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愛知県の製缶業を家業に持つ、石川貴也さん

家業があって、それを自分に合った形でサポートしたり、進化させたりしている人のことを、僕らはグラフトプレナーと呼んでいる。いったいみんな、どんな活動をして、どんな毎日を送っているんだろう。今回は、愛知県でカンをつくる会社を家業にもつ石川貴也(いしかわ・たかや)さん。

プロフィール
お名前 :石川貴也(いしかわ・たかや)
家業:愛知県で製缶業
現在 :家業の側島製罐株式会社で働いている

家業は、お菓子などを入れる「カン」の製造業

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石川さんの家業は、カン製造業。現在もお父様が、愛知県で、乾物やお菓子などを入れるカンをつくる会社を経営されています。「小さい頃から、家にカンがいっぱいありました。乾電池やお菓子、切手や葉書なんかを入れたり。実家では今も昔も、引き出しの中に収納するときは、全てカンに入れてます。当たり前のように身近にあったんですよね。現在の製造量は、1年で250万缶くらいですが、昔は今の3倍はつくっていました」

父親から「継いでほしい」と言われたことはなかった

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誰しもに家業があるわけではないと気づいたのは、中学生の頃。同級生から冷やかされたことを機に、親が自営業を営んでいることを意識するようになりました。当時は、将来を決められているようにも感じて、嫌だなと思う気持ちも。一方で、お父様から家業を継ぐよう言われたことは一度もありませんでした。

「愛知に戻ってくるまで、父親から実際に『お前に継いで欲しい』と言われたことはありませんでしたね。昔ながらのコテコテの中小企業の親父っていう感じの人で、『パソコンなんかできたってたいしたことないだろ、それより外回り行ってこい!』って言うようなタイプ。全然今っぽくない考え方をするし、愛知に戻るって伝えたときも『そうか!』っていう一言だけでした(笑)」

大学卒業後は、エリートサラリーマンに

大学進学時には文系を選択。心のどこかで家業を気にかけつつ、卒業後は日本政策金融公庫に入社します。3年目に営業に配属されたものの、仕事が厳しく、毎日辞めたいと思っていた時期もありました。お父様に弱音を吐き、退職して家業に戻ろうかと”逃げの”相談をしたこともありましたが、それでも必死に働いていたら、徐々に仕事に楽しさを覚えていったそうです。「日本政策金融公庫って、地域経済の活性化や、地域社会を支えることを企業理念にしているので、働いている人もそういう理念をもってますし、自分の目の前の仕事が地域社会を支えるんだ、従業員の雇用を守るだっていう意識を持って仲間と働けていたので、めちゃくちゃ楽しくてやりがいある仕事でした。出向で中央省庁を経験させて頂いた際も同様で、もう家業には戻らない気持ちの方強くなっていました」

やりがいのある仕事を辞めて愛知に戻ったのは、入社9年目の年。お父様が体調を崩したこともきっかけでしたが、ご自身の中に芽生えたあるもやもやと対峙するためでもありました。「出向から戻ってきてふと、公庫や内閣官房で地域の中小企業をたくさん支援してきたけど、親の会社に対しては何もしてないなって気づいてしまって。そしていざ父親が体調を崩したときに、僕が大学に通うことができて、いい企業で働くことができたのは、うちの会社で働いてきてくれた従業員さんたちのおかげじゃないかって思ったんです。その人たちが待ってくれているのに帰らず、中央省庁や日本政策金融公庫の本店で旗振りしていい気になってるのって、すごい自己欺瞞だなって。めちゃくちゃ悩みましたが、愛知に戻る決心をしました」

事業承継は、家族や既存従業員との関係が大事

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家業を継ぐと決めたときにまずしたのは、お父様に約束してほしいことを、A4サイズの紙10枚にまとめて渡すことでした。「前職で事業承継に悩んでいる人たちをたくさん見てきたので、事業承継失敗の一番の原因が親や既存従業員との軋轢にあることもよくわかっていたんです。だからそうならないよう、『頭ごなしに否定しないでください』とか『お酒を価値観に持ち出すのはやめてください』とか、『既存従業員の抵抗に父親が乗った瞬間に事業承継は絶対に失敗するから、そういうのはやめてください』とか、思いの丈を綴って渡しました。『わかったわかった』って、雑な感じで了承されましたけど、元金融機関職員なのでエビデンスが命と心掛けてます(笑)。あとで揉めないよう形にして渡すのって大事ですよねました」

そうしてお父様が70歳になる3年後に完全に引き継ぐことを目標に、まずは平社員として入社。現在は業務効率化と事業企画に注力しながら、IT化や総務、人事、経理、生産管理など幅広く見ています。他の従業員との関係も、うまくいっていると感じているそう。「常日頃から、社員のみんなと可能な限りコミュニケーションを丁寧に取るようにしています。すれ違うときに、悩んでることはないか聞いたり、いつもありがとうございますって感謝を伝えたり。マネジメントの大前提と思いますが、一緒に働いて下さっている社員にまずは心から感謝した上でみんなの感情に寄り添うことはとても大事だと思っています。もちろん”自分が社長の息子だから”というのは絶対に忘れてはいけない事ですが、自分の熱い想いを語るとみんな一緒に頑張ろうと立ち上がってくれて、本当にありがたい事だなと感じています」

個性的なカンづくりも

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お父様の会社は明治創業。今は石川さんが主導で2つの新規プロジェクトを進めていますが、これまでにも個性的なカンづくりにチャレンジされたことがありました。「スクエアや丸い形のもの、カラフルなタイプのカンも、僕が入社するより以前につくったことがありました。用途提案までできずなかなか売れなかったんですが、中にはヒットしたものもあって、今でも結構売れています。まだ在庫があるものに関しては廃棄しようかなと思っていたんですが、twitterで投稿したら反応があって。今はオンラインショップで売ってみようかなと考えています」

想いを伝える体験をつくりたい

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宝物を入れたり、プレゼントを入れたり。カンは、私たちの身近にありながらロマンも感じることができる、ちょっと特別な存在です。そんなカンをつくる仕事を通じて、石川さんがこれからチャレンジしたいことを聞いてみました。

「カンってただの入れ物だと思われがちですけど、誰かが『こういうものを入れて、消費者に想いを届けたい』って一生懸命考えてつくられるものでもあるんです。彼らの想いを消費者に届けて、人と人の想いをつなぐというのが、僕たちの仕事だと思っています。それを今よりもう少し明確に打ち出せるようにして、カンを使った人たちが喜んでくれて幸せになるようなことがもっとできたらいいなと思っています。

実は僕の妻はフィンランド人なんですが、フィンランドのデザインって、戦争の辛い時代に日常に少しでも彩りをということでつくられたものだと言われているんです。それって今のコロナ禍で気が滅入りがちな今の状況に凄く似ていて、日常に取り入れて少しでも気分が明るくなるようなデザインを施したカンを作って、そんな想いを伝えることが出来たら嬉しいなと思います。また、妻の母国であるフィンランドとデザインとのコラボは、僕の夢のひとつですね」

自分の仕事で誰かを幸せにすることを実現したくて、家業を継ぐことを決意し、地元に帰ってきた石川さん。取材中も、従業員のみなさんがそばを通るたびに挨拶されていた姿がとても印象的でした。新しい夢がたくさん詰まったチャレンジが、ここから始まります。

(執筆:梅本 智子/編集:出川 光)

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