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子供の相対的貧困問題とこども食堂について

子供の相対的貧困が7人に1人という事実は、近年で広く認知されるようになったのではないだろうか。日本では相対的貧困率が高く、子供への食事支援などの活動が普及している。現在、全国の子ども食堂は016年319個所から2023年12月時点約9000個所に増加している。このような普及活動により子供の貧困問題への支援や、認知が広がったように見える。しかし、この子ども食堂の存在意義はどこにあるのだろうか?私はしばし疑問に感じる。

子ども食堂の普及

-お昼休みにご飯がないから外をプラついている子がいる-
-お腹を空かせて給食で1日の食事を補おうとしている子がいる-

相対的貧困により家庭内で食事を満足に取れず、学校で補おうとする子や、給食が至急されない学校では、お腹を空かせながら授業を受ける子などが存在する。子供の貧困問題により、学校で他の子と同じ行動ができないことで仲間外れになってしまったり、いじめられる原因になったりするケースもある。また、十分な食事を取れないことで健康問題や、学習障害にも繋がる非常に重大な課題である。これらは家庭内での経済的な格差により起きている2次的な問題である。

子ども食堂とは食の相対的貧困を解決することを目的に、地域の大人や非営利の団体が運営している。

(引用:「こども食堂が貧困の子どもを救う!始まったきっかけや現状とは」より)

開催している場所は、自営業で店舗を持つ飲食店や、NPO法人などが発足し場所を借りたり、近年では大手企業ファミリーマートがむすびえと共同し、子ども食堂を開催するなど、多種多様な形で開催されている。日時は、月に1回、週に1回、不定期など、ほとんどの場合がSNSなどの情報発信により集客をしている。提供方法もその場で食べたり、お弁当で持ち帰るなど、その場所や開催形態によって異なっている。貧困問題を抱える子供やその家庭に直接、食事を届ける支援である。

相対的貧困とは?

相対的貧困とは、国民全体の中央値所得の50%未満の所得で生活している状態を指す。日本では、相対的貧困率が約15%であり、低賃金労働や非正規雇用の増加が主な原因と考えられる。
このような家庭では、生活費を捻出するのが困難であり、経済的な貧困は、子育てへの影響を受けやすく、今日では、物価や光熱費が高騰するのに対し、賃金に変化はない。これは、低所得者にとっての生活をより圧迫しているだろう。これにより、相対的貧困家庭は、①住宅費等の出費により食費が後回しにされるケース、②親や子供の健康面での医療費や、親の依存症などにより、食費を補いきれない場合が考えられる。

子ども食堂拡大により子供の相対的貧困問題を是正できているのか?

2023年度の子ども食堂数は9,132箇所に達し、全国の公立中学校とほぼ同じ数になっている。このような支援の場が地域間で増加することで、相対的貧困で述べた①の人たちにとっては、子ども食堂という支援が直接的な解決に繋がると考えられるが、これだけの数があっても家庭全てに十分な支援がいきたわっていると言い切れないと考える。
子ども食堂は、月に1度の開催頻度が一番多く、ほぼ毎日子ども食堂を開催している箇所は全体の約1割にも満たない。これは日常的な食事支援としては不十分である。また、経済的に困窮する時期(給料日前など)にこそ食の支援が必要になってくるが不定期の開催により、困窮している時に支援が受けられない状態が発生しているだろう。

さらに注目したいのは、②のような状況は、本来なら食事を取れる金銭的な余裕はあるが、医療費や、親の依存目的に金銭が使用され、子供が貧困に落ちているケースである。こういったケースには食事の支援だけでなく、子供の食の環境、生活の環境、親の精神状況を整える必要があると考えられる。私はこの層に分類される子供が深刻な問題を抱えていると考えている。親が危機感を持っていないと子ども食堂のような支援の輪に入れないケースや、依存症など精神病を患っている場合は、十二分な支援があるのにもかかわらず、支援に貪欲になり必要以上の支援をしてしまう可能性も考えらえられる。ここで大切にしていきたい視点は、子供の食事の困窮を改善することでどのようなメリットが得られるか?である。

感じる矛盾

子供の貧困問題に対して、現在の子ども食堂を通しての食事の支援というのは2次的支援である。本当に困っている層に届かない可能性があり、支援の対象は多くの世帯、子供に当てはまる可能性が高い。実際に現場で活動される方からの声も「来て欲しい家庭の子供や親に来てもらうことが難しい」という声が一定数上がっている。よって子ども食堂の拡大を行うだけでは子供の貧困問題を是正できず、ただ一方的な支援に止まってしまっていると考えられる。もう一度疑問を定義しておこう。

「子ども食堂はなんのためにあるのか?」

目的がここまで明確であるにもかかわらず、なぜこのような現状が広がっているのだろうか。たとえば、市が介入し、子供食堂の開催頻度の見直しをおこない、月末などの3日間は3食提供するなどが考えられる。このような対策を行うことで支援が必要な時期に食事の支援を行うことができる。不定期で開催される子ども食堂では、食事を一緒にとることに重点をおき、食事を通してのコミュニケーションは孤食問題に対応することができると考えられる。これらを行うことで相対的貧困世帯にとっては安心感につながり貧困問題に直接アプローチできるのではないだろうか。

子ども食堂を訪れると

食事の支援を行うことは、2つの意味で限界があることを痛感した。私が参加させていただいた子ども食堂は、夜に飲食店を経営しているお店だった。市役所からの声かけにより、子ども食堂開催に踏み切られたようだ。月に1度、予約制でお弁当の支給を行い、子供は無償で大人は300円の料金を取る。自営業で飲食店を切り盛りしているため食事を提供することに隔たりはないが、大多数に対して一度に大量に作り、提供する作業は一人では補いきれない。開催に踏み切った主催者が自ら声かけ、発信をして、活動を切り盛りしていた。実際に私も10:00〜18:00過ぎまで活動をさせていただいたが、お弁当作りで1日が終わってしまうほど食事の準備、提供には想像以上に肉体的な労働であった。これに加え、主催者は子供や、家庭に食事を提供する責任が伴う。安易に外部からのボランティアの人を受け入れることに対して警戒をされていたり、本当に困っている人たちに届けられているのか?という不安を抱えていた。また、必要な分を必要な数を提供するためにSNSのDMを通して丁寧なやりとりをした上でお弁当の支給の有無を判断していた。主催者の精神的な労働も含めこれらの開催、運営は全て無償のボランティアで行われている。これに対して市役所のサポートは食費の補助金や安全性のチェックの点検などである。食事を提供するというのは、想像以上に大変なことが多く、簡単には継続できないことがわかった。

この子ども食堂では、Instagramを通して情報を発信しているため、その活動を見た人がぬいぐるみや消毒液などを送っていただいたようでお弁当と支給と一緒に配布をしていた。また、近隣に通う小学生がお店の前に立ち止まり、「ご飯が無料で食べれるって聞いて来ました。」と言う。残念ながら予約をしていなかったため断り、予約をしてから来るようにと伝え、この時は残念ながら食事を支給することはできなかった。

子ども食堂の可能性

このように子ども食堂の存在は関心がある人を繋ぐだけでなく、近隣に住む子供達の関心があることがわかった。もし、子ども食堂がその場で食事ができる環境ならば、その場に集まる人達と一緒に食事をとるという行動が生まれる。これは貧困問題を是正するだけではなく新しいコミュニティー形成の鍵を握っているのではないかと思う。民間でこういった場や活動が活発的に開かれていることを考えると、子ども食堂の意義は、お互いに助け合える環境、状況を地域間で作り上げると言うところにあるのではないだろうか。

これらのことから、現状では子ども食堂の開催が拡大しても相対的貧困率が低くなる可能性は極めて少ないと感じる。必要な人に必要な形で支援を届けるには、現地、現場で活動する人々の声を聴き、原因追求をした上でのアプローチや支援が必要だと感じます。
食事の困窮というのは、子供の貧困問題による2次的な影響であり、これらの問題は多くの子育て世代の支援の対象である。そのため、支援の対象から少し上の中流層への支援にもなっており、貧困層が参加しにくい状態にもつながっていると考えられる。しかし、これらは前述でも述べたように否定的に捉える必要はないと思います。では、相対的貧困の根本的な問題とは何なのだろうか。

まとめ

私は、この原因の一つに親が子供の食事を優先させることができない心の問題が発生しているのではないかと思う。たとえば、相対的貧困の②で取り上げたケースに関して、親が何らかの障害を抱えている中で生活している子供の心理状態も非常に危険である。食事を我慢することが当たり前という認識になってしまったり、親子間でコミュニケーションが全く取れていない場合も予測できる。食の支援と言うのは、ほんのわずかで一時的なサポートに過ぎない。拡大した子ども食堂という場所を通して、一人でも多くの子供たちがより良い環境、状態になるように、制度を整えていくべきである。

参照
1.むすびえ.【確定値】2023年度のこども食堂数は「9,132箇所」。公立中学校数とほぼ並ぶ ~2023年度こども食堂全国箇所数発表~(2024年2月更新: 確定値)(参照2024-07-23)
2.阿部彩.子どもの貧困─すべての子どもの幸せのために─.日本大学経済学部経済科学研究所研究会.2010.177.p.65-77
3.厚生労働省.令和元年就業形態の多様化に関する総合実態調査の概況(参照2024-07-23)
4.厚生労働省.相対的貧困率(参照2024-07-23)
5.むすびえ.こども食堂の数、全国の公立中学校数とほぼ並ぶ「9,131箇所」に増加 ~2023年度こども食堂全国箇所数調査結果を発表~(2023年12月速報値)(参照2024-07-23)
6.農林水産省.子供食堂向けアンケート調査集計結果 一覧(参照2024-07-23)
7.農林水産省.子供食堂と地域が連携して進める 食育活動事例集~地域との連携で食育の環が広がっています〜(参照2024-07-23)

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