見出し画像

薄っぺらい歌ってなんだろう

インディーズミュージシャンのファンの一人だったと思う。「〇〇の歌は愛だの恋だの言っている薄っぺらい歌と違うから聞く価値がある」みたいなことをずっと前にツイートしていた。

薄っぺらい歌ってなんだろう。


白状すると僕もそんなことを思っていた時期がある。自分の書いた「人生を変える一曲」よりも「君を愛してる〜」みたいな歌が売れていることにヤキモチを妬いていたのだ。しかもわざわざ喉に詰めこんで窒息死しそうになるほどに餅はこじれていた。

そいつはテーブルの隅に避けておくにしても、いわゆるラブソングとか一人じゃないよ系の歌が苦手で、友情ソングにもイライラ。くだらないと思っていた。


誰かに必要とされたくて生き急いだ。自己啓発本やビジネス書ばかり読んでいたし、書く曲もほとんどが「自分と向き合おう」「こう生きていくんだ」という内容だった。

個人的なイメージだし主語が大きいけど、シンガーソングライターやロックバンドの曲やライブはこういったニュアンスが含まれていることが多い気がする。めちゃめちゃ雑に言うと重い、暗い、熱苦しい。良くも悪くも。

うまくいかない活動。周りと馴染めない自分。続けていくほどにそのジレンマが濃くなっていく。「生きてると色々辛いこともあると思うんですけど」よくライブで聞くセリフだ。僕も言っていた。

冷静に考えると毎日そんな辛いことばかりじゃないし、なんでそこにばっかりフォーカス当てるの?って感じだけど、きっと本当に毎日が苦しかったりして一番たどり着きやすいゴールだったんだろう。


だけど最近は同じことで「わかる〜!」と笑ってられたらいいと思うようになってきた。役に立ちたいんじゃなくて、君がいると嬉しいよって言ってもらいたかったみたい。

今までどうでもよかったことが、あの時くだらないと思っていたものがキラキラと宝石のように輝いて見える。散歩中の犬がかわいいとか、ビッ◯カメラの店員まじ愛想悪かったとか、あの子が好きとか、友達でいたいねとか、そういうことが心を満たしていくのを感じる。


自己啓発本に書いてあることは役に立つ。仕事や考え方の糧になる。時間を節約できたり結果を出せるのは素敵だ。でもそれだけが価値のあるものだろうか。きっとそうじゃないだろう。

日々のくだらないことに感情を動かして暮らしていく。ただそれだけのことがとても素晴らしい。

愛だの恋だのが薄っぺらいと言うのは、小説やエッセイはクソだと言っているようなもの。薄っぺらいのはもしかしたらそこにしか価値を見出せない自分の心の方かもしれない。


価値観はそれぞれ違う。僕はもう高校生の時のように永遠なんて信じられない。でも一瞬のときめきを切り取れば永遠は存在できるかもしれない。

その人が確かに感じた「愛しいくだらない」が詰まっている。それを歌う人がいて、好きな人がいる。素敵じゃないか。

もし「薄っぺらい歌」があるとするならば、「嘘をついている歌」だと僕は思う。

「内容は共感できないけど、こういう歌が好きなあの人を本気で笑顔にしたいから本気で嘘をつく」も本当。ミッキーマウスの中には人が入っているけど、入っていないのが本当なんだ。


あの時あなたが大してちゃんと聴きもせずに薄っぺらいと吐き捨てた歌は、きっと全然薄っぺらくないんだよ。

そうあの日の言葉に心で空リプを送った。

よかったら投げ銭感覚でサポートお願いします:-)