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かさぶたとピッコロ

視界が急に90度回転する。痛って。

すり切れて、血が出てる膝を抑えながら自転車を立て直す。道路から歩道に上がるあの段差が苦手だ。

ティッシュで垂れてくる血をふいて再びペダルを踏み込む。

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家に帰るとさっきでた血は固まってきてかさぶたができはじめていた。

ヒトはすごい。怪我をしても治るから。

限りなく人間に近いAIができても、この治癒能力は真似できないだろうなと思う。機械にとっての一部分の破損は、全体の死とイコールだ。それに対してヒトには、怪我してもかさぶたができるように、バックアップ機能が搭載されている。

ヒトはすごい。ちょっとだけピッコロになった気分。


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でもウーパールーパーはもっとすごい。臓器まで再生できるそうだ。

こういう特殊能力が人間に応用されたりする日がくるのだろうか。

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喪失している状態は永続しない。一時的に「無く」ても最終的にはバランスを取ることができる。

それはまるで盲目の人が、脳の視覚をつかさどる分野で視覚以外の情報を処理できるように、人はそのときそのときの変化に対応できるようになっている。

辛いことがあっても、時間とチョコレートと話を聞いてくれる友人がいればその傷口もかさぶたができてやがて治る。

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ヒトは自然の産物だ。その生物としての機能に存分に甘えて生きていこうじゃないか。







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