見出し画像

泳げない子が 海で見つけた 浮かぶ楽しさ

彼が小六の夏休みに僕はある決断をした。学校一泳げない生徒として夏休みの補習を受けていた。塩素の水槽に浮かべるか否かで優劣がつく。彼は特に運動が苦手で水に顔をつけることすら学校生活の苦痛でしかない。でも、それを義務教育の6年間ずっと受け入れている息子を傍で見ていて、燻るものが僕の胸にあった。海はもっとすごいよ。プールの何百倍も楽しい。って。僕自身、息子が泳ぐのを諦めていた。でも海を感じて欲しいと急に思った。海を好きになって欲しいと。そこで息子とシュノーケリングをしようと決めたんだ。

泳げなくってもいい

プールなんてどうでもいい。我々のルーツである海や自然を狭めないで欲しいと思った。学校のたった25mで水を嫌いになることはないなと。夏休み前に息子に聞いた。海で魚見るかい?…彼はうん。と小さく頷いた。前後の説明なんかいい。しかも泳げるようになるのが目的じゃない。魚が泳いでいるのを見るのが今回の旅の目的だ。

さあ道具だ

海は初めてじゃないけど、魚を見るならそれなりの道具が要る。小学校の最後の夏休みだし佐渡島に連泊して海が目の前の宿だ。思いっきり楽しむための道具選び。本格的なものを選んだ。シュノーケル専門店があるのを知った。視界の広いマスクと着脱しやすいベルトに付け替え、逆流しないマウスピースにした。道具に手を抜かなかったことが後々効いてくる。体験談としてシュノーケルを始めるならもう一つ揃えていた方がいいものがある。マリンシューズ。魚を見る目的なら必須と思う。この三つがあればバッチリだ。

いよいよ海へ

佐渡島へ。初日。足で波と追いかけっこで満足していたこれまでの息子。目の前の海はかなりの遠浅。座っても肩が出る。道具を付けて海中を覗くところから。慣れてきたらマウスピースを咥える。これが第一関門。案の定。すぐに海水を飲み込んでむせていた。海底が見えた楽しさもあり、あきらめずにコツを掴むまで続けた。立ったままマウスピースで息をしながら、ずっと海面に顔をつけたまま歩けるようになった。

浮くこと

2日目。天気良し。朝から海へ。息子もワクワクだ。今日は自力で浮かぶことを練習する。もし浮かべたら彼の人生初となる。プールと違った浮遊感を感じていた様子。まずは手を引いて足を海底から離す練習。力が入り過ぎてすぐに沈没。座れる深さなので、手をついたままお風呂のように足を浮かせるか促した。海水だと力まなければ浮く。その感覚だけ掴めれば良い。簡単に浮いた。次は姿勢を変えて海中を見ながら、浮く練習。なんとか浮けるようになってきたが、3秒はもたない。怖いらしくすぐ足をついてしまう。それでも海中が見えるのが楽しいのか太陽が傾くまで海に浸かっていた。

泳ぐ

3日目。宿からは遠出して魚が沢山いる二ツ亀へ。駐車場から海岸まで結構歩く。急勾配の往復。それと魚が多いということは隠れる場所も豊富。海底は岩ばかり。ここでマリンシューズが活躍する。履いたまま泳げて海から上がる時に足を守ってくれる。さあ、いよいよ目的を果たす。魚が泳いでいるのを見るんだ。そこで気づく。魚を真近に見るならば浅いところにずっと浮かんでいる必要がある。それを息子に諭し僕が先導した。振り返りながらゆっくり進んだ。いや、泳いだ。息子もついてくる。海底も平らではなく、大人でも足のつかないところが何箇所かある。犬かきとゲンゴロウを合わせたような泳ぎ方で必死についてくる息子。足がつく深さではない。魚の群れや海藻や岩など水族館のような景色に見とれて夢中になっている様子。僕は先に海から上がった。息子は海中を見るのが楽し過ぎるようで一向に上がってくる気配はなく海に浮かび続けていた。

小学校で最後に出来たこと

泳げたことではない。僕が彼とともにずっと続けてきたこと。それは





























中学二年生になった息子。コロナで延期になっていた水泳の授業が再開。僕らの心配なんかよそに。プールどうなん?と聞けば。楽しいで。と、一言。15メートルはプールで泳げたそうな。そうか、ならばよし!






ここまでお読みくださって
ありがとうございます

トチロー

この記事が参加している募集

子どもの成長記録

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?