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他人の目を通せば家業が変わる。家族以外のスタッフがリノベーション会社の家業を変えるまで

家族と仕事が密接につながっている家業のことは、他人の目を通した方が案外整理がついたり、客観的に見つめ直すことができるのかもしれない。そんな風に思わせてくれる家業を取材しました。お話を聞いたのは、東京都杉並区でリノベーションを行うfujitacaリノベーションを家業に持ち、現在代表を勤めている佐藤創史さん(以下、佐)と、そこに最近入社した、"全くの他人"の、広報担当の阿部哲(以下、阿)さん。

継ぐことは甘えだと思っていた

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──普段は家業のお話から始めるのですが、お二人の関係が気になります。お二人はどのようにして出会われたのでしょうか?

阿:僕たちはもともと知り合いで、「なにか楽しいことしたい」と創史さんに言われたのがきっかけで一緒に働くことを考えるようになりました。この時僕は他の会社で営業マンをしていて3年目を迎えた頃。少ないながらも社会人経験を積んで、やっと僕も仕事に変化を起こすタイミングを探していたのかもしれません。

──それで、佐藤さんの家業であるfujitacaリノベーションに入られることになったんですね。

阿:そうです。今の社員は佐藤のお父様の先代をはじめとした家族と、家族ではないスタッフが混在しているのですが、僕はその家族ではないスタッフの一人として入社しました。入社したのは今年の3月なので、まだまだ新入りです。

佐:彼は週に3日だけうちに来ることになっている正社員で、残りの日は別の仕事を通してこの仕事に反映できるエッセンスを吸収しています。最初はそのくらいのコミットメントだったので、経理を手伝ったりしてもらおうかと思っていたんですが、まさかこんなに活躍してくれるとは。少し会社がよくなったらいいな、くらいの気持ちできてもらったのですが、結果的にここまでの活躍をしてくれて、嬉しく思っています。

──そうだったんですね。どんな活躍なのか気になりますが、まずはここで家業のお話を聞いてみたいと思います。

ちょっと変わった家業の形

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──現在家業をどのような形で継いでいるのでしょうか?

佐:父は今取締役をしていて、僕が代表をしています。

──なるほど。では、お父様がやられていた事業を引き継いだという形でしょうか。

佐:そこが少し複雑なんです。父がやっていた事業は、まちの工務店の事業で、地域の方の新築工事やリフォームを請け負っていました。リフォームは、古くなった設備をそのまま交換することです。間取りなどを変更せずに、同じサイズのキッチンに取り替えたり、ぼろぼろになってきた壁紙を取り替えたり。それに対して、僕が家業に持ち込んだのは、リノベーション事業。お客様の要望を聞きながら間取りを変えたり、設備を入れたりしていきます。リフォームよりも思いが介在するのが大きな違いですね。

──では、屋号は同じだけれど異なる事業を外部から持ってきたということなんですね。

佐:はい。前職までリノベーションの会社で働いていたのですが、事業承継をするにあたって工務店的な事業をそのまま継承するのは難しいと考えたんです。お客様の思いや価値観でデザインを選ぶリノベーションのほうが今の時代にマッチしていますし、地域の人の口コミで支えられてきた事業をここで変化させる必要があると考えました。

──なるほど。では、今ふたつの事業があるのでしょうか?

佐:そうですね。馴染みのお客さんは父が担当して、僕がリノベーションを軸に新規の顧客を開拓したりしています。

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(リノベーションを手掛けられたヘアサロンの事例のスケッチ。施主さんの思いを最大限に生かしたリノベーションになったという)

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(照明や明るさなどにもこだわり、サロンワークがしやすい内装になった)
*ヘアサロンのリノベーション詳細はこちら

他人の目だからこそ、家業がよく見える

──この取材も段取りしてくれたのは阿部さんでした。入社した会社の家業ならではの課題にコミットしているのはどうしてなのでしょう。

阿:もともと前職が組織開発のコンサルティングを行う会社でした。そこで気づいたことは、「大きな計画より小さなきっかけ」。立派な計画をつくって組織開発をしようとすることよりも、一緒に働く人の気持ちを知ったり、泥臭いコミュニケーションを積み重ねた方が組織は変わるものなんです。小さなきっかけの芽を広げていくようにして変えていくと、組織が変わるという実感がありました。

──なるほど。それを今、佐藤さんの家業でやられているということでしょうか?

阿:僕はもともと建築に興味があったけれど、家の事情や体裁を気にして前職に就いてしまったばかりにこの業界で働くチャンスを逃してしまっていました。やっぱり自分が好きなことを仕事にしたいと建築関係の仕事に就かせていただいたのが今の会社なので、その恩返しにこの家業をもう少しよくするきっかけを作っていこうと考えたのです。

佐:昔気質の父はあまりコミュニケーションを取る方ではなく、これまで僕は、あとを継いだことを父がどう思っているかすらわかりませんでした。阿部がきてくれて変わったのは、彼の言う「小さなきっかけ」をちょっとした雑談の中から見つけてきて教えてくれることです。継いだことに対しても、感謝の気持ちを持ってくれているという話がちょっとした阿部との雑談の中から出てきて、それを伝えてもらった時には感謝の思いでいっぱいになりました。

──家族同士だとなかなか本音で話せないですものね。

阿:そうなんですよ。僕なんてただの他人ですから、これまで何十年と佐藤が言い出せなかったことも雑談で無責任に聞けてしまう。それを役立ててもらいたいなと思っているんです。

他人の目を通して変わってきた家業

──他にも、阿部さんが起こした変化はあるのでしょうか。

阿:実務的なところでは、経理などのあり方を整理したりしました。

佐:阿部がきてくれるまでは、経理をやる度にバチバチのバトルでした。経理は母が担当してきてくれたのですが、独自のやり方でやってきてしまっているので、どうやってお金を管理してきたのかがわからない。家族同士の関係もよくなく、引き継ぎができずにイライラしていました。そこに家族以外の人が入ってくれることで、母と僕の関係まで改善したのです。

──それはかなりこんがらがっていそうです。具体的にはどんなことをしたのですか?

阿:まず、前提として家族の問題には立ち入っていません。それは家族で解決することなので、僕は基本に忠実に経理の問題を紐解いていき、課題があればそこを解決していくというスタンスでした。具体的には、僕が入ったタイミングで、お父様サイドの事業と、創史さんサイドの事業の二つで経理も分かれてしまっているという状態でした。経理はお母様が行っていましたが、その橋渡しまではできていなかったようです。それぞれが決算の時に税理士の先生に結果を送って、決算月になると会社としてのひとつの結果が出てくるという状態になっていました。

事業は二つあってもいいですが、今会社にどのくらいお金があるのかを把握できないのはよくないので、タイムリーに会計を把握しましょう、と提案し、まずはデータを僕に集約することにしました。そうすることで、月次の収支がわかるようになったのです。また、入金の仕組みも昔ながらのやり方でそのまま来てしまっていたものを整理しました。

──このような改革って、家族同士でやると揉めることが多いと聞きます。阿部さんが気をつけていたことはありますか?

阿:これまでのやり方を頭ごなしに否定しないことです。ひとつひとつの業務をどうしてそうやっているのかを聞いて、紐解いていくと、お母様自身もよくわからずにやっていたところもあるということがわかってきました。負担の度合いを減らしていくイメージで業務を引き取ったことで、揉めなかったのではないかと思います。

──クラウド会計ソフトなども導入したのですか?

阿:いいえ。クラウド会計ソフトって、便利なように見えて手渡しの入金に対応していなかったり、銀行口座が複数あったりすることで家業ならではの事情にそぐわなかったんです。むりして家業の形を変えるくらいなら、スプレッドシートでいいと割り切って、今はスプレッドシートで運用しています。

──ここでも家業を否定しないことが大切なんですね。

家業への思いは、家族だけが持っているわけではない

──阿部さんが、佐藤さんの家業に対して願っていることはどんなことなのでしょう?

阿:創史さんは三代目で、その前にはお父様、先代と受け継いできている気持ちがあるはずです。お父様にもまた、きっとそれがあるはず。だからこそ、事業の細かいことではなく会社の名前を残して欲しい、看板を下ろさないでほしいという思いが雑談でも出てくるんです。すべての事業を引き継げなくてもいいから、会社を存続することでその想いをリレーのようにつないでいってほしいなと思っています。実際に、古めかしい看板が社にあるんですが、これがとってもいいものなんですよ。ああいう細かなところに宿る脈々と続いてきた家業のバトンをちゃんとつないでいただけたらいいなあ、と思っています。

佐:そんなこと、今初めて聞きました。社名を残して欲しいことや、看板のことも。あんな古い看板、早く変えちゃおうと思ってましたから。

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(実際の看板)

──これが家業に他人の目が入る意味なんですね。

佐:そうなんです。身内では見えないところが外から入ってきた人からは見えている。それが案外、家業にとって大切なことだったりするんです。しかも、阿部のように設計士などの専門職ではなく、全く違う業界の経験を持っている人が入ってくれば、こんなふうに家業に新しい風が吹くこともある。ありがたいですね。

阿:僕の仕事はそういう新しい風や小さなきっかけをたくさんお渡しすること。創史さんには、その積み重ねで今よりもっと自分のことを認めて、自分のことを好きになって、家業を楽しんでもらいたいなと思っています。

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https://www.fujitaca.com/
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