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ドサクサ日記 10/28-11/3 2024

28日。
五十肩の診察。というか最早、肩のことは医者に一切訊かれなくなった。代わりに血中の尿酸値が高いということで、放っておくと関節炎、つまり痛風になりますよと軽めに脅かされた。こういうのは食習慣というよりは遺伝的な体質である、ということを何かで読んだので、プリン体の含有量など気にせず摂取していたが、親戚のおじさんが痛風になったことがあるという事実を静岡で聞いて戦慄している。

29日。
京都へ出かけて、本の装丁の写真撮影。数年前から、京都大学に通ったりしながらミシマ社の三島さん編集のもと本を作っていた。共著ということになるだろうか。なかなかの謎本と呼ぶべき内容で、もしかしたら、初めて本屋の芸能人本のコーナー以外に置いてもらえるかもしれない。尾崎君もコイちゃんも文芸のコーナーに歌詞集や小説やエッセイが置いてある。俺もあそこがいいなと内心に抱えている。

30日。
ボキボキの身体で這うようにボイストレーニング。その後はボサボサの髪を美容院で切り、六本木の美術館へ。oasis展を一足先に観せてもらった。青春のすべてとまでは言えないが、彼らが居なかったら自分の人生はこのような形をしていなかったと思う。一番好きな曲は「Live Forever」だといつでも即答する。歌い出しの「maybe」で稲妻に打たれてしまった。床が抜けかかった風呂のない8畳一間のアパートの一室で、目に映るものすべてが一瞬で塗り変わったような気がした。当時はドブの泥に顔を埋めたような毎日だったが、HOPEというものがこの世に存在するならば、この「maybe」ことなのではないかと解像度の悪い脳だけでなく、全身で、いや今に続く全人生として直感したのだと思う。くるりの岸田君、musicaの有泉さんとトーク番組を収録したので、そのうち公開になると思う。お楽しみに。

31日。
水戸へ。納豆と黄門様が合体したようなゆるキャラをライブハウスの観光案内に見つけた。肩こりとか、腰痛とか、そういう身体的苦痛を感じなさそうな朗らかな顔をしていて羨ましかった。きっと風邪もひかないだろうし、私財を投げ打った挙句にクラファンなどを立ち上げて不安になったりしない顔のようにも見えた。印籠を腰から下げているところから察するに、権力者の一味であることは間違いない。

水戸は鰻が名物でもあるとのことだったので、行きずりの鰻屋で孤独のランチ。はっきりと高級で目玉が飛び出そうだったけれども。疲れていたので善しとした。お陰で声がよく出た。

11月1日
いわきソニック。人々はどうしてライブハウスの楽屋に男性局部の絵を書いてしまうのだろうか。悲しいことだと思う。海外でも見たことがある気がするので、日本に限らず世界的な病なんだと思う。ソニックのオーナーの関野さんにお会いできてよかった。『THE FUTURE TIMES』で地元の人の言葉を集めるときに協力していただいた。上手にお礼が伝えられたなかったので、また歌いに来たいと思う。

2日。
仙台まで常磐線、特急ひたちで2時間。電車に揺られながら、福島県の広大さを思い知る。日本で3番目に大きい面積の都道府県なのだから、当然か。冨岡、双葉、浪江、縁のある場所が多いなと思う。仙台に着き、差し入れを買ってストレイテナーの楽屋を訪問。アルバムの発売を祝った。若者みたいな日程により既に満身創痍の一歩手間ではあるが、仲間に会うと魂が復活する。ライブも本当は観たかった。

おじさんたちのツアーはつづく。でも、魂は老けないのよ。

3日。
石巻。壁を覆い尽くす木札が耳なし芳一の身体に書かれた経文のように見えて一瞬恐ろしいが、それら一枚一枚がライブハウスへの支援であることを思うと、なんだかとても温かい気持ちになる。市街には空き地も多いが、強かに繁華していたり、面白そうな店が集う一角もあったり、どうあれこうやって生きていく以外にないというのが、被災地に限らず地方都市の現状なのだと思う。「この町を面白くしないと、私の人生が面白くならない」という言葉を、とあるお寺の副住職さんから聞いたことがある。移動の自由は基本的人権だけれども、本当に自由かというとそうでもない。経済的な事情や地縁に縛られたり、愛着みたいな感情が移動を拒んだりする。誰しもがノマドのように暮らせたりはしない。巨大ショッピングモールが敵なのではない。町を、人生を、諦めないという姿勢はとても大事だと思う。

被災したレコードをクリーニングしたりして営業しているというレコードバー、HAPPY END。移動日に通りかかったときには営業中だったけれど、日曜はお休みだった。残念。
気になって入ったパレスという定食屋が最高だった。鰹出汁を感じる醤油ラーメンと町中華的なチャーハンのセット。それすなわち、半ちゃんセット。別席の家族が注文した大盛り焼きそばが大盛りのあんかけ焼きそばと取り違えられていたが、「食べてみたかったのよ」と受け入れられていて良かった。

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Masafumi Gotoh
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