投資7

コーポレート・ガバナンス関連ニュース(2019/12/4)

グーグル、「大人の会社」へ世代交代 創業者ら退任

【注目ポイント】米グーグルの共同創業者であるラリー・ペイジ氏とセルゲイ・ブリン氏が3日付けで、持ち株会社のアルファベットの役職を返上し、今後は取締役としての関与にとどめることを発表した。グーグルは2015年に持ち株会社のアルファベットを設立し、ペイジ氏は同社の最高経営責任者(CEO)、ブリン氏は社長を務め、事業会社のグーグルのCEOはスンダ―・ピチャイCEOが担う体制となっていた。今後は、アルファベットのCEOもピチャイ氏が兼務する。

【コメント】グーグルも創業から21年、今や世界を代表する大企業だが、その強さの根源には2人の創業者が創り出した「グーグルらしさ」を表すカルチャーがあったことは間違いない。記事にもある通り、今後普通の大企業となってしまうか、それとも創業者2人が体現してきたグーグルらしさを今以上に発揮し、イノベーティブな会社であり続けられるかどうかに注目が集まる。コーポレートガバナンス上、最重要課題の一つがCEOサクセッションであることは間違いないが、創業者からのサクセッションは、極めて難易度の高いプロジェクトだろう。専門家としてはお金を払ってでも、こうした世紀の大プロジェクトには是非とも関与したいところだ。


野村HD、「奥田新社長」が背負う期待と難題

【注目ポイント】野村ホールディングス(HD)のトップが8年ぶりに交代する。2012年8月から社長兼グループCEOを務める永井浩二氏が2020年3月末に退任し、後任として現在、副社長兼グループCo-COOを務める奥田健太郎氏が就く。永井氏の後継者選びは、1年以上前から社外取締役が中心になって指名委員会で議論をしてきたという。「野村のCEOに求められる資質をすべて備えたスーパーマンはいないが、IB(投資銀行)の経験が長く、社内外の方とのコミュニケーション力も高い奥田君なら良いだろうということになった」(永井氏)とのこと。

【コメント】永井氏の後任選びに際して、社外取締役が中心の指名委員会で議論をしてきたとのこと。野村HDは指名委員会等設置会社の形態を取っているので、後任CEOを指名委員会で議論するのは当然である。ただ、その結果を発表するのが、現CEOの永井氏というのはどういうことなのだろうか?本来であれば、選んだのは取締役会であり、指名委員会であるのだから、発表するのは取締役会議長または指名委員長が筋だろう。ここでCEOが後任に向けての選考過程を説明することに違和感を感じないとしたら、野村は、本当にガバナンスを理解しているかどうかすら、疑問が生じる。


物言う株主対策「指摘前に備えを」 米ゴールドマン責任者

【注目ポイント】ゴールドマン・サックスで企業向けのアクティビスト(物言う株主)対策助言部門の責任者であるアヴィナッシュ・メロートラ氏が日本経済新聞の取材に応じたとのこと。「米国の大手ファンドは競争の激しい米市場から投資対象を分散させつつある。その中で日本市場は魅力的に映っている」と指摘。日本企業には投資家との細やかな対話や事前に批判されそうな点に備えておくべきだと助言しているとのこと。

【コメント】GSの中に、アクティビスト対策助言部門というものがあるとは知らなかった。基本的に、インタビューで語られている通り、今後益々日本企業へのアクティビストの投資は増え、当然様々な要求をされるだろう。私自身もクライアントの1社に著名なアクティビストが大株主として存在する関係で、対応を相談されたことがある。基本的に、彼らの理解は日本企業としてのガバナンスではなく、グローバルスタンダードなガバナンスを基準に話が展開されることが多いので、日本の事情は日本の事業として理解してもらう必要がある。例えば、そのアクティビストは私のクライアントに「もっと経営者報酬を上げるべき、そのとき比率は固定報酬:株式報酬で1:10を目指すべき」という要求を出したのだが、日本企業の役員報酬の実情を知っていれば、そのような報酬が許容され、うまく機能するかどうか当然疑問がつくはずだ。意外に、この辺りのコミュニケーション上の前提が互いに揃っていないので、同じものを見ていても話が平行線というケースは往々にして起こりえる。


会社法改正案が成立 社外取締役設置を義務化

【注目ポイント】政府が今国会の重要法案とした改正会社法は4日午前の参院本会議で可決、成立した。改正会社法では、上場企業の社外取締役の設置義務化や、株主総会資料のオンライン提供の導入、役員報酬の透明化を図る方策などコーポレート・ガバナンス強化の内容が盛り込まれており、海外から投資を呼び込む狙いがある。

【コメント】「桜を見る会」問題で成立が危ぶまれていたが、ようやく成立した。これから今回の改正を受けて、社外取締役を選任していない上場企業(今後の上場予定企業も含む)の対応が急務になり、候補者選定のニーズは高まってくるだろう。また、役員報酬の情報開示が強化されたことで、益々報酬系の案件ニーズは高まると思われる。

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