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【書籍紹介】マイケルポーターの競争戦略(エッセンシャル版) なぜ一番になることが優位ではないのか

著者 ジョアン・マグレッタ

 1982年、マイケル・ポーターが著した「競争の戦略」と1985年の「競争優位の戦略」は、これまでのマーケティングの新たな分野を切り開いた古典的名著なのですが、学者向けに書かれためちゃめちゃ緻密で膨大な書物です。読むに越したことはないのですが、読めるとは思えないということで、エッセンシャル版が出版されております。著者のジョアン・マグレッタさんは、ポーターの主催するハーバード・ビジネス・スクール競争戦略研究所でシニア・アソシエートを務められています。マイケル・ポーターの知り尽くしている方です。

 マーケティングの元祖はコトラー先生ということになっていると思いますが、私が社会人になってから、これまで(ほぼ30年)の社会人経験では、マイケル・ポーターの引用が一番多かったように思います。何故これほどまでに、広く汎用されるのでしょうか。それは、現実によく当てはまる理論だから、だそうです。

 本書では、現在の企業の事例も豊富に紹介されています。ZALA、イケアなどです。

 では、内容の一部をご紹介します

なぜ最高を目指すべきでないのか

 第1部では、競争とな何か、の理解を進めます。その第一歩として、競争とはライバル企業の中で「最高を目指す」という誤解を解くことから始めています。

これは直観的にわかりやすい考え方だが、実は自己破壊的で、底辺に向かうゼロサムゲームを煽りかねない

マイケル・ポーター競争戦略 早川書房

 ポーターのいう戦略的競争とは、他者と異なる道を選ぶことを言います。例えばBMW、アップル、フォーシーズンズホテルなどは、他社と異なる価値を提供することで、プレミアム価格を要求しています。バンガードやイケアは低価格をアピールした戦略をとっています。この競争は他社を犠牲にしないという特徴も持っています。今で言う「ブルーオーシャン戦略」と考えられます。

バリューチェーン

 第1部 第3章で説明されています。バリューチェーンは顧客に届ける商品・サービスに対して、企業がおこなう活動の上流から下流すべてのことです。業界ごとに異なりますが、例えば、研究開発→サプライチェーン管理→製造オペレーション→マーケティング・販売→アフターサービスのような流れすべてです。

 競争で優位に立つには、届けるサービス・商品に対して、それ自体が差別化されているだけでなく、バリューチェーン全体がそれに対して最適化されることによって、他社が簡単に真似できない優位性を得る事ができると言います。
 例えば、デルが通常のPCメーカーより価格優位性を保てたのは、この要因です。通常のPCメーカーは部品の設計、製造、PCの見込み生産を行い、販売代理店を通じて販売します。これに対してデルは外部調達した部品と厳しく管理したサプライチェーン用いてPCを受注生産し、直接販売しました。
 これはコストや投資の構造が全く違っていて、設計や製造を行わず、在庫をほとんど持たなかっただけでなく、デルの顧客はデルがサプライヤーに部品代を支払う前に出るにPC購入代金を支払っていたため、運転資金もマイナスになり、さらなるコスト優位性を確立していました。

トレードオフ

 第2章では戦略について説明されていますが、そのひとつがトレードオフです。ポーターは「戦略とはなにをやらないか選択することだ」とことあるごとにいうそうです。何をやらないか、がトレードオフです。

 イケアの事例が詳細に分析されています。

  • イケアの家具は組み立てられていない

  • イケアのデザイナーは低価格で北欧調の優れたデザインという明確な制約がある。最高級の皮革を使った椅子や、希少なメープルを使ったコーヒーテーブルは絶対作れない

  • 製品の多様性を求めない。通常の家具店はカントリー風、明王朝風、など多様なスタイルの家具を提供する。イケアは北欧調のみ。製品の煩雑さを抑えたことで、世界規模で大量の調達ができ、サプライヤーから有利な価格を引き出せる

  • 販売員を置かない

  • 配送は堂々と顧客に外注する

などなど、細かいところにもそこかしこに選択とトレードオフが見られるそうです。



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