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VCとしてイノベーションの価値を証明する 弊社代表取締役社長 関兵馬氏インタビュー<後編>

「公正」を理念に掲げ、2017年に京都を拠点として創業した独立系VC・栖峰(せいほう)投資ワークス株式会社。今回はそんな弊社の代表取締役社長・関兵馬氏に取材をしました。
後編では、関さんの投資検討のスタイルやVCに関する理念について伺いました。VCやスタートアップに興味がある方、必見です!

<<<前編はこちら>>>

冷静に、事実を積み上げて投資をする

――投資検討では、どのようなポイントをどんな順序で検討していますか?

一つは、課題と解決が適切であるか、要するによいプロジェクトかどうかっていうことを考えます。もう一つがスケーラビリティかな。これは他のVCも同じだと思うのですが、パターン分析なので、順番はないと思います。パッと見ていいかどうかっていうのを最初になんとなく思うんですよ。その後、自分が何でいいと思っているのかをもう1回冷静に分析します。
あと、「人を見て投資している」とは言いたくないですね、悪い意味でキラキラした言葉だと思っているので。

――どうして言いたくないのですか?

良い経営者かどうかっていうのは、その人の行動から組み立てて理解すべきだと僕は思っています。だから「なんでこのプロダクトを作りましたか?」とか、「なんでこの事業計画はこうなっているんですか?」みたいな話を聞いて、その回答を色々組み立ててみる、いわばリバースエンジニアリングしてみることで、ようやく経営者の姿勢や考え方が分かるし、だからこそ良い事業、良い経営者だと説明できるんです。そうやって経営者を理解して投資判断をしたとき、「人を見て投資した」とは言わないですよね。
逆にそういう努力をなくして「人を見る」っていうのはほぼ不可能に近いと思っているので、できもしないことを僕は言いたくないですね。

時々、「この起業家すごいんだよ!」って言っている人に、その理由を聞くんですが、「めっちゃ頭が良くて」とか「巻き込み力があって」とかって話で、じゃあ、なんでそんな印象を持ったのかと聞くと、「うーん」っていう、ぼやっとした答えが結構返ってきます。人に対する理解を言語化するっていうのは、難しいのは分かるのですが、そういうぼやっとした話ってことは、人をちゃんと見ていない、少なくとも人に対する理解を言語化できていない、ということなのではないかと思っています。

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――投資検討の様子を見ていると、事業計画の細かい数字などを見て、慎重に投資検討しているように感じます。必ずしもすべての投資家がこのスタイルではないと思いますが、そうやって投資検討をするのはなぜですか?

他人のせいにしたくないんですよ。だから色々検討したいと思っています。ベンチャーキャピタルは、どうしても数少ない大成功の裏に、多くの失敗を許容しなくてはいけない仕事です。ところが失敗すると起業家のせいにする人って一定数いるんですよ。確かに事業の失敗要因の多くは経営者に起因するし、投資担当者として冷静に失敗理由を分析することも重要です。それでも投資の失敗はあくまで投資家の失敗なので、他人のせいにしたくないですね。

もう一つは、「神は細部に宿る」という言葉がありますが、会社や起業家のことを推し量る上で、ちょっとしたことがヒントになったりするんですね。だから、細かな事実を積み上げて色々なヒントを得たいと思っています。
あと、僕の中では細かく分析するっていうよりは、いろんな方面から分析するのが良い分析だと思います。ひとつの物を見るときも、見る方向を変えるだけで違う色に見えたりしますよね。それがいろんな角度から分析するということ。そして、その分析のヒントを得るためにはある程度細かく見ることが必要になってくると思いますね。

――投資を始めたときからそのスタンスは変わらないのですか?

変わっていないかな。少なくとも今の会社になってからではないですね。
例えば前職で、儲かっている町工場のビジネスモデルを分析するときに、いろんな角度から分析する必要があったんです。なぜかというと中小企業のビジネスモデルって割とハイコンテクストで、社長もなんで儲かっているのかをちゃんと言語化できないことが多いんですよ。逆に、ようやく探し当てたビジネスモデルを説明したら、「へえ、よくわかったね」って、褒められて。秘伝のスープの素なので、分かった人にだけ答え合わせしてくれることもあったりします。

スタートアップの場合、基本的にシンプルなビジネスモデルで、収益の源は「何をやっているのか?」、つまりポジショニングであることが多いです。この勝ちパターンの場合、勝つのはナンバーワン企業なので、資金調達コストが高くても自己資本で調達して、とにかく成長をがむしゃらに目指すのが理に適っています。でも中小企業では違う。「どうやっているか?」、つまりケイパビリティが重要であることが多い。この場合、勝つのはオンリーワン企業です。オンリーワンを続けていった先にナンバーワンがある。そうやってビジネスモデルを明らかにする中で、いろんな観点から見ることが習慣になったと思います。そういう意味では、僕は特殊なパターンかもしれません。
そして、稀に、この二つを併せ持っているスタートアップがあります。うちが投資しているのは、このタイプの企業です。

――その投資検討のスタイルは、前職だとみんなが当たり前にしていたことなのですか?

前職では、みんなそうしているはずです。

――その人たちがその知識をスタートアップ投資に生かせたらいい会社ができそうですよね?

そうです(笑)。それがつまり、僕が栖峰投資ワークスを設立した理由です。ただ注意しなくてはいけないこともあって。
事実認識よりもコンテクストに引っ張られてしまうリスクがあります。事実認識とコンテストがずれることって結構多いんです。だから、本来はちゃんと事実認識をした上でコンテクストに発展させないといけない。
でもコンテクストに流されるってとても気持ちいいんですよね。キラキラするしね。そこで流されずに本当はどうなのかな?って見続けなければいけないし、そのためには根気が必要だと思います。

――関さんは投資実行後も投資先の経営に寄り添っているように感じます。投資先との関わりにおいて投資家はどうあるべきか、関さんの考えを教えてください。

僕らVCは起業家個人の味方ではなくて、投資先企業の味方です。もうちょっと言うと僕らのお客さんはファンドの出資者で、ファンドのリターンを最大化することが第一の目標なんですよ。そしてファンドのリターンを最大化するために投資先企業の価値を上げる、投資先企業を良くしたいので、投資先の会社を支援します。そこで、投資先の経営において最も重要な創業者・起業家・社長を支援する、という図式です。この図式を起業家の皆さんは是非理解して、VCとの関係を築いていって欲しいですし、僕も変に誤解を招かないように、この点は最初に説明するようにしています。

んで、だから支援は目的ではなくて手段だと思っています。
経営支援に関しては、VCの助言が有効な場合もあるだろうし、そもそも経営支援が必要かどうかを分からないといけないので、事業の状態をモニタリングします。そこで必要な支援や助言があれば、実施します。
これだけ聞けば、簡単な話だと思われるかもしれませんが、実際には「本当に必要な助言や支援を提供して、その効果を出す」ことは難易度高です。VCが投資先のことを完全に理解している訳ではありませんし、問題意識がVCとスタートアップ側でズレることもあります。だから投資先とのコミュニケーションが大前提であり、最重要です。

あと、確かにVCは株主としてコミットしていますが、経営の主体はあくまで経営者です。惚れ込んで投資しているため、出来るだけ近くに居るべきと考える人も居ますが、僕自身は、投資家としての位置づけや距離感はわきまえるようにしています。出資してもらっているからといって、投資先がVCの発言を必要以上に重視したり、場合によっては同意しているフリを余儀なくされたりするようになると、それは誰の得にもなりませんから。

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プライベートエクイティの意義


――VCがなくても大きく成長し、上場している会社もありますが、そんな中でVCの役割は何だと思いますか?

二つあって、一つは不確実性の引き受けです。
不確実というのは、リスクリターンの定量的な分析の基礎の怪しさっていうことです。
例えば、ある会社の成功確率が確実に10分の1だとすると、期待リターンを11倍にすればいいんですよ。それを100万個集めてきたら必ず儲かります。でも現実では、そもそも成功確率が10分の1かどうかなんて分からない。だから、ある投資案件について割高だと思う人と割安だと思う人が出てきて、その判断はかなり属人的です。そういう不確実性の引き受けっていうのが一つの仕事なのかなと思います。もしスタートアップの成功確率から不確実性がなくなってしまう、つまり確実になるのであれば、金融商品としては標準化をされてしまうので、投資判断の属人性は無くなり、そもそもプライベートエクイティである必要がなくなります。

二つ目は時間をどうやって買うかという話です。
スタートアップは小さな成功を掘り当てた途端、後発企業がドンドン出てくるため、ハイペースで成長しなくてはいけなくなります。そこで10年かかるところを5年で成長するために自己資本で資金調達する、逆に言えば投資家が必要とされることになります。ただ、この役割は必ずしもベンチャーキャピタルである必要は無くて、証券市場や機関投資家もその役割を果たせます。つまりベンチャーキャピタルの本質的な役割は、あくまで不確実性の引受、っていうことになるんでしょうかね。

――今後を期待する産業領域は?

僕のバックグラウンドがレガシーな領域でもあるので、そういうレガシーな領域と新しいスタートアップが融合するようなところが面白いなと思いますね。レガシーな業界をある程度分かっているので安心感があるし、場合によってはそことのネットワークもあるので。それと、それぞれの業界において、なぜその業界の構造がそうなっているかっていうだいたいの仮説もあるんですよ。だから課題がいいか悪いかっていうのを見分けやすいので、ぜひ、そういうところでいい課題を設定している起業家に会いたいなと思っています。

イノベーションによってやり直しができる社会を作り出す


――VCや弊社の事業を通して達成したいことや社会に与えたい影響は何ですか?

一つは、個性のある人に活躍の場を提供することですね。伝統的な会社だと欠点のない人が好まれるので、そうじゃない人に活躍してもらって、社会全体の活躍量を増やしたいと思っています。
あとは、人のライフステージや肩書による上下関係を解消したいですね。どこかの大企業にいるから偉いっていう話ではなく、みんなで協力して成長できるような資本主義のあり方があるだろうと思っています。つまり分権的な意思決定とプラスサムによる社会。
おそらくそれはやり直しのきく社会とか、柔軟で複線的なキャリアが利くような社会だと思っていて、そういう社会を作り上げるためには、多くのスタートアップが常に存在していることが重要だと思うんですよね。


――普段の業務の中でその目標に近づけているという実感はありますか?

僕らはファーストラウンドに投資することが多いのですが、その投資先が次のラウンドに進むことができています。それって不確実性を引き受けた後で、その不確実性の一部が解消された訳です。例えば売れないと思われていたプロダクトが、売れるとかね。それって分権的な意思決定の賜物ですよね。
あと、共同投資しているVCで、支援を役割分担することもあります。得意分野が違ったり、スタートアップとの関係性が違ったりしますから。これはプラスサムの方ですね。

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インタビュー:栖峰投資ワークスアシスタント 山田

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