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好きな人の名前を書くように文字組みしたい

アートディレクターの市川です。
最初にお伝えすることとして、私は38歳の男です。タイトルを読んで、キモいと思わないでください。年齢と性別とタイトルのギャップは否めませんが、日々の仕事では忘れがちなことを思い出せればと書いてみました。最後までお読みいただければ幸いです。

私はタイポグラフィについての知識を何回かにまとめていましたが、今回はもっと気軽に読めるような、デザインに携わる前、書体について意識するずっと前の、自分の文字に対する原体験を探ってみようと思います。

文字を意識して書くようになったのはいつからだろう?

幼い頃は、お絵かきの延長でみみずのような、文字とも線ともつかないものを書いていたような気がします。左右対称にぐるぐる線を描くのが好きで、自分の名前のひらがなの「り」の文字とその鏡文字をくっつけて書いて🍎だ!って喜んで何回も書いていた記憶があります。文字というより図形として覚えているような感じでした。

おそらく意識的に文字を書いた最初は、小学生のテストの答案用紙に自分の名前を書いた時かなと思います。人に読まれる前提で、はじめて書いた文字だと思います。それからは、自分の名前を書くことは「署名」としてだんだん特別なものではなくなり、無意識で書けるものとなっていったような気がします。最近では自分の文字に慣れてしまって綺麗に書けなくても「これも味だ!」と手癖のせいにしてしまっている始末です。(綺麗な文字を書く人には本当に憧れるし尊敬します)

自分にとって文字を書くことが特別じゃなくなった今でも、「意識」している大切な人の名前を書くときは、自分の手でその人を「イメージ」して綺麗な文字で書きたいなと思います。

それは自分の成長とともに対象は変わてきていますが、自分の場合はたとえば…

高校生の頃は、好きな人の名前をノートの端っこに書いてみたり…
結婚する時は、婚姻届に自分の苗字と相手の名前を書いて、結婚を実感したり…
こどもが生まれた時は、出生届に間違えた漢字がいないか何度も確認してみたり…

1001_note_top_todokeのコピー

実は出生届は予備を3枚用意し、書き直しの結果、すべて使い切りました。

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出生時の写真ではないけど、好きな写真。はじめての義実家でのお風呂♨︎

産まれたこどもの名前を活版で組む

名前を書く話しから、タイポグラフィのはなしに戻りますが、冒頭の見出し画像は、欧文組版のセミナーの活版印刷実習で、組んだものです。
実習のため24ptのUnivers Mediumで、組版の先生からは「自分の名前で組むこと」が条件としてありましたが、当時第一子が産まれたばかりで浮き足立ってた私は、「産まれたばかりのこどもの名前で刷らせてください!」とお願いして刷らせてもらったものです。

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当時は真剣にこれで完璧と思って組みましたが、今見返してみると、「S」と「U」の間もう少し詰めておけばよかったかなとかいろいろ反省もあります。
ちなみに「A」と「W」と「A」の字間(レタースペース)はデジタルフォントではカーニングで調整できますが活版印刷では物理的に詰められません。そのため、このスペースを基準にして全体を組んでいくとバランスが取りやすいと実習でアドバイスをいただいたのを思い出しました。

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デジタルフォントでは、書体デザイナーが「サイドベアリング」というかたちで、スペーシングを一文字一文字の組み合わせごとに設定してくれているおかげで、設定さえちゃんとしていれば字間調整がなされた文字組みが可能になっております。

余談になりますが、ここまでまとめてみて、もしかしたら自分は「文字を書く」ことに対してコンプレックスがあったからこそ、タイポグラフィーや文字組みにも興味を持ったのかも知れないなと思いました。奇しくも今の仕事に多少なりとも役立っているので、コンプレックスも意識を外にむければ、別の技術を求める動機になることもあるんだなとしみじみ思いました。手書き文字が綺麗でないからこそ、それを補う技術に憧れを持つことができたのかもと。

活版印刷の実習は文字の特徴や、客観的な見え方を追求する意味で、現在でもとても参考になる実習だと思いました。機会があればまたやりたいと思っています。現在は欧文組版のセミナーはオンラインセミナーとなっていて実習はないようですが、印刷博物館では活版印刷実習ができます。(事前予約制)興味がある方はおすすめです。

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日々の仕事もそうありたい

現実は、お客さんの原稿やオリエンがきてからデザインする時間に余裕がなかったり、内容が固まったと思っても、入稿直前に原稿が挿し替わったりと、なかなか理想通りには行かないことも多くあります。

現実は理想通りにはいかないけれど、敢えてここに理想を記しておきます。

日々の仕事に追われてしまうと本質を忘れがちですが、デザインして、文字を組んで、レイアウトして、自分以外の人に伝えるってことは、本来はそんな好きな人の名前を書くような気持ちで、使う人のことを想ってできたら良いなと思っております。たまに忘れてしまいそうになるけれど、これからも初心を胸にていねいに仕事していきたいです。

Twitterもやっています。フォローしてくれると嬉しいです🍎


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