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VCとしてイノベーションの価値を証明する 弊社代表取締役社長 関兵馬氏インタビュー<前編>

「公正」を理念に掲げ、2017年に京都を拠点として創業した独立系VC・栖峰(せいほう)投資ワークス株式会社。今回はそんな弊社の代表取締役社長・関兵馬氏に取材をしました。
前編では、関さんの過去の経歴やベンチャー投資の魅力、そして弊社の魅力について伺いました。VCやスタートアップに興味がある方、必見です!

投資への関心、投資育成への入社、そして独立へ


――関さんが投資に関心を持ったきっかけを教えてください。

父が株式投資をしていて、家庭の中でも「なぜ1ドルが100円から150円になるのに「円安」なのか?」とか「銀行は土地を担保に取るので潰れない」とか教えてくれて、お金に関しては身近な存在でした。ただ株についてはよく分からなかったんですよね。でも高校生のときに「極秘指令『X社を買収せよ』」というNHKスペシャルを見て、株式=会社持分ということが分かり、株っておもしろいなと思いました。

――なぜ前職(大阪中小企業投資育成株式会社:以下、投資育成)への入社を決めたのでしょうか。

 大学4年生になったとき、M&Aとか株式に携わる仕事が面白そうだと思っていました。そこで米国にしかないと思っていたベンチャーキャピタルという仕事が日本にもあると分かったので、VCをいくつか受けました。
その中で投資育成を選んだ理由は、正直であること、差別化志向であること、そして無借金経営であること、です。
まず投資育成の担当者が正直な人で、案件の発掘にとても苦労すると正直に教えてくれたんですよね。で、その打開策として安定株主対策などの資本政策を提示して他社と差別化していることを説明してもらって、それがすごくしっくりきたんです。
なぜしっくり来たかというと、その資本政策が『X社を買収せよ』で出てきた買収防衛策と似たスキームだったからです。僕の中でもすごく理解ができて面白そうな会社だし、現実では皆に「投資してください」って言って皆が投資してくれるわけないと思っていたので、すごく本当のことを言ってくれているんだなと思いました。それから、当時はバブルの後遺症で不良債権処理が大変だった時期なので、無借金経営であることも「この会社は大丈夫そうだな」と思える理由のひとつでした。そんな感じで投資育成への入社を決めました。

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▲関さんはオフィスにいるとき、いつも紅茶をたくさん飲んでいる。

――投資育成に入社後、独立までの経緯について教えてください。

投資育成は日本初のベンチャーキャピタルだったのですが、僕が入社したときの主業務は、ハンズオフで中堅中小企業に安定株主として投資をすることだったんですね。なぜかと言うと、当時は上場のハードルが高くて、シード・アーリーステージへの投資が事業領域として成立していなかった。だから投資育成はミドルステージの企業に投資していました(※1)。
しかし同時期に、ちょうどマザーズやナスダック・ジャパンが設立されたことで、いきなりシード・アーリーステージ投資の事業領域が成立して、投資育成にもVC投資部門が設立されました。僕は入社から5年くらい中堅中小企業への投資をして、その後VC投資部門に配属されました。
VC投資部門はとても楽しかったんですけど、リーマンショックの後くらいに、会社はVC部門の縮小を決めました。僕は会社の経営計画を考える場で、VC投資部門は残すべきだという説明をしました。
ただ結論としては、ベンチャー投資はやめることになったんです。
やめることになった理由は二つあって、一つは、VC投資があまり儲かっていなかったこと。リーマンショックを機に新規上場数もかなり少なく、株価も冴えませんでした。
もう一つは、その中で投資の成功が特定個人に偏っていたこと、つまり属人的だったことです。もちろん、投資って属人的な仕事ですし、それは投資の仕事をしてきた人が集まっている投資育成では、かなり許容されていたんです。ただベンチャー投資では、それが大き過ぎた。
VC部門閉鎖のとき、上司に「結局、関はセンスか運か、その両方かが良かったんだよ」、すなわち「関のような真似は他の人にはできないよ」と言われたんですね。
でも僕はそう思わなかったんです。「基本を間違えなければ、VC投資をもう一度やっても成功できる」と思いました。加えて、「リスクやスタートアップに対して適切に向き合えば、おのずとリターンは出る、ということを社会に示したい」と考え、起業しました。

――「関は運かセンスが良かった」というのは、今振り返ってみるとどう感じますか?

運が良かったことは間違いないと思うんですよね。でも単純な運というわけでもない。その“センスか運か”っていう話自体がものすごく荒っぽい話かなと今は思っています。センスと運以外に“ロジカルに物を見る”という要素もあると思うので。

協働して価値を生み出すプラスサムな文化


――関さんにとって、ベンチャー投資の魅力は何ですか?

スタートアップ界隈のプラスサムな文化が一番ですかね。普通のトレーディングだとゼロサムゲームだから、僕が得をするってことは誰かが損をしているわけですね。でもそうじゃないっていう。投資して、みんなで協働して高い企業価値のある、新しい会社を作るっていう話なので、そこが僕としてはすごく面白いなと思っています。
あと投資という観点でいくと、投資仮説とその正誤が分かるということもありますね。リスクとリターンとか、プロダクトと市場と経営者のどれが成功要因か?とか。投資で結果が出ると、今度は投資仮説があっていたのかどうかを考えなくてはいけない。それがすごく面白いなと思います。


――失敗するリスクも投資家としてあると思うのですが、それでもパッと分かることよりも、色々考えないと分からない、複雑なことの方が面白いですか?

パッと考えて分かることは、僕は面白くないと思っています。もし、すごく頭のいい人が分析したら必ず正しい投資判断が出来るっていうゲームだったとしたら、その人たちが勝っているはずなんです。僕よりもっと頭のいい人たちがこの世の中には存在しているので。でも、そうじゃないんですよね。一定の分析力やロジック、知識は必要ですが、それだけじゃないかなっていう気がしているんです。正解が存在していないですし、知識の半減期も短い。そこも面白いところだなと思いますね。

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京都に所在するからこその魅力

――弊社の魅力について教えてください。

ファンドサイズが20億円で、3名の投資プロフェッショナルがいて、1社につき2名体制っていうのは、割と手厚いと思っています。あとは、うちが京都に所在しているので、スタートアップの方法論をメタ認知することが多いんですよね。メタ認知しているというのは、スタートアップ界隈の慣行や考え方を、理論的に把握しようという意識が比較的強いんです。だから単に「〇〇した方が良いよ」と情報提供するんじゃなくて、「なぜ〇〇が合理的なのか?」ということを、歯車をかみ合わせて説明する技術を持っていると思います。

――京都に所在しているとメタ認知することが多いのはなぜですか?

東京のスタートアップをずっと見ていると、スタートアップという形態が当たり前になるんですね。でも、スタートアップはある特殊な形態で、当たり前じゃないんですよ。だから京都に所在する我々は、何が特殊なのかっていうのを言語化する必要に迫られます。
特に東京以外の会社はエンゼルからの出資でスタートするのではなく、受託開発やコンサルティング売上、補助金、融資で回している会社が結構多いです。そういう会社はエクイティ調達による、所謂スタートアップ型の経営スタイルではないです。会社って経路依存性があるので、そういう会社の合理性を踏まえた上で「スタートアップの経営スタイル、スタートアップの経営者の本質って何なんだろう?」ということを捉えて議論をしなければいけません。

――スタートアップを自分で起業しようと思ったことはありますか?

実際、この会社を起業しました。
経営に関しては投資先の社長の姿をよく参考にしています。事業会社を起業しようと思ったことはないですね。そもそも起業したいと思って起業したのではなくて、VC投資っていうやりたいことがあって、その手段として起業したので。

――社長のどんな姿を参考にしているのですか?

前職の投資先だった中堅中小企業の社長の姿勢を参考にしていますね。儲かっている中小企業の社長を何百人と見ていると、なんとなく共通項があるんです。それをお手本にしています。
中小企業ってすごく保守的な会社のイメージが強いと思うんですけど、社長個人としては新しい物好きで勉強家の人が多いです。良いものを、積極的に会社に導入されているんです。一方で、先ほどお話しした経路依存性の問題があるから、全部をガラガラポンできる訳ではない。だから外から見ると、あんまり変わっていないような会社が、中身は年々進化したり試行錯誤したりしている。
うち自身はスタートアップっぽい経営スタイルではないと思います。うちがスタートアップとしてハイリスクハイリターンになると、リスク×リスクだからろくなことにならない。安定性という意味で、投資先のスタートアップに迷惑をかけないとか、LPが安心して出資をしてくれるっていうのは条件だと思うので、そういうところはすごく重要かなと思いますね。


後編では、関さんの投資検討のスタイルやVCに関する理念について伺います。次回もお楽しみに!

※1 ちなみに、いまも投資育成は健在で、投資先が1,000社ほどあって、年に1社くらいのペースで投資先が上場しています。

インタビュー:栖峰投資ワークスアシスタント 山田

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