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タイさんの取材ヨレヨレ日記⑧ 圧倒的に増えているプレスリリース

今回は趣向を変えて、メディアの現場で今、起きている変化についてお話しします。

後輩の記者たちと話していると、彼らが異口同音に強調するのは、「メディアに持ち込まれるプレスリリースの量がとても増えている」という点です。

一番の理由はプレスリリースを発信する側の手続きが簡単になったことです。

つい数年前までは、各社の広報の方々がプレスリリースを数十部もプリントアウト。霞が関や大手町などにある記者クラブまでわざわざ運び、指定の資料棚に投げ込んでくれました。たまたま記者クラブに知り合いの記者がいたら、持参したリリースを手渡ししながら、その内容について簡単に説明しました。

長く続いてきたこうしたやり方はコロナ禍で一変します。記者たちと広報担当者の「濃厚接触」を回避するため、プリントアウトしたリリースを記者クラブに持ち込む、という方式自体が禁止となったのです。もちろん、至近距離での説明などもってのほかです。

代わって採用されたのはネット経由での発信です。プレスリリースをメールで記者クラブの窓口に送れば、所属する記者たちに自動転送されるようになったのです。

これによって、発信側の負担は劇的に軽減されました。だって、いちいち紙の資料を運ばなくても良くなったんですから。

作業が楽になれば当然、これまでだったらリリースしなかったような内容についても、「一応、送っておくか。もし、取り上げてもらったらラッキー」となります。

これがプレスリリースが増えた理由の一つです。

もう一つは、PRの手段としてのプレスリリースの価値が見直されたことです。

考えてみてください。たとえば、ある企業が新しい商品を発売したとします。高いコストをかけてテレビCMや新聞、雑誌に広告を出す、というPR手段は昔からポピュラーです。

一方で、新商品を紹介したプレスリリースが多くのメディアの目に留まり、テレビニュースや新聞記事で派手に取り上げられた場合、そのPR効果は絶大なものがあります。しかも、テレビCMや新聞広告に比べたら、リリースに必要なコストは激安です。

不景気のせいでしょうか。PR手段としてのプレスリリースのコストパフォーマンスの良さに目をつける会社は急増しています。

コロナ禍は一段落したものの、メディアに届けられるプレスリリースの量はこれからも右肩上がりで増えていきそうですね。


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