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ファッションにおけるお困り事に関するアンケート調査

こんにちは。ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所(以下、障がい者総研)の戸田です。

今回は、「ファッションにおけるお困り事に関するアンケート調査」をお届けします。

このアンケート調査は、障害のある方の『ファッションにおけるお困り事』を把握することを目的に、SOLIT株式会社様(以下SOLIT様)と合同で実施しました。

これまで障がい者総研では、主に障害者が「就労時に直面する課題」に焦点を当てた調査を中心に行っており、日々の生活における「衣・食・住」に関するアンケート調査はあまり実施できていませんでした。今回SOLIT様よりお声がけをいただいたことを機に、「衣服・被服」に関する障害者の困りごとについてのアンケートを実施できたことは、障がい者総研としてもまたとない貴重な調査となりました。SOLIT様にはこの場を借りて御礼申し上げます。

アンケート結果は、障がい者総研、並びにSOLIT様それぞれのWebサイトに公表されます。

対象者:障がい者総合研究所アンケートモニター(回答者属性は巻末をご覧ください)
実施方法:インターネット調査
アンケート期間:2022/2/25~2022/3/4(有効回答者数:111名)

【質問1】 あなたは結婚されていますか。

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【質問2】 あなたと同居されている方を全て教えてください。

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【質問3】 あなたはファッションにどのくらい興味・関心をお持ちですか。

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ファッションに興味・関心がある人の割合はおおよそ66%だった。これを年代別で見るとファッションに関心のある割合は、20代までの群だと90%、30代では約73%、40代では約63%、50代以上では約62%と年代が若いほど興味・関心の度合いは高かった。

【質問4】普段のご自身の衣服の購入状況について教えてください。あなたご自身が、1年間で衣服・ファッションに費やす平均的な金額を教えてください。

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ファッションへの年間平均支出額は「1万円以上3万円未満」と回答した人が最も多く全体の約28%となった。また、年間に3万円以上支出する人の割合は全体の約34%となった。

【質問5】 普段よく購入するブランド・企業があれば教えてください。(複数回答可)

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その他の回答(一部抜粋)
 ・ユナイテッドアローズ ・セシール ・patagonia
 ・タカハシ ・グローバルワーク ・TAKA-Q
 ・SHIPS ・GAP ・adidas など

【質問6】 衣類の購入方法を教えてください。(複数回答可)

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服の購入方法として最も多かったのは「店頭で購入」で、全体の約89%にのぼった。また、全体の約54%は「ECサイトで購入(※)」と回答。

※複数回答可能な質問であり、そのうち「ECサイト(ブランドが運営)で購入」「ECサイト(楽天やAmazonやZOZOなど) で購入」「メルカリやヤフオクなどサービスを活用して購入」のいずれか一つを回答した場合を「ECサイト利用者」とみなした。

【質問7】購入する際の選ぶ基準は何ですか。(複数回答可)

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【質問8】衣服に関して、メーカーや販売店などに改善してほしいと思うことがあれば教えてください。(複数回答可)

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その他の回答(一部抜粋)
・試着室に椅子が欲しい(店員さんにお願いすると出してもらえますが、常設だったら、いろいろな人が試着しやすいと思います)(40代/上下肢)
・薬の関係でどうしても急激太ってしまうので、ラフでサイズの大きい品揃えが欲しいです。(50代/うつ)
・サイズ表記を大きくしてほしい(20代/視覚障害)
・レース、ビーズ、ボタン、ラメ感などといった手で触ってデザインがイメージできる物を増やしてほしい。ユニクロも最近は、下着などにタグをつけなくなり、以前はボタンなどがついて可愛かった下着もなくなり、手で触って確認できる物がないので、下着の前・後、表・裏が本当に把握しずらく時間がかかり、見えていないことが切なくなったり、情けなかったり、悲しい想いになることがある。(40代/視覚障害)

【質問9】衣服に関して、一連の消費者としての行動・体験(情報収集→来店・接客→購入→アフターサービス)を通して、自分に配慮されていると思う企業はどこですか。(任意回答)

回答(一部抜粋)
・無印良品。商品が見やすい位置に配置されているから。(50代/視覚障害)
・株式会社JAVAコーポレーション。スタッフが色や素材を丁寧に説明してくれる。セールやイベントのお知らせを詳細に連絡してくれる。(50代/視覚障害)
・装具対応靴のムーンスターさん。履きやすさとデザイン含め自分の装具に合う靴の選択支は少ないなかで助かってます。(中略)意地で少々不便でも自分の健常者の時のファッションスタイルは崩したく無い(50代/上下肢)
・紳士服の青山。接待対応が丁寧であるし、いろんなアトバイスもあるから(50代/聴覚障害)

【質問10】自分向けだと思う・作り手が寄り添っている印象を受けるファッションブランドはどこですか。(任意回答)

回答(一部抜粋)
・「ファミリア」や「BeBe」が好きです。ベビー服のブランドは高いが着せ替えしやすく洗いやすく長持ちし、肌触りもよくデザインもかわいい。(50代/視覚障害)
・GYDA。流行に流されていないから。
 RESEXXY。お姉さん系にこだわってるから。
 TWEED DRESS 。生地へのこだわりが素晴らしい。(30代/発達障害)
・ニッセン。サイズが豊富で、着脱を考え大きめを選ばないといけないので助かる。(50代/上下肢)

【質問11】 インクルーシブファッション・ユニバーサルファッションというジャンルを知っていますか。

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【質問12】インクルーシブファッションとは、障害の有無や年齢、性別、国籍などにかかわらず、すべての人を包摂して孤立させないことを目指すファッションのことです。 インクルーシブファッション・ユニバーサルファッションの服を購入したことはありますか。

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【質問13】インクルーシブファッション・ユニバーサルファッションで思いつくブランドがあれば教えてください。(複数回答可)

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「その他」で回答いただいた 66件中60件(90.9%)は、「知らない」「思いつかない」といった回答となった。

【質問14】インクルーシブファッション・ユニバーサルファッションをご存知で、購入していない場合はその理由、リピートしていない場合はその理由を教えてください。(任意回答)

購入していない
・デザインが好みと合わない。(20代/上下肢)
・金銭面での余裕がないため。(20代/下肢)
・デザインに好きなものがない。(50代/その他精神障害)
・近くにお店がない。ネットで見ても自分に合うかわからないので、実物確認して購入すると失敗がない。(60代/聴覚障害)

【総研の見解】


今回は111名の方より回答をいただきました。アンケートにご協力いただいた皆様には改めて御礼申し上げます。

ファッションに興味・関心のある方は回答者全体のおおよそ66%でした。
これを年代別で見ても各年代で60%以上と、総じてファッションに興味・関心があるという回答となりました。

ただ、「ファッションの困りごと」に関する具体的な自由回答などと併せて読み取ると、単にファッション=おしゃれに関心がある、というよりは、広く「衣服」に関する固有の困りごとがあり、それゆえどの年代でもファッションに関心がある、という回答につながった、ともいえそうです。例えば視覚障害の方には衣服の裏地についているタグを手がかりに服の前後、裏表を判断しているという方もおり、それがないことで時間がかかるといった声も寄せられました。

普段よく購入するブランドには、ユニクロ、GU、しまむらといったいわゆる「ファストファッション」が上位に入りました。これは購入基準に関する質問の回答で「価格」「デザイン」「生地や素材」といった項目が上位に出てくることからも選ばれるべくして選ばれたブランドかと思います。障害の有無にかかわらず、巷間で行われる人気ファッションブランドアンケートの結果とも相違ないものといえるでしょう。

今回特に注目したのは、自由回答に寄せられた声です。

「ファッションの困りごと」というアンケートなので、前提として「ファッションを楽しみたいから、(自分の身体特性や障害の状況に合わせて)服の方を自分たちに合わせてほしい」というニーズに関する回答が多くなると予想していたのですが、ふたを開けてみるとそうした回答は一定数あったものの、どちらかというと店舗のインフラに関するリクエスト(入りやすくしてほしい、試着室を広くしてほしいなど)といったことや、サイズをもっと展開してほしい、といったような、「ファッションを楽しみたいから、(今ある服をそのまま着こなせるように)自分たちを服に合わせるためのサポートが欲しい」、といったニーズもおなじくらいある、ということが分かりました。

「少々不便でも自分の健常者の時のファッションスタイルは崩したく無い(50代 上下肢)」。こうした声が寄せられ、そうしたニーズに気づけた今、ファッション業界でどういった配慮やファッションのあり方が提案できるでしょうか。今後、この調査結果をファッション関連企業にも知ってもらうことで、解決策を考え始めるきっかけになればと考えています。

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【属性情報】


■年代

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■障害種別

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■プロフィール
障がい者総合研究所 所長:戸田 重央

戸田さん

2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと(現atGPジョブトレ大手町聴覚障害コース)※」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。※聴覚障害者専門の就労移行支援事業所「atGPジョブトレ大手町聴覚障害コース」



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