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金がないので結婚指輪を作る。

デザイナーのクリモトです。


超私事ですが、つい先日結婚しました。


結婚といえば結婚式を挙げたり結婚指輪を渡したりなど、多くの行事をこなすものですが、情けないことに今はまだ何もしてやれていません。

というのも、大学を卒業して就職のために上京するというタイミングで結婚したので引っ越し代やら何やらでお互い財布がすっからかんになってしまったわけです。


にしてもせっかく結婚したのにこれまでと何も変わらないなんてつまらないじゃないですか。なので今回はお金が貯まるまでの結婚指輪(ベータ版)を作ることにしました。


「まとまったお金はないけど特別なものを作りたい」「考えたものをなんでも形にしたい」という方には参考になるかもしれません。では、始めます。


イメージを実像化する

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今回用いるのは3Dプリントの技術です。指輪は金属を叩いて作ることもできますが、3Dプリントでは素人でもデザインのディティールまで自分で決めてその通りのものを作れるというメリットがあります。

そんな3Dプリントをするには3Dモデルを作る必要があるわけですが、パソコンさえあれば3D-CADソフトをインストールすることで簡単に作ることができます。中でも今回はFusion 360というソフト使いました。理由はシンプル、本格的ながら商用利用でなければ無料だからです。

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さて、3D-CADソフトというと難しそうで敬遠していたという方も多いでしょうが、実はそうでもありません。Fusion 360であれば大きく2つの造形方法、

・ぐい〜っと押し出す「ソリッド」と「サーフェス」

・ぐに〜っとこねる「フォーム」

の2つです。きちんと設計して作りたいならソリッドやサーフェス、直感的で柔らかい造形ならフォームを使用すると覚えておきましょう。設計図を描いてコツコツ組み立てるか、粘土をこねるようにして自由に作りたいか...初心者レベルであればそれさえ使い分けるだけで幅広い物を設計することができるはずです。思っているより簡単なのでぜひ挑戦してみて下さい。


指輪を設計する  ーデザインー

実際に指輪を作るため、まずはその特徴とサイズを決めます。

デザインの特徴は「シンプルかつ使いやすい」を念頭に設計しました。僕らは目立つのが好きではないため奇抜なデザインは避けつつ、結婚指輪という特性を考えて使用感を減らすことを目指します。また、結婚指輪(ベータ版)は次はちゃんとした製品を買う!という目標とともに着けるので、あまり複雑でない確かな「下位互換」であることがここでは重要だと捉えました。

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実際にはこのようにしました。ベースは真円(縁起がいいらしい)で、手のひら側が薄くなるようにしています。家事や仕事などで指を曲げた際に指輪の異物感を感じさせないためです。また装着時にどちらが下かが分かりやすいように記念日などの彫りを入れることにしました。

厚みは2.5mm程度にすることで目立ちにくくします。他に特徴はなくごくごくシンプルなものに仕上げました。あとは寝ている間にでも指の円周を測れば実寸が分かります。


指輪を設計する  ー設計ー

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指輪はとてもシンプルなので設計は簡単です。まずは厚みの最大値と最小値である両端をスケッチします。

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それらを採寸した通りの円周の真円をレールにしてつなげるとあっという間にベースが完成しました。ここに予定通り内側の薄い箇所に合わせて堀を入れて、少しフィレットを加えてあげれば3Dモデルの出来上がりです。

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出来上がったモデルの素材を真鍮にしてレンダリングすると、このような仕上がりイメージを作ることに成功しました。出来栄えが良ければあとは入稿して完成を待つのみです。


入稿・鋳造する

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樹脂などであれば最近は安価な家庭用3Dプリンターで作ることができますが、今回は金属なのでそうもいきません。

精巧な型を3Dプリントし、金属を流し込んで鋳造、仕上げに金属を磨くという結構な工程があります。

今回はそれらをDMM.makeという便利なサービスがありますので、委託して全てやってもらっちゃいます。

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延べ33種類もある素材から真鍮を選び3Dデータを入稿・発注しました。他にもプラチナや金まで選ぶことができます...(すごい...)

これらは 全て体積+オプション加工料で購入することができ、真鍮でシンプルな指輪を発注した場合、加工料・送料込みで18,000円ほどでした。

結婚指輪の相場が2本で30万円だとすると、わずか1/15の費用で作ることができたのでベータ版としては上出来だと思います。

今回はシンプルなデザインでしたが、勿論複雑な形状、宝石を埋め込む為の穴や起伏などもDMMのガイドラインの範囲であれば作れますので設計の前に一度調査してみて下さい。

実際に使用してみる

さて、1ヶ月弱経ったところでついに指輪を受け取れました。

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見た目はこんな感じで指定通りよく出来ています。本体の薄くした箇所も効果があったようで指の曲げやすさが違いました。さすがのDMM様。

サプライズで渡したところ、奥さんにも大変喜んでもらえたので満足です。(指輪くらい買ってやれるようなベテランにならねばと思いつつ...)

まとめ

いかがだったでしょうか。3Dプリントの技術を使えば些細なものから結婚指輪のような大切なプレゼントまで作れちゃうよ〜という話でした。

皆さんも興味があれば是非挑戦してみてください!ではまた。


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