新型コロナウイルスの「33%拡大ライン」は全世界であてはまるのか
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新型コロナウイルスの感染の中心地が、中国からヨーロッパに移り、イタリアの苦境が大きく報じられています。ただし、感染者の拡大のペースをグラフで見てみると、スペイン、ドイツ、フランスといった国々もイタリアを追いかけるようなペースで感染が広がっており、予断を許しません。
韓国は感染者が100人を超えてから2週間ほどは、イタリアなどと同じペースでしたが、その後は感染の拡大を抑えられています。また初期の頃は急速に感染が広がっていたイランも少しペースが緩やかになってきています。
一方で、スペイン、フランス、ドイツはまだペースがおさまっていません。そして、アメリカもほぼ同じ水準で感染が広がりつつあります。
感染者数については、検査に対する各国の姿勢の違いから状況を正確に把握できないという声が上がっています。そこで死者数を調べてみると、医療崩壊が報じられているイタリアでは3月20日時点で3407人が亡くなっており、致死率は8.3%にのぼります(致死率の算出にも感染者数が必要ですが、イタリアは検査を積極的におこなっています)。
スペインやフランスでも感染者数がイタリアと同じペースで増えていくとすると、両国でも医療の現場は厳しい状況に陥る可能性が高いと言えます。
OECDの統計によると、急性期医療のための病床数で日本は最多を誇っています。感染ペースを抑えることに成功した韓国は日本に次いで2位と充実しています。一方で今回、医療崩壊が報じられたイタリアは2.6床。そして、アメリカ(2.4床)やスペイン(2.4床)はそれを下回っています。
前述した4ヵ国以外のヨーロッパの状況を見てみると、感染拡大が33%を少し下回るペースになっています。これは、先に感染が広がった他国の状況を見て早めに対策をうったためだと考えられますが、それでも、ここに挙げた9ヵ国はそれぞれ感染者が1000人を超えてしまっています。
アジアに目を向けてみると、感染拡大のペースは33%を下回っていますが、マレーシアではモスクでの集団感染が報じられており(関連記事)、爆発的に増える可能性が否定できません。今後も注視していきたいと思います。
また医療環境が充実していないアフリカでの感染拡大が危惧されていますが、3月21日時点で感染者が100人を超えているのはエジプト(256人)と南アフリカ共和国(205人)のみです。こちらも、状況を日々確認したいと思います。
危惧される観光産業への影響
先日、日本政府観光局が2020年2月の訪日外国人数を発表しましたが、前年同月比で58.3%減の108万5100人となりました。訪日客の多くの割合を占めていた中国人が87.9%減、韓国人が79.9%減と、大幅な落ち込みです。
3月も同様に落ち込むことが予想されており、観光産業への打撃はかなり大きくなりそうです。
日本は名目GDPの7.6%を観光産業が占めていますが、新型コロナウイルスが猛威を振るっているイタリア、スペインは13%を超えています。今後は新型コロナウイルスの拡大抑止と並行して、経済対策や観光産業で働く人へのケアが重要になりそうです。
グラフ制作:グラフストック
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