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タイさんの取材ヨレヨレ日記⑪ 検察といえば思い出す 

この原稿を書いている時点では、安倍派の「裏金問題」が大きなニュースになっています。世間の期待はズバリ、地検特捜部がどこまで政界の闇に迫ることができるのか、そしてどんな世直しをしてくれるのか。検察が一種の「ヒーロー」のように持ち上げられています。

ただ、私には検察に対して、根強いマイナスのイメージがあります。

90年代後半は、金融業界にとって激動の時代でした。銀行や証券会社の破綻が相次いだだけではなく、水面下に隠れていた反社会勢力との関係を暴かれた金融機関もありました。

ある金融機関の会長のお話です。

この方は素晴らしい人格者。夜討ちに来た記者にはいつも「お疲れ様」と声をかけ、雨の日や冬の寒い夜にはご自宅の応接室へ通して、質問に丁寧に回答してくれました。ご自分は下戸にもかかわらず、記者たちにお酒をふるまってくれることもありました。

ところが、そんな会長が、ある事件に関連して検察の取り調べを受けます。連日連夜の厳しい追及で神経をすり減らしてしまったのでしょう。突然、自らの命を絶ってしまいました。

しめやかに執り行われたご葬儀には、多くの記者が参列しました。会場に掲げられたご遺影を見つめ、涙を流す記者も大勢いました。

「検察のやり方はいつもむごい。気の弱い相手を選び、徹底的に締め上げてくる」

ライバル紙のキャップが吐き捨てるように言った言葉が、今も耳から離れません。
 

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