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タンゴ・葉山・遊散歩(12)


いつものコースで散歩する
このところ上天気が続いて朝焼けが美しい
ほんのり霞んだ空に朧に富士が浮かんでいる
懐かしい幻のような姿に見惚れていると
天空に遊ぶいたずら天使が呼びかけるような声がする
振り返るともうそこにいた
リードから逃れた漆黒のラプラドールレトリバーが

親愛の挨拶をしにきたのだろうか

でも、ミニチュアダックスのタンゴは犬付き合いができない
一瞬 顔と顔を突き合わせていたかと思うと
ドイツからやってきた黒白マダラのちいさな犬が
自分の数倍ありそうなカナダからやってきた黒犬の頬に噛みついた
甘噛みと本気噛みの間ぐらいの力で

なんとか引き離した

お互いの謝罪の言葉は四本足の生きものの耳に届いただろうか
見上げると富士山が曖昧な笑顔で私たちを見下ろしていた
起こってしまったことは仕方がない
袖すりあうも他生の縁
前世からの因縁があるのだから
次は仲良くしなさい
そう言われている気がした

タンゴは興奮の冷めた足取りで見えない柵に近づくと
中途半端に腰を曲げ
長い長い放尿をした

湿った風に乗って乾いた口笛の音色が流れ出た
走り出したタンゴのリードを堅く握る私の唇からのようだった

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