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障害者のテレワーク普及度に関する調査(2021年)

こんにちは。ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所の戸田です。

今回は、「障害者のテレワーク普及度に関する調査(2021年)」をお届けします。

新型コロナウイルスの発生以降、主要都市においてたびたび緊急事態宣言やまん延防止措置が発出されてきました。それに伴い、皆様の職場でもテレワークの導入など、働き方になにがしかの変化が生じたことと思います。

コロナ禍より早2年が経過し、新たな変異株「オミクロン株」への警戒、あるいは第6波への警戒が呼び掛けられるなど、いまだその脅威は続いているように見えます。

そこで障がい者総合研究所では、テレワークに着目し、この1年を通じて障害者が働く職場でテレワークがどれだけ定着しているかその実態を知るべく調査を実施しました。テレワークは今、どの程度障害者の就労環境に定着しているでしょうか。

対象者:障がい者総合研究所アンケートモニター(回答者属性は巻末をご覧ください)
実施方法:インターネット調査
アンケート期間:2021/12/8~2021/12/13(有効回答者数:146名)


【質問1】 現在、ご自身の職場でテレワークは導入していますか?

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勤務先でテレワークを実施している割合は59%。一方、テレワークを導入したことがない勤務先は31%でした。

【質問1-2】質問1でテレワークを「利用していない」と答えた方に質問です。なぜ利用していないのか教えてください。(一部抜粋)

・出勤しないと仕事が出来ないので。(男性/30代/上肢)
・持ち出し厳禁の個人情報(紙媒体)を扱っているためテレワークができない。(女性/30代/上肢)
・正社員はテレワークがあるのに、非正規(障害雇用)のテレワークはない。(女性/50代/視覚障害)
・派遣社員と障害者雇用は対象外のため。(女性/30代/発達障害)


 【質問2】あなたは現在どれくれらいテレワーク勤務をしていますか?(質問1で「テレワークを利用している」と答えた62名の内訳)

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テレワークを利用している層のうち、最も多い回答は「週に3~4日」となり次いで、「ほぼ毎日」「週に1~2日」となりました。

【質問3】テレワークの導入は、あなたの働き方にとってメリットがありますか?

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「非常にメリットがある」「まあまあメリットがある」と答えた方が58%。
 「あまりメリットはない」「まったくメリットはない」と答えた方が20%でした。

【質問3-1】質問3で「あまりメリットはない」「まったくメリットはない」と答えた方に質問です。その理由を差し支えなければ教えてください。(一部抜粋)

・水耕栽培の仕事のためテレワークは難しい。(女性/50代/発達障害)
・機密情報、公文書を取り扱うため、テレワークを行うと仕事が成立しないのと情報漏洩のリスクが増大するため。(男性/20代/てんかん)
・仕事が進まない、ルーティーンが崩れることで体調も悪化した。(女性/30代 /発達障害)


【質問4】コロナ禍以前と比べ、あなたの仕事量に変化はありましたか。

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「仕事量は変わらない」答えた方が最も多く、51%。「仕事量が減った方」は17%、「増えた方」は32%という結果でした。


【質問5】 今後、あなたの職場にテレワークが導入される予定、計画はありますか?

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「テレワーク継続中」「テレワークの導入予定がある」と答えた方は全体の53%でした。「テレワークの導入予定はない」と答えた方は22%でした。


【まとめ】


今回のアンケートにご回答いただいた方々の職場でのテレワーク導入率は59%でした。今年1月に実施した同様の調査では、テレワーク(前回質問ではローテーション勤務も含む)導入率は62%。コロナ禍でもう少しテレワークの普及が進むと思われましたが、頭打ちとなっているようです。

一方で、テレワークを導入した勤務先では、「テレワーク」という新しい勤務形態が一定程度定着しているようです。実際、テレワーク利用中の方の利用状況を見ると、週1回以上の利用者が89%、週3日以上テレワークを利用している方は65%となっており、テレワークでの働き方が着実に進んでいる様子が伺えます。

一方、勤務先ではテレワーク制度はあるのに利用していない方もおり、その理由として「配属先の業務がテレワークに不向き」といった業種上の理由、また障害者雇用、非正規雇用はテレワークの対象外といった制度上の壁もあるようです。

次にテレワークのメリット・デメリットについて尋ねた質問では、「メリットあり」が58%、「デメリットあり」は20%という結果になりました。デメリットととらえる理由としては、「テレワークに不向きな業務だから」という声が多数でした。

これを手帳種別で見ていくと、

■身体障害者手帳保持者

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「非常にメリットがある」「まあまあメリットがある」と答えた方が68%。「あまりメリットはない」「まったくメリットはない」と答えた方が15%でした。

 ■精神障害者保健福祉手帳保持者

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「非常にメリットがある」「まあまあメリットがある」と答えた方が46%。
「あまりメリットはない」「まったくメリットはない」と答えた方が27%でした。
 
この数字からテレワークの導入は身体障害者にメリットが多いという見方もできそうですが、これを雇用形態別等も加えて詳しく見てみると、

身体障害者手帳保持者のうち、
 正規雇用の方のテレワーク利用率は 60%
 非正規(雇用の定めなし)の方のテレワーク利用率は 41%
 非正規(雇用の定めあり) 30%

一方、精神障害者保健福祉手帳保持者のうち、
 正規雇用の方のテレワーク利用率は 21%
 非正規(雇用の定めなし)の方のテレワーク利用率は 42%
 非正規(雇用の定めあり) 20%

となり、正規雇用にも関わらず、精神障害者保健福祉手帳保持者のテレワーク利用率が21%と身体障害者手帳保持者のテレワーク率と比較して大きく下回りました。

ちなみに、
 身体障害者手帳保持者の雇用形態の内訳

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精神障害者保健福祉手帳保持者の雇用形態の内訳

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正規雇用の割合で2倍以上の差がありました。自由回答にもあったように、テレワークが適用されるのは正規雇用であり、非正規は対象外、といったような制度上の問題も加味すると、正規雇用の割合が多い身体障害者手帳保持者のほうでテレワークにメリットがある、という回答が多くなっている可能性も否めません。

テレワークによる仕事量の変化について尋ねた質問では、約半数の方は仕事量は「変わらない」と答えました。一方、仕事量が減ったと答えた方は17%、増えたと答えた方は32%でした。

前回調査(2020年1月実施)では、同様の質問をした際、仕事量が「変わらない」と答えた方は67%。一方、仕事量が減ったと答えた方は16%、増えたと答えた方は17%でした。この結果を見る限りでは、テレワーク導入でも仕事が変わらない、むしろ増えた、という人が大勢をしめました。

テレワークの導入予定についての質問で導入予定はないと答えた方が全体の22%ですが、これを、Q1で「テレワークを導入していない」または「一時期導入していたが、現在は実施していない」と回答した56名の内訳だけで見ると

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現時点でテレワークを導入していない職場では今後の導入についてのめどはなさそうな印象です。

【総研の見解】


コロナ禍より2年が経ち、緊急事態宣を受けて職場では、着実にテレワークがニューノーマルの働き方として根付いてきているようです。

テレワークの導入がされていないおよそ3割の職場では、接客業や医療関係といった業種、業態の特性上テレワークを導入できないという事情、それから雇用形態がテレワーク適用外といった制度上の理由も見えてきました。「テレワークが利用できれば移動しなくてよい」「感染リスクを下げられる」といった様々な理由で、あらゆる障害者にメリットの多い勤務制度だと思われますが、雇用形態によりその恩恵にあずかれない人がいるということが今回の調査で見えてきました。特に身体障害者と精神障害者で正規雇用率で差が大きく、それによりテレワーク利用にも格差が生まれているようにも見られます。

図らずも新型コロナウイルスの影響によりテレワークは一気に普及すると思われましたが、緊急事態宣言も明け、コロナ感染者数にも一定の落ち着きがみられる中で、テレワークの普及に一時期ほどの勢いは見られません。しかし、コロナ禍についてはまだ予断を許さない状況であり、ウィズコロナ時代の働き方として、またコロナ禍とは別に、国が推し進める労働人口対策である「働き方改革」を実現する足がかりとしてもテレワークの検討は外せないでしょう。

※構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100とはならない。
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【属性】

■性別

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■年代別

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■手帳種別

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■雇用形態別

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その他、コロナ禍における障害者の働き方に関する調査

「2度に亘る緊急事態宣言、障害者の仕事への影響度に関するアンケート調査」(2021年1月実施)
「外出自粛要請下における、就労状況の変化に関するアンケート調査」(2020年5月実施)
「勤務先における新型コロナウイルス(COVID-19)の対策に関する
緊急アンケート調査」
(2020年2月実施)

プロフィール
障がい者総合研究所 所長:戸田 重央

戸田さん

2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと(現atGPジョブトレ大手町聴覚障害コース)※」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。※聴覚障害者専門の就労移行支援事業所「atGPジョブトレ大手町聴覚障害コース」






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