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タッチアップ?ハーフウェイ? 実際のケースで考える走塁

こんばんは、ごしまです。

たまにはデータではなく、実際の事例を交えながら野球の見方を書いていきたいと思う。

今回は4月27日オリックス戦 6回表の無死一、二塁でセンター後方への打球に対して、二塁走者島内がタッチアップできなかったシーンについて考えていきたい。
私の中では明確に"走塁ミス"と線引きしてるが、改めて深掘りしていくとなかなか面白かったので共有したい。
書いてて思ったが、判断難しい場面でしたね。

野球未経験の方にも考えてもらえるように、どのように考えたかを順を追って紹介していきたい。
認識違いや他の観点等があればどんどんご意見を頂きたい。


1. 楽天の走塁事情

データではなく、と言いつつ私のアイデンティティみたいなものなのでデータ面での楽天の走塁事情について少しだけお付き合い頂きたい。

こちらは2017-2019年の3シーズンのチーム別走塁指標の推移を示したものである。

画像1

このBsRはwSB(盗塁による走塁貢献)とUBR(盗塁以外の走塁による走塁貢献)を合算したものであるが、上図より分かるような楽天は走塁がド下手である。
(創設からのチーム事情を考えると、ここまでメスを入れるのもなかなか難しい状況もあったことは推察されるとフォローしておくが)

そんなチーム体質(走塁含むその他もろもろ)を変革させようと白羽の矢が立ったのが三木前監督である。
この登用は楽天のチーム体質改善に実に効果的だったことは間違いないだろう。
最終的に盗塁数こそ伸びなかったものの、走塁指標BsRは12球団中5位の3.9と例年の惨状を考えると、よくぞここまで変革してくれたと三木監督には感謝したい。

2. 今年の走塁事情

それでは昨年劇的に走塁が改善された楽天イーグルスの今年の走塁はどうなったか。
12球団ぶっちぎりの最下位である。
走塁指標BsR  -5.1は同11位の日本ハムのBsR -2.8の倍近いマイナスをこの時点で叩き出している。
開幕直後から牽制死、盗塁死、ヒットを打てばオーバーランで塁上死、走塁ミスの見本市状態である。
ここまで走塁ミス出るとちょっと笑ってしまうが、他球団はぜひ楽天の走塁を見習ってほしいものだ苦笑
そんな中起きた走塁ミス(と思われる)の1つの事例を紐解いていくのが今回の目的である。

3. 改めて考えたい"ハーフウェイを選択する理由"

さて本題に入る前に、まずはなんでハーフウェイをするの?というところにフォーカスを当ててみたい。
いやいや、、ハーフウェイの意味くらい分かってるよ(笑)という読者がほとんどかと思うが、自分自身漠然と答えのようなものはあったがそこまで深く考えたことがなかったので言語化してみたい。

私個人が考えるハーフウェイを取る理由は大きく分けて3つ。

①タッチアップを狙えない外野への飛球に対し捕球時に安全に帰塁でき、かつ落ちた際に1つ先へ進塁するため
②タッチアップ以上は確定した、捕球の可能性を否定できない外野後方の打球に対し1つ先へのタッチアップを担保した上で、落球した際に2つ先への進塁を貪欲に狙うため
③タッチアップを狙える外野への飛球に対し捕球時に安全に帰塁でき、かつ落ちた際に2つ先へ進塁を狙えるが、捕球された際にはタッチアップはできず帰塁するのみ


①は、通常のハーフウェイを取る理由である。
②に関しては最低限進塁を獲得しつつ、あわよくば落球の際は2つの塁を陥れたいというアグレッシブなハーフウェイ。
③に関しては所謂博打である。正直これを狙っていいのはかなり限定的(山本由伸に8回までノーノーされてて、後続が全員1割台とか)だと考える。
今回のシチュエーションに関して、③以外の理由であれば走塁ミスと言われても仕方のない状況である。
②であれば、打球判断を間違えたという意味で走塁ミス、③であれば走塁ミスではないが博打に負けたというところだろうか。博打を打つ場面だったかどうかも考える必要がある。

だって三塁到達が目標なら、あそこまで飛ばされたら中学生でも三塁までタッチアップでいけるでしょ?(笑)
それならハーフウェイしてまで捕られてからわざわざ帰塁する手順を踏む意味って何?(笑)
最初から帰塁して、楽々タッチアップしたらいいじゃん(笑)
というお話である。
じゃあ"そこまでリスクを負ってまでハーフウェイを選択する必要があったかどうか"、それが今回の事案を判断する肝になるかと個人的に考える。


4.  島内のハーフウェイ選択は妥当だったのか

まず状況を簡単に整理すると、

イニング:6回表
走者状況:無死 一、二塁
得点状況:楽 1 - 3 オ 中盤2点ビハインド
打者打順:5番 ディクソン
打球方向:センターやや右後方 フェンス際
センター:中川

押さえておきたい状況はこんなところだろうか。
ここで真っ先に考えたいのは、この打球に対してどのような状況が想定できるか、である。

① 捕球できず生還 +1点 無死一二塁(場合によってはそれ以上)
② 捕球できず 無死満塁
③ 捕球後タッチアップ 1死一三塁
④ 捕球後タッチアップも走塁死 2死一塁 
⑤ 捕球後タッチアップできず 1死一二塁

その他にもあるだろうが、ある程度この5つに絞られるだろう。
この場面、三塁だけを狙う場面であれば④と⑤に関してはそもそもほとんど起こり得ないと断言できる。
最初からタッチアップを狙うならアクシデントがない限り③はほぼ100%達成されるだろう。
外野後方フェンス際、センターがぎりぎりでの捕球ですぐの返球が困難であることが想定されるほどの惜しい打球をディクソンが放ったからだ。
本当に惜しかった、ショックが落ち着いた後に中川くんもよく捕球したと素直に拍手したくらいだ。
それくらいのビッグプレーだったため島内の判断が遅れてしまった、という見方もできるだろう。

しかし前述の通りこのプレーの問題の焦点は、判断が間違えることのリスクを追ってまでホームを狙うような場面だったかどうかである。

◎捕球されてしまった場合 ③④⑤
この場合、作れる場面は良くて1死二、三塁だろう。
これは1塁走者、2塁走者の力量、捕球後の体勢によってはそれ以上も考えられるがなかなか難しい場面である。
ここに関しては深く考える必要はない。
黙って1死一、三塁で次の内田、辰己で1点取ることを考えることができる。
これは完全に結果論だが、内田のレフトフライが犠牲フライになっていた可能性もあるし、その他の攻撃の選択肢も考えられる場面であった。

◎捕球できなかった場合 ①②
この場面、ホームを狙う欲は当然持つべきだろう。
ただあれだけセンターが全力で追いながら体勢が悪い中、捕球できなかった場合何が考えられるだろうか?
打球はフェンスにぶつかり、フォローに回っていたライトのクッション処理、もしくはグラブに触れたことで在らぬ方向へ転がっていた可能性もある。
打球をしっかり確認してからでもホームに生還する余地もあるのである。
生還できなかったとしても、無死満塁という贅沢な状況が待ち構えている。
"無死満塁の状況で内田辰己村林による得点が全く期待できない、かつハーフウェイで落球した際に死んでも1点を取らなければならない"くらいの状況だった、と考えているのであればその判断もありかと考える。
果たしてそれほどの選択をする状況だったのか?
私個人の答えはノーである。

5. 島内のハーフウェイは適切な位置だったのか?

もう1つ考えておきたいことがある。ハーフウェイの待機位置である。
あの場面、島内はベースからそこまで離れていない位置で待機しており、尚且、中川選手が捕球する直前に飛び出し⇒捕球後に慌てて戻るという動作を踏むことで、2塁釘付けとなってしまった。
ハーフウェイの難しいところに捕球したかどうかの判断に時間を取られる点が挙げられる。
そもそもあれくらいの位置にいたのであれば、最初からベースについて捕球のタイミングに合わせて思い切りよくスタートを切ったほうが、判断のラグをなくし加速を付けた状態でホーム突入を目指せる可能性もあるかもしれない。
いずれにせよ、島内の所作が"事前に状況を整理して臨んでいたか?"と言われると、そうではなかった可能性は高いのではないか、と私は疑問を持った次第である。
僅差ビハインドだったこともあり早く点を取りたい場面、メンタル面を考えると焦りが判断に影響を与えた可能性もあるのかな、と個人の経験則からは考えられる。

6. 最後に

 とここまで私なりに普段どのように走塁を見ているかをまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか。
今回どのような判断がなされたかは分かりませんが、「際どい打球はハーフウェイ」というのを脳死でするのは浅慮だというのは伝わったかなと思います。

自分ならそもそもホームを狙う選択肢を取れない足の遅さなので、無難に三塁に進塁できていたでしょうね。
先を狙う意識が仇となってしまった事例かもしれません。
ただ、走塁を考える事例としては非常に良い教材となったので、ビッグプレーでこの状況を産んだ中川選手にも感謝したい。

感想、ご意見、ご指摘があれば引用RTや返信、DMなどでいただけると幸いです。
長くなりましたが、読んでいただきありがとうございました。

ごしま

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