【小説】曇天らいふ

《ホームレス生活0日目》ネカフェ

土砂降りの中、列車は順調に俺を運んでいるはずだった。俺は車窓を流れる雨粒を眺め、お茶を一口、飲んだ。
福光駅に停車した。仮の目的地へはあと50分程度だろうか?しばらくすると車内アナウンスが流れた。
「お急ぎのところ大変申し訳ありません。現在、豪雨のため運行を一時、見合わせております」
どうやら進まないらしい。30分ほど待った。すると車掌らしき人物が前から歩いてきた。
「すいません。あとどれくらいかかりますか?」
「申し訳ありません。まだ見通しはたっておりません。しばらくお待ち下さい」
時間は腐るほどある。もうしばらく待つことにした。
1時間以上、じっと座っていただろうか?持病の痔が少し疼きだした。俺は席を立ちホームへ下り立ち時計を確認した。17時40分。
(ここでいいか)行き先は別にどこでもよかった。

福光駅の改札を抜け、俺は財布の中身を確認した。2万1千260円。
駅構内のコンビニで傘を探した。いつもは安いビニール傘を愛用していた。しかし(これからは必需品になるかもな)そう思い、今日は少し値のはる黒い大きな傘を持ちレジへと向かった。

駅を出ると商店街らしきものが見えた。人がたくさんアーケードの中を歩いていた。雨の日は屋根のあるこの場所は買い物には最適かもしれない。大抵、なんでも揃う。食事も選べて快適だ。
その人ごみを掻き分け俺は数百メートル先のコンビニへと急いだ。
購入したものは、ビール、からあげ、チーズにタバコ。

コンビニを出てしばらく歩くとインターネットカフェが見えた。
(今日はここにするか)
「いらっしゃいませ。会員カードをよろしいでしょうか」
若くてかわいい女性の店員だ。ただ愛想はよくない。
「初めてなんですけど」
「それではこちらにご記入下さい。あと身分証明書はお持ちでしょうか」
俺は財布から免許証を取り出し店員に差し出した。
あまり本名は書きたくないが仕方がない。記入しながらシステム料金を確認した。
「お時間はいかが致しましょう」
「ナイトパックでお願いします」
「喫煙はされますか」
「はい」
21番。この部屋が今日の快適な生活空間だ。しかし、一週間後にはこの生活が、一遍することを俺自身が一番よく分かっていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?