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ドサクサ日記 9/26-10/2 2022

26日。
J-WAVEのピストン西沢さんの番組が終わると聞いた。ラジオで耳にするピストンさんは毒気を隠さない口調で、なかなかスリルのあるトークをする方だなと思っていた。しかし、いざ番組に出てみるとアジカンにはとても優しかった。人柄なんていうのは外から眺めたり、たまに接したくらいでは分からない。けれども、ピストンさんが僕らのどこかにシンパシーを感じてくれていることは会う度に感じた。

27日。
インドネシアのSSW、ディラの新しい作品に参加した。録音したのは2年前。英語の歌唱は難しいのでKYTEのニックの指導を受けながら録音した。とても大変だった。それから随分経って、ようやくビデオがアップされた。都会派のシュッとした感じを目指してハマオカモト君のような風貌で撮影に行ったが、仕上がりを観るとハマ君よりも唇が妙にぽってりとしていて、口に注目すると腹が立ってくる。自分が歌ったり話したりしている映像を観るのは本当に苦手だ。話しているところを観ると「なんて意地悪そうなやつなんだ」と思うし、歌っているところを観ると父兄のように不安な気持ちになる。思えば、初めて自分の声をラジカセに録音したときには「子供なのに武田鉄矢みたいな声で恥ずかしい」と思った。声については、いくらか自信がついたけれども。曲は素敵なので楽しく聞いてほしい。

28日。
「出町柳パラレルユニバース」のビデオが完成した。アニメを実写でやったら絶対に面白いと皆に提案したところ、山ちゃんを3時間の特殊メイクに巻き込んでしまうことになった。自分はというと、髭を剃る以外にほとんどすることがなかった。ゆえに撮影現場への入り時間も不公平だと言っていいくらいの時間差だった。「映像のせいで曲がまったく入ってこない」という感想もあったが、阿呆なビデオになってとても嬉しい。キャラクターデザインが中村佑介だからこそ、実現できたビデオだと思う。ビデオだけでなく、TVアニメや映画も同じだ。切っても切れない運命の黒い糸のような奇縁を感じて、なんとも愛おしい。俺たちの実際の青春は遠に終わったけれど、作品に宿る青春は永遠だなと思う。そして当時の青春は今なおあの場所をパラレルに疾走し続けている。青春とはそういうものだと思う。

29日。
友人のスグル君が退院した。久しぶりにスタジオで会って録音作業をし、いろいろな話をした。ジャンクフードを頬張り、350ミリリットルのビールをふた口くらいで飲むような彼の豪快さを思い出しながら(ゆえの発病だったと想像する)、蒸し有機野菜みたいな健康的な夕食を一緒に食べた。健康的な食事と思しき食事が必ず健康的な結果につながるとは限らないが、お互いの健康を願いながら咀嚼した。

30日。
仙台でライブ。仙台で食べる牛タンがどうして美味しいのかというのは、大きな謎だと思う。我々が食しているのは仙台牛といったブランド牛ではなく、外国産の牛肉だろう。ならば材料における仙台の優位性はない。調理法にも特別な秘密があるとは思えない。しかし、よく考えてみると、普段から進んで牛タン料理を食べる機会がない。年に1、2回くらいしか食べないが、そのどちらも仙台でのことだと思う。つまり、仙台で食べる牛タンが美味しいと俺が思っているのは、牛タンを仙台でしか食べていないからだ。しかし、そういう笑い話で済む話でもないような気がする。それは仙台で食べる牛タン弁当からは、何か、牛タンに対する執念のようなものを感じるからだ。麦飯と牛の舌の焼肉。思い入れやバイアスや商習慣がこじれ上がって、得体の知れない魅力を纏ってしまった。グルメは恐ろしい。

10月1日。
フォーラム盛岡で映画『四畳半タイムマシンブルース』を見た。思えば、主題歌をつとめた映画『鉄コン筋クリート』は山形の映画館で観た。しかし、当時の俺は指定席に長い時間座っていられない精神状態で、また自分の音楽が大好きな松本大洋さんの映画の最後に流れるというプレッシャーで自意識が拗れ上がり、最後まで席に留まることができなかった。観客たちは映画の余韻を保ったまま、最後まで楽しんでくれるだろうか。監督のマイケル・アリアスは作品に主題歌がつくことを歓迎していなかったのではないか。様々な想いが去来し、上映して数分で冷や汗が止まらず、途中で気分が悪くなってしまったのだった。あれから10年以上経ち、俺は盛岡でニヤニヤしながら自分が関わった映画を観ていた。過去に比べれば、随分と朗らかなところにやってこれたことを嬉しく思う。夕刻の盛岡の街が美しかった。

2日。
つくづく移動日とはいえ現地で休暇のような時間を持てることは素晴らしいことだなと思った。ゆっくり街に身体が馴染んだ気がして、ライブの演奏もどことなくリラックスできたように思う。魂だけが糸を引くように出発地に取り残され、実体より遅れて到着するようなイメージが湧く。新幹線が駅に着き、1日くらい経ってからヌルシュパコンと身体に追いついて合体する。もちろんこれは妄想だけれど。