コーポレート・ガバナンス関連ニュース(2019/11/15)
フォートレス、ユニゾHDへのTOB価格を4100円へ 期限は29日に延長
【注目ポイント】米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループがユニゾホールディングスに対するTOBの買い付け価格を1株4100円に引き上げ、TOB期間も11日月29日まで延長する。従来の買い付け価格は4000円。
【コメント】ユニゾHDに対しては、友好的買収の体を取っていたブラックストーンも敵対的TOBを示唆している。フォートレスのTOB価格引き上げと期間の延長は、ブラックストーンへの対抗という意味合いもあるだろうが、依然どのように決着するかは不透明であり、予断を許さない状況にある。
ESG投資が磨くアジア企業 環境懸念の事業は撤退も
【注目ポイント】企業の環境対策や社会問題への取り組みなどを評価に加える「ESG投資」が東南アジアに広がり始めている。アジア企業にとってESGは、単に欧米の投資家が要求してくる外圧ではなく、アジア市場の中からも、企業に環境や社会問題への配慮を求める声が高まっているとされる。シンガポールの政府系ファンド、テマセク・ホールディングスは、ESG投資の旗振り役としての姿勢を鮮明にしており、ESGの専門組織を立ち上げ、企業分析や投資方法への活用に本格的に乗り出している。また、アジア各国の証券取引所もESG投資の取り込みに力を注いでおり、シンガポールやタイ、マレーシア、ベトナムといったアジア主要国の10の証券取引所では、上場企業にESG報告書の開示を義務づけている。
【コメント】温室効果ガスを大量に排出する石油等のエネルギー企業に対しては、ダイベストメント(投資の引き揚げ)を行う例も増えており、確実にESGに配慮しない企業への機関投資家の目線は厳しさを増している。なんでもそうだが、こうしたことを「コンプライアンス」や「CSR」の意識で受動的に取り組むのであれば企業の成長にはほとんど寄与しない。一方、ESGをどのように自社の競争力に結びつけるかという観点での議論は全体的にほとんど進んでおらず、またそうしたことを提言できる専門家も少ない。ガバナンスもそうだが、ベストプラクティスと呼ばれるような取り組みはまだまだ少ないのが現状だ。
アラムコ上場、ESG投資家の懸念は石油以外にも
【注目ポイント】石油・ガス企業は、サステナブル(持続可能)あるいはエシカル(倫理的)な投資対象といえるだろうか。新規株式公開(IPO)を計画するサウジアラビア国営石油会社サウジアラムコは、ESG重視の投資家にとって、事業そのもののもつ環境への悪影響の要素だけでなく、同社の取締役11名のうち5名がサウジアラビア政府閣僚で占められているなど、ガバナンス上の懸念も気がかりだ。
【コメント】上場すれば時価総額が1兆ドルを超え世界一となる可能性もあるとされるサウジアラムコ。確かに、同社のキャッシュフローは、ロイヤル・ダッチ・シェルやエクソンモービルといった他の石油メジャーの2〜3倍とされており、企業価値という意味では時価総額1兆ドルは決して大げさではないだろう。一方、純粋にESG投資の対象として同社がどの程度魅力的かと考えてみると、非常に魅力的と答える人はまれである。特にガバナンス上の懸念は、サウジアラビア政府と実質的に一体である点である。記事の中でも触れられているが、昨年、サウジアラビア人のジャーナリスト(ジャマル・カショギ氏)が殺害された事件でも同国政府関係者が関与していた疑惑が取り沙汰されるなど、同国政府の非自由主義・非民主主義的な傾向はESG投資家には看過できないだろう。
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