外出自粛要請下における、就労状況の変化に関するアンケート調査
こんにちは。ゼネラルパートナーズです。
今回は、「外出自粛要請下における、就労状況の変化に関するアンケート調査」の結果についてお届けします。
新型コロナウイルスが発生してから、全国的に外出自粛要請が発出されました。それに伴い、皆様の働き方にもなにがしかの変化がみられたことと思われます。
そこで障がい者総合研究所では、外出自粛要請のもと、障害者の働き方にどんな変化が生じたのかその実態を知るべくアンケート調査を行いました。全国的に緊急事態宣言の解除が発令されましたが、第2波第3波発生の予防のためにも、「新しい生活様式を踏まえた職場」についても探っていきたいと思います。
対象者:障がい者総合研究所アンケートモニター(回答者属性は巻末をご覧ください)
実施方法:インターネット調査
アンケート期間:2020/5/15~2020/5/21(有効回答者数:213名)
【質問1】新型コロナウイルスによって就労状況に変化はありましたか?
【質問2】新型コロナウイルスによる就労状況の変化についてはどう受け止めていますか?
【質問3】就労状況の変化について、良くなった点、悪くなった点を教えてください。
(回答より一部抜粋)
<良くなった>
・在宅勤務ができるようになり、通勤の疲れが無く体力的に楽になった。通院が便利になった。残業が無くなった。(女性 30代以上 内部障害)
・車椅子で移動しているが在宅ワークは、電車等で他の人達の障害にならないので自分の中のストレスが無い。(男性 60代以上 上下肢)
・時短勤務になり、シフト制になったが、給料は補償されているので就業が気楽になった。(男性 30代以上 精神障害その他)
<悪くなった>
・いつものルーティンワークができなくて、社会リズム、生活リズムが狂った。(男性 40代以上 躁うつ)
・社員とのコミュニケーションがほとんどとれなくなった。(女性 40代以上 上下肢)
・時短勤務になり収入が減った。(男性 40代以上 うつ)
【質問4】あなたの勤務スタイルに生じた変化を教えてください。(複数選択可)
(自由回答欄より一部抜粋)
・出社と在宅勤務半々(午前出社、午後在宅)。(女性 30代以上 注意欠陥/多動性障害(ADHD))
・ウィークデイは自宅に帰らず、職員寮に泊まり込み。(女性 50代以上 上下肢)
・交代勤務の導入。(男性 60代以上 下肢)
【質問5】あなたの仕事上の変化を教えてください。(複数選択可)
・(テレワークのための)通話料金の発生。(女性 30代以上 ぼうこうもしくは直腸)
・退職者も多く、時間というより業務内容と量が、報酬に見合わないし、健康の維持も難しい。(女性 40代以上 躁うつ(双極性))
【質問6】働き方が変わったことで、あなた自身にはどんな変化がありましたか?
【質問7】今の働き方のもとで、あなたが自己管理で気をつけていることはありますか?
※回答の多い順に大別したものを下表にまとめました。(自由記述)
一人で複数の自己管理方法を記載いただいたものについては、一番最初に上げられた例を基に大別しています。
■自己管理方法について
生活リズムの維持… 56件
適度な運動(散歩など)… 28件
その他 … 15件
十分な睡眠 … 11件
手洗いうがいなど徹底 … 10件
ストレスを貯めない… 7件
外出の自粛 … 5件
「その他」より一部抜粋
・SNS依存になりがちなことを自覚し、時にはSNSへの投稿を休む日を作る。(女性 30代以上 高機能自閉症・アスペルガー症候群)
・在宅勤務でも、必ず身だしなみを整えてから業務を開始する。(女性 50代以上 下肢)
・飲酒量が増えないように、食べ過ぎに気を付ける。(男性 40代以上 高機能自閉症・アスペルガー症候群)
・過集中にならないよう意識的に席を立つ
など
【質問8】働き方の変化として良くなったと思うこと、悪くなったと思うことをそれぞれ上位2つまで教えてください。
<良くなったと思うこと>
<悪くなったと思うこと>
【質問9】今の働き方でのコミュニケーション面の状況について教えてください。
【質問10】希望する相談の頻度について教えてください。
【質問11】今の働き方のもとで、コミュニケーション面で職場に求めたいことはありますか?(複数回答可)
【質問12】職場のコミュニケーションにおいて、実際してもらえて良かったことはありますか?
(回答より一部抜粋)
・みんなもイライラしている中で気を使っていただいていること。(女性 30代以上 聴覚)
・業務で困った時、オンラインでのチームMTGを誰からでもセットできるようにしてもらった。(女性 30代以上 注意欠陥/多動性障害(ADHD))
・ツールを使用しての雑談機会の増加。(男性 40代以上 視覚)
・いつでも何でも相談してくださいと上司や同僚から言われ、定期的に声かけしてもらえること。(女性 40代以上 統合失調症)
・社用スマホを支給してもらえたことで、いいタイミングだからと業務の幅、裁量が広がったことなど。(女性 30代以上 統合失調症)
【質問13】あなたが職場でのコミュニケーション面で工夫していることはありますか?
(回答より一部抜粋)
・笑顔で挨拶を欠かさない。(女性 40代以上 聴覚)
・自分から話す。(男性 40代以上 上肢)
・体調が悪い時などは状況をしっかり伝えるようにしている。精神障害は特に自分から伝えないと配慮する側もわからないと思う。(女性 30代以上 躁うつ(双極性))
・相手の声がきちんと聞こえるまでは、反応しない事にしている。(男性 40代以上 聴覚)
・相手に伝わらなかったと感じた時に、同じことを言いなおすのではなく言い換えをすること。(男性 30代以上 高機能自閉症・アスペルガー症候群)
・仕事においては一方的に意見を言わず、相手の相手の話しにも十分耳を傾ける。(男性 50代以上 てんかん)
【まとめ】
[1] 新型コロナウイルスによって、“就労状況に変化があった”と回答したのは75%。
[2] 新型コロナウイルスによる就労状況の変化として“悪くなった”と回答したのは、良くなったと回答した方の約2倍。
[3] 具体的に変化した事柄としては、「在宅勤務」が一番多く全体の約40%、次いで「自宅待機(約23%)」「勤務時間の変更(約22%)」となった。
一方で回答者のおおよそ4人に1人(約24%)は具体的な変化はないと回答。
[4] 仕事上の変化については、「コミュニケーション方法」と回答した方が最も多く、次いで「業務の進め方」「業務量の減少」「コミュニケーション頻度の減少」となった。
[5] 働き方の変化に伴い、自身の変化として「オンオフの切り替えがしづらくなった」と回答する方が最も多く全体の約28%。次いで「休憩を取る時間が増えた」「体調が悪化した」「効率が下がった」となった
[6] 働き方の変化として“良くなった”と思うこととして上位から「通勤」「体調管理」。逆に、“悪くなった”と思うこととして上位から「コミュニケーション」「体調管理」となった。
[7] 今の働き方でのコミュニケーションについて、コミュニケーションが取れていると答えた方は全体の47%。コミュニケーションが不足していると答えた方は53%となった。
[8] 希望する相談の頻度については、「固定での機会は必要ない」と回答する方が最も多く、全体の約47%。一方で「週に1回以上」と回答した方は全体の約22%となった。
[9] 今の働き方の下でコミュニケーション面で職場に求めたいこととして最も多く選ばれたのは「気軽に質問できる体制(約37%)」、次いで「相談しやすい体制(約34%)」「周囲の状況がわかる体制(約33%)」となった。
【総研の見解】
今回は213名の方より回答を得られました。回答者の障害手帳種別の割合は、身体49%、精神46%、知的 3%。これは日本の障害3区分割合(※1.令和元年版 障害者白書より)の概数(身体45.3%、精神43.5%、知的11.2%)と比べて、知的障害者の回答が少なめとなりました。
また、身体障害の割合をさらに細かく見ていくと、回答者の属性は、
・視覚障害… 7.5%
・聴覚・言語障害…18.7%
・肢体不自由… 42.1%
・内部障害… 31.8% となりました。
これは日本の障害種別割合(※2.平成28年生活のしづらさなどに関する調査より)と比較すると、
・視覚障害… 7.3%
・聴覚・言語障害… 8.0%
・肢体不自由… 45.0%
・内部障害… 28.9%
・不詳… 10.8%
聴覚障害者の回答が多めになるという結果になりました。これは前回実施したアンケート調査と同様の傾向となります。
さて、総研では今回のアンケートの結果より、「コミュニケーション上の変化」に着目して「新しい生活様式を踏まえた職場」について考えてみたいと思います。
まず、就労状況に変化があったと回答した方は75%に及びました。多くの方が就業先の新型コロナウイルス対策として、働く時間帯や場所で何らかの影響を受けたとみられます。また、仕事上の変化として大きな変化を感じられたことに「コミュニケーション方法」との回答が最も多く、かつ「悪い変化」として一番多く選ばれる結果となりました。
そして「今の働き方のもとでコミュニケーション面で職場に求めたいこと」として
・気軽に質問できる体制
・雑談しやすい体制
・周囲の状況がわかる体制
・障害配慮を依頼しやすい体制
といった、いずれも自分から能動的に働きかけるような項目が上位に上がりました。
この調査で見えてきたこととして、自粛要請下で職場とのコミュニケーション機会が減る中で、職場との関わりを維持したい、という点に注目すべきでしょう。これは、先述の「コミュニケーション面で職場に求めたいこと」という質問で、「気軽に質問しやすい体制」「雑談しやすい体制」という選択肢が上位に選ばれる点からも見て取ることができると思われます。
ただし、前回の弊社緊急アンケート調査において、「会社に希望する具体的な対策案を持っていても要望をあげたことがある人は全体の13%」という結果からも、会社に意見をすることに抵抗を感じる人が多いということも見受けられます。
こうしたことを総合的に鑑みて、職場として障害者社員の声に応える対策として、
①障害者社員の話を聞くこと(コミュニケーション頻度の希望、不安なことや求めることはあるか)
②障害者社員と関わること(昼食やMTG等を通じて、雑談、チームの方向性について一緒に考える)
がより大事な事柄になると思われます。そのうえで
③職場からの情報発信=伝えること(業務上の伝達と不明点の確認、人事労務情報の伝達、成果物に対するフィードバック、周囲の状態の可視化)
への工夫を考えられるとよいかと思われます。
今回のアンケート結果が、障害者を雇用する企業様にとって「新しい生活様式を踏まえた雇用管理」のための参考となれば幸いです。
※1.令和元年版 障害者白書
※2 平成28年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査):結果の概要
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【属性情報】
性別
年代
勤務期間別
雇用形態別
勤務時間別
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?