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In Motion 2017ー変容

NOW & HERE #15 (2017年4月記)

桜がほころび穏やかな日差しが
今年も生真面目に降り注いだ日の夜、
仕事を片付けて渋谷に向かいました。

今だに僕にとっては迷路のような
都心の地下通路をさまよいながら
地上に出ると、そこはエリクトリック
パレードに魅せられた人たちが
幾重もの流れにまかせて確かな
足取りでヒトの足にもつれる
こともなく漂っている。

流れの溜まり場、
スクランブル交差点で立ち止まると
空に瞬くはずの星屑がまるで精巧に
ぶち壊されたガラス細工のように
地上に打ち上げられていた。

ふと見上げるとそそり立つビルに
切り抜かれた夜空のど真ん中に
半分だけの青い月が無表情に
ぼくらを眺めている。

ケンタッキーフライドチキン
2ピースで腹ごしらえして
開場時間に現地に到着する。

大きめのライブハウスにパイプ椅子が
並べられ腰掛けて観覧出来そうだ。

開演前のステージ上、
後ろの壁面では大きな男爵芋が
モノクロの色彩で回転して時々
ウニのような棘を瞬間はやしている。

開演時間きっかりにメンバーは現れた。

佐野元春は噂どうり
大胆にショートに刈ったヘアスタイル。
あれれ、珍しくネクタイを締めている。
そして、まるでデビュー当時ぐらいの
体型まで絞り込んだかのような
佇まいはとびっきりクールでシャープだ。

小さな合図で山木さんのドラムスが
転がりはじめた。

「再び路上で」

しょっぱなから待ちわびたぼくらの
中の見知らぬ場所を掻きむしる。

言葉がリズムに寄り添い、
ある時にはすり抜ける。
そしてまた、その真逆の様相。

会場のみんながこの緊張感と
高揚感と開放感と閉塞感の行ったり
来たりにモゾモゾしているのを感じる。

「何もするな」

バックの水の流れの映像と相まって
清々しさと見知らぬ力がみなぎる。

日々営みの中、通り過ぎて行く
ヒトビトの顔、姿 、何処かで
見たことのある様な風景。
からまる言葉。輪郭を描くBEAT。
ひっかき傷を残す佐野元春のギターソロ。

地の底からのたうち回る様な電気的な
フィドル。たおやかに野山を駆ける
フィドルの音色。

井上鑑さんの鍵盤の音色は確実に
映像に溶込み全体の行方を司っている。

合わせ鏡の映像と言葉の断片が
迷宮へとぼくらを誘う。

「憂鬱なヴィジョンはもううんざりだ。」
と繰り返し繰り返して語る。

怒りの言葉はないが、
サウンドの端々にほとばしる火花が「Shame」を飛躍させる。

「ぼくに出来ること」

出来ることは何か?

張り巡らされた姑息な罠。
すり抜けて注意深く流れを見定めてみる。
間違いが取り返しのつかなくなる前に
帰り道を確保すること。

佐野元春の生み出すポップ音楽は
スポークンワーズとは地続き。

何かが終わったのは確かだ。 
でも何がはじまっているかは
この立ち位置からはまるっきり
わからない。原因のありかは、
たやすく見つけられるだろう、
わかったところでどうする?

ただ心を出来るだけ
開けっぴろげにしてみる。

死ぬまでジタばた。

まもなくまた日は昇る。

もう一度立ち会いたい。
切り刻まれた断片は焼き付いてる。

曖昧な断片をもう一度おさらいをしたいよ。

どうもありがとう。
佐野元春
With 井上鑑ファウンデーションズ

世界中のボヘミアンに出会う
グローバルな船出を祝して!!!!!!!

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