
He's made of bones, he's made of blood
He's made of flesh, he's made of love
He's made of you, he's made of me
Unity!
血のつながった弟は移民
美しい移民
血のつながった弟のフレディ・マーキュリー
ナイジェリア人の3児の母
彼は骨でできている、彼は血でできている
彼は肉でできている、彼は愛でできている
彼はあなたでできている、彼は私でできている
団結を!
~~~
親友は宇宙人(私は彼を知っている、そして彼はそうだ!)。
親友は市民
彼は強くて、真面目で、無邪気だ。
血のつながった弟はマララ
ポーランドの肉屋、彼はモー・ファラ
彼は骨でできている、彼は血でできている
彼は肉でできている、彼は愛でできている
彼はあなたでできている、彼は私でできている
団結を!
(「Danny Nedelko」より)

ナショナリズムに釘を刺し、多様さや多文化共生を示唆するようなメッセージがこの曲にはある。パっと読むと「お前なに言うてんの?」と笑えるような歌だけども、シリアスに受け取るとかなりトガった言葉になる。このウィットさこそ、イギリスらしさだろうと思う。

__________________________________

サードアルバム『Ultra Mono』では、より自分自身のエゴとメッセージをシンプルに歌う・・・叫ぶようになる。これには理由がある。セカンドアルバムでの強烈なメッセージを誤読し、リスナーだけでなく他のバンドマンからも批判の目に晒されるようになったのだ。目につくところでいえば、スリーフォード・モッズのジェイソン・ウィリアムソンは、タルボットを「労働者階級の声を流用している」と非難したとNMEが報じたところだ。

これについてタルボットは返答するようにインタビューで答えている、相手はその渦中にあったNMEでのことだ。

“Well, the obvious thing that NME have written about,” he sighs, going on to explain that the supposed Mods ‘feud’ epitomises “the worst part of the internet for me”. But wasn’t it just a bit of fun ? bands slagging each other off in the music press, as they have done for decades?
“The only reason it got my back up,” he replies, “is because it’s like I was being represented as someone pretending to be working-class, which I’ve never done. And it devalues our message, as a collective of people, which is about inclusivity and egalitarian politics.
“With this album, instead of clamming up and becoming defensive, I’ve gone, ‘No, I need to be concise and clear in my message, which is: there is a class war and the working classes are being chewed up and spat out by the one percent. There are food banks in this country. There is a complete disregard for human welfare.”
「NMEが記事にしたようなことは、明らかなことなんだと思う」と彼はため息をつき、さらに、スリーフォード・モッズとの「確執」とされるものが「オレにとってインターネットの最悪の部分」を象徴していると説明した。しかしながら、何十年も前から行われてきたように、音楽雑誌でバンド同士がお互いを中傷し合うのは、ちょっとした楽しみではなかったのでしょうか。
「それが私の背中を押した唯一の理由です」と彼は答える。"それがオレを怒らせたのは、オレが労働者階級のふりをしているように表現されていたからだ。そして、包括性と平等主義的な政治についての、人々の集合体としてのオレたちのメッセージを切り捨てることになります。
"だからこのアルバムでは、閉じこもって防御的になるのではなく、『いや、だからこそオレは自分のメッセージを簡潔かつ明確に伝える必要がある』と考えたんだ。つまり、『階級闘争が起きていて、労働者階級は1%の人たちに噛み砕かれ、吐き出されている』ということ。この国にはフードバンクがあるけども、人間の福祉を完全に無視しているんだよ」
https://www.nme.com/big-reads/idles-cover-interview-2020-ultra-mono-2755873

社会に対する想いを歌にすること、その反響を身に染みて感じた彼は、よりシンプルに、それがゆえにソリッドさを増したリリックを書きだした。

もう一つ理由を上げるとするなら、タルボットにとってもっとも大きな音楽的なリファレンスが、ポストパンクではなく、ヒップホップということにある。これは大仰しく言いたいわけでなく、彼がインタビューで何度となくそのことを口にしているのだ。↑にあげた「Danny Nedelko」でもそうだが、韻を踏むのがとても多い。いまの海外のポップスだと韻を踏むことなんて当たり前じゃないかと思われそうだが、彼のヒップホップへの理解や彼らが得てきた教訓はとても強いのがわかる。インタビューから引用してみよう。

“Idles is hip hop," Talbot said. "It’s everything that we’re made of. I grew up on hip hop. Hip hop is in my writing. That idea of celebrating yourself in the face of adversity is something that hip hop artists have done and black people have done with serious bravery.
"I come from a privileged background: I’m middle class, I went to university, I have never felt oppression. But I love that vigour. I love what hip hop has done for black people and I want to celebrate that in my own way, which is by wanting equal opportunity for all, to fight for that with love and joy and really sick beats.”
「IDLESはヒップホップだ」とタルボットは言います。「それは俺たちのすべて。俺はヒップホップで育った。ヒップホップの血が俺の言葉の中にある。逆境にあっても自分自身を讃えるという考えは、ヒップホップのアーティストがやっていることであり、黒人が真剣に勇気を持ってやっていることでもあるんだ」
「俺は恵まれた環境にいる。中流階級に育って、大学にも行ったし、抑圧を感じたこともありません。でも俺はあの活気が大好きだし、ヒップホップが黒人のためにしてきたことを愛しているんだ。それに対し、俺は俺のやり方でそれを祝福したいと思っている。それは、すべての人に平等な機会を与えることであり、愛と喜び、そして本当に素晴らしいビートで戦いたいと思っているんだ」
https://www.irishnews.com/arts/2019/04/19/news/idles-we-re-a-subversive-band-that-disagrees-vehemently-with-our-government-1599379/
インタビュアー:WHEN I FIRST HEARD THE RECORD WAS HIP-HOP INSPIRED, I WAS LIKE ‘OH PLEASE TELL ME JOE DOESN’T RAP’ AND I’M SO GLAD YOU DIDN’T.
『ULTRA MONO』がヒップホップにインスパイアされていると最初に聞いたとき、私は「ジョーはラップをしていないと言ってくれ」と思いましたが、そうでなくて本当に良かったと思います。

Joe Talbot: Me too, Christ. I am definitely not a rapper. And that’s the important thing: The difference between celebration and appropriation. I grew up on hip hop, but that doesn’t mean that I am hip-hop. I didn’t come from an underprivileged background, I came from a privileged background. But I learned so much from hip-hop, that I can only celebrate it. That’s a beautiful thing and that’s what diversity is about. It’s about learning from other cultures and being a better version of where you’re from by allowing difference and celebrating difference as part of your language.
ジョー・タルボット そうだね、ほんとに。俺は絶対にラッパーではないよ。これは重要なことで、賞賛と流用の違いなんだ。俺はヒップホップで育ちましたが、だからといって俺がヒップホップというわけではありません。俺は恵まれない環境で育ったのではなく、恵まれた環境で育った。しかし、俺はヒップホップから多くのことを学んだので、それを祝福することしかできません。それは美しいことだし、それこそが多様性なんだん。他の文化から学び、自分の言語の一部として違いを認め、祝福することで、自分をより良くすることができるのです。
https://atwoodmagazine.com/ijum-joe-talbot-idles-interview-2020-ultra-mono/

サードアルバム『ULTRA MONO』にはヒップホップらしさを見つけようとするなら、やはり「Grounds」だろうか。後半にいくに従ってどんどんとノイジーで破壊的になっていくサウンドにプログラミングで参加したのがKenny Beats、FKA Twigs、DaBaby、Vince Staples、JPEGMAFIAとも作品を作ってきた彼は、彼らのパンキッシュでノイジーなサウンドに、非常にモダンなヒップホップ・ビートを加えて見せた。Vince Staples、JPEGMAFIAらの諸作品とも近しい、メタリックかつ音割れ寸前のミキシングがこの曲にはある。もう一曲、メッセージで最も尖った「model village」

You will not catch me starin' at the sun
Not suckin’ on a Dum Dum, not?turnin'?'round to run
No?hallelujahs, and no kingdom comes
So you?will not catch me starin’ at the sun
Do you hear?that?thunder?
That's?the sound of?strength in numbers
Fee-fee-fie-fie-fo-fo-fum
I?smell the blood of a million sons
A million daughters from a hundred thousand guns
Not taught by our teachers on our curriculum
Do you hear that thunder?
太陽を見つめる僕を捕まえることはできないだろう
ダムダムを吸うこともなく 逃げるために振り向くこともなく
ハレルヤ(祝福)もなく、王国も来ない
太陽を見つめている私を捕まえることはできないだろう
あの雷の音が聞こえるか?
それは数の力の音
フィ・フィ・フィ・フィ・フォ・フォ・ファム
100万人の息子の血の匂いがする
100万人の娘たちが10万丁の銃で殺される
私たちのカリキュラムの中で、先生たちは教えてくれない
あの雷の音が聞こえるか?
あれは数の力の音だ
(「Grounds」より)
A lot of nine-fingered boys in the village
They haven't got much choice in the village
Model car, model wife, model village
Model far, model right, model village
They ain't too friendly in the village
There’s a tabloid frenzy in the village (Don't read The Sun)
He's "not a racist but" in the village
Gotta drive half-cut in the village
Model low crime rate in the village
Model race, model hate, model village (Village)
Got my head kicked in in the village (Wah)
There’s a lot of pink skin in the village
"Hardest man in the world" in the village
He says he got with every girl in the village
Take flight, take flight
(La-la-la-la-la-la-la-la-la-la-la-la-la-la)
Model village
I beg your pardon
I don’t care about your rose garden
I'm listenin' to the things you said
You just sound like you're scared to death
村にはたくさんの9本指の少年がいる
村では選択肢が少ない
模範的な車、模範的な奥さん、模範的な村
模範的な公平さ、模範的な権利、模範的な村
村ではあまり友好的ではない
村ではタブロイド紙が騒いでいる (The Sunを読むな)
彼は「人種差別主義者ではないが」(この村では)
村でハーフカットの運転をしてみた
この村は模範的に低い犯罪率
模範的な人種、模範的な憎しみ、模範的な村
村で頭を蹴られるんだ
村にはピンクの肌がたくさんある
村の中では"世界一ハードな男 "
村中の女とヤッたってさ
飛び立て、飛び立て
(La-la-la-la-la-la-la-la-la-la-la-la-la-la)
模範的な村
大変申し訳ない
あなたのバラ園はどうでもいい
あなたが言ったことに耳を傾けています。
あなたはただ死ぬのを恐れているように聞こえる
(「Model village」より)

2曲を地で読むと、なんだか矛盾しているようにも受け取れる。ルールをキッチリ守って生きている村を批判しているからだ。この言葉は、左寄りの主義を持つ彼の放っていくメッセージとして、保守主義なスタンスを批判し、自由と多様性を求める熱量だと気づけるだろう。特に「Model village」は、保守的な姿勢、パターナリズム、男性優位、女性卑下、人種差別、それらを「模範的」だとして生きようとする人らにむけ、そういった姿勢の乱暴さと窮屈さを示している、かなり直接的だ。

ラップとして見たら、特段物凄く凝った韻の踏み方をしているわけではなく、とてもシンプル。だが非難の的にあがるなかで、他人の言葉や思惑に大きく左右されることなく、自分自身の中から生まれてくるメッセージを大切に発していく逞しさは、まさしくヒップホップ・スタンスだといえよう。

これまでプロデューサーを務めてきたNick Launay(ニック・ローネイ)も参加している。ギター、ベース、ドラムスのシンプルながらも暴れまくる演奏、ノイズをもろともせずに音をかましつづけるハードコア/パンクサウンドはこれまでと変わりない。

一度彼らのアルバム3枚を1つのプレイリストにいれ、アタマから最後まで聴いてみたあとで、シャッフル再生してほしい。正直、とんでもなく変わり映えがある!とは思えないだろう。だがこのノイジーなギターサウンドと突貫力あるドラムス&ベースサウンドのボトムスは、ポストという言葉をもはみでて、まさしくパンク。不変の熱量として刻まれたノイズと叫びは、彼らバンドの逞しさを象徴するのだ

ここから先は

0字

¥ 100

こんにちは!!最後まで読んでもらってありがとうございます! 面白いな!!と思っていただけたらうれしいです。 気が向いたら、少額でもチャリンとサポートや投げ銭していただければうれしいです!