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コロナのおかげで始めた物作り

こんにちは、バイブレーシャンのGoRoです。noteを初めて2作目に何を書こうかなーと考えているとnote企画の「#つくるのはたのしい」が目に入った。そうだ、これが描きたかったんですよー。

緊急事態宣言が発令された数日前に還暦を迎えました。おそらく大勢の人たちと同じ様に、stay home中に仕事も収入もなくなり精神的にも肉体的にも落ち込みました。しかしいつまでも落ち込んでてもしょうがない。なんかしないとと思い、楽器を作り始めたのです。

35年ほど前、僕はカリンバというアフリカの楽器を作って売りながらアジアの各地を5年間ほど放浪していました。日本に戻ってきて、ストリートで演奏を始め、気が付けば音楽を演奏することが生業の一部になっていたのです。自分用の楽器を作ったり、修理をしたりはしていましたが、都会生活の中で放浪中のように楽器を作るモチベーションが上がらなかったのです。

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カリンバのボディー ココナッツ1986年制作

[物作りで大事なこと]

物を作ると一言で言っても実に幅が広い、毎日の中で私たちは物作りをしています。朝起きて、さっとコーヒーを入れてパンを焼く、これだって物作りだし、工場に行って自動車を組み立てる、会社行って企画書作るなどはもう立派な物作りだよね。でも日常のほとんどの事は、受動的に惰性で動いているのではないでしょうか。今の社会は完全に消費させて経済を回すシステムになっていますので、常に新しい物(事)を早いスピードで作り出さなければなりません。そこには、物作りを楽しむ余裕はあまり無いように感じます。

物作りで最も大切な事はなんだろう?

僕は’愛’だと思っています。ビートルズも歌ってます「愛こそすべて」と

ちなみにこの曲“二重否定”とよばれる文法で、歌詞の解釈はネイティブの人の間でも意見が分かれると言われているようです。ダブル ミーニングってやつですかね。やっぱりジョンはすごい。https://lyriclist.mrshll129.com/beatles-all-you-need-is-love/

プロだろうとアマチュアだろうと

愛を込めて作られた料理は美味しいです。

愛を込めて作られた物は大切にしようと思うし、長く使って味も出てくるはずです。

当然、手間暇かけて作られたものは、購入しようと思えばそれなりの値段になります。

一方できる限り値段を抑えようと大量生産したものが現代の主流です。毎日朝から晩まで流れ作業で、今自分が何を作っているのかさえわからないような状況で、愛を込めるのなんて無理ですよね。

それでも、そんな大量生産品でも長く使っていて愛着の感じる品の一つや二つは存在したりします?

そうです。使う方の側が使っているうちに愛を込めていくんですねー。

例えば、学生の時に初めて買ったギター。安もんだけどいいんだよねと、今じゃ高いギターを何本も持っている友人が、自慢げにそのギターを弾いてくれたりします。まあ昔の工業製品は今に比べて、まだ作り手の愛を感じるものが多かったような気がしますが、、

作る方も使う方も、愛が大事なんですよね。

[下ガレバ上ガル]

5年前に山奥に移り、素材もたくさんあるし、環境も楽器を作るのには最高な場所なのですが、最初に張り切りすぎて草刈りを手作業でやったら、手首腱鞘炎になり、1年楽器が上手く弾けなくなりました。治ると同時に右の50肩が発症し、ポニテールのゴムが結わけなくなるほどの痛みでした。治ったら左1年、やはり、環境の変化は大きなストレスになるようです。まあ、騙し騙しやってはきたのですが、何かクリエィティブな事をするモチベーションは全くありませんでした。

生活にも慣れてきて健康面も精神面も安定してきてやる気が出てきた頃にCovid-19です。また奈落に突き落とされました。当然具合も悪くなり、精神的にも参っていたのですが、まあ、底ついたのでしょう。

落ちて底に着けば、あとは上がるだけで、底なしはないと旅の経験から、そう信じ込んでいるので、あとはぐんぐん上がってきたのです。

「やる気」が。

とりあえず何か作んなくっちゃと思い、演奏ツアーした各地で、楽器を作ればといただいた煤竹(古民家などの囲炉裏の上にあった竹。100年以上は生活の煙で毎日燻られてきた)があったので、これで笛を作り出しました。別に売れるあてもある訳でもなかったけど、とにかく作り出しました。昔から笛はたくさん作ってきたし、笛作りは割合シンプルです。素材を選んで穴を開ければ良い。もちろん「鳴る」ようにね。

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今回、煤竹で作った笛たち

[鳴るように鳴る]

この「鳴る」ようにが難しい。「良い音」で「鳴る」ようにと言っても。

「良い音」の基準は人それぞれで、

西洋楽器に基準を置きその中で「良い音」と判断する人。

掠れた音や倍音のまじった、いわゆる濁った音を「良い音」とする人。

昔友達がくれた本で、残念ながら紛失してしまい本のタイトルが思い出せないのだが、世界の色々なミュージシャンの名言集で、読むというよりなんかあった時パラパラめくってメッセージを受け取るみたいな本なんだけど、その中で、最も僕の好きな言葉は、

「音楽に良いも悪いもない、好きか嫌いかだけだ」

ルイ アームストロングの言葉ですが、これって全てのことに当てはまるんじゃないでしょうか。

ルイ アームストロングが出たので(What a Wonderful World この素晴らしき世界)貼ります。このバージョンはこの記事書いてて探したら出てきたんですけど、曲の始まりにルイの語りが入ってて、「結局、愛が大事」と言ってます。彼が生きた時代は、今よりももっと黒人差別はひどかったし、彼ほどのスターでさえ白人と同じレストランやホテルには入れなかった。そしてこの歌が発表された頃はベトナム戦争泥沼化の真っ只中で、作詞、作曲のボブはベトナム戦争を嘆き、平和な世界を夢見て、この曲を書いたらしいです。世の中が酷いからこそこんな素敵な歌を作ったんですね。いつ聞いても、この曲は僕の琴線に触れますが、今回聞いて、今の時代の応援歌に思えて、感極まり、正直泣いてしまいました。

煤竹なんですが、笛を作りには非常に良い素材だと思います。何しろ10年以上も毎日のように煙で炙られてきて、しかも割れていない竹は、良い具合に乾いてます。そして柄が美しく艶があります。縄で結わかれた痕などがつき時間の長さを感じ取ることが出来ます。手に入れたくても、これから先作るのは不可能と言って良いでしょう。そんな存在感のある素材で笛を作るのですから、それを「鳴る」ように作るのはその素材の味を消さない「鳴り」でなくてはならないと思いました。すると「鳴るように鳴る」のですね。

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僕の持っている煤竹の中で一番黒い煤竹。おそらく火の側にあったと思われる。酒蔵のだったもので、毎日100年以上も酒作りの煙で燻されてきたんですねー。ちなみに酒の匂いはしません。

[楽器作りは簡単?]

素朴でなるべく手を加えない。素材の味を引き出す。なんか日本料理みたいですね。それを心がけて笛をつく作り始めました。いわゆる横笛からネイティブ・アメリカン・スタイルの笛など気がついたら10数本作っていました。ありがたいことに、そうして楽器を作り始めると、カリンバを作って欲しいや、笛が欲しいというオーダーが入りだし、デバダシスタジオという踊りのスタジオのクラウドファンディングに出品した楽器はほとんど売り切れました。ほんとうにありがたいです。

学生時代の音楽の成績は1か2でした。中でも笛は嫌いでした。なのに、今、笛を作っているのはおかしな話ですね。僕の作っている笛は楽曲を吹くというより、もちろん他の楽器と合わせるためにピッチを合わせて作ったりもするのですが、どちらかというと自然の中で音を出して楽しむ。その音色とバイブレーションを感じ取る。あるいは自然と一体化するためのツールとして笛を作っています。ひとつの音の中の世界観を見出す。そして前回のNote記事に書いたのですが「間」を感じる瞑想の笛、そんな笛作りを目指しています。

物作りは楽しいです。特に楽器の場合は形だけでなく音も作ります。楽器作りはハードルが高そうだと思われがちです、もちろんギターのような楽器を作るのは大変です。でも簡単に音を出せる楽器を簡単に作ることができます。ストローを切って穴を開けるだけでも楽器になってしまうんですね。

こんなにうまく吹くのが大変ですね。

[久しぶりに作るカリンバの楽しさ]

カリンバ(アフリカの楽器。指で弾いて弾くオルゴールのような音)も30年ぶりにオーダーを受けて作り始めました。このカリンバのおかげで今の僕があると言っても過言ではありませんし、芸は身を助けると言いますが、カリンバのおかげで命拾いしました。こなお話は別の機会にしようと思います。このカリンバは小さくて、どこにも持ち運べるし、音も優しい、誰が弾いてもいい感じになるという素敵な楽器です。僕はいろんな楽器に手を出しますが、無人島に一つだけ持って行って良いと言われたら、迷わずカリンバをとります。

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1984制作のカリンバ。これをずーと使い続け世界中を一緒に旅してきた相棒ですが、壊れて修理するうちにオリジナルのパーツが無くなりました。形だけが当時のままです。

[ワークショップで楽器作りの楽しさをシェアーする]

時々カリンバ作りワークショップを開催してきました。簡単に作れるキットで、自分たちで絵を描いて、最後はセッションして遊ぶというワークショップです。ドラムサークルという太鼓をたたくワークショップもやってきました。

どのワークショップも専門的なことをやるというより、みんなもっと気軽に音出して楽しみましょうよ。みたいな感じで開催していきたいです。でも、そこには本気で愛を込めて音を出したり、物を作ったりする。ということを心がけていきたいです。それこそがこれからの時代は重要になると信じていますから。

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ワークショップで作っているカリンバたち

[トキメキを見出す]

歳をとり色々と経験を積んでくると、やってきたことに慣れてしまいワクワクやドキドキといった「ときめき」を感じにくくなってきます。物作りの醍醐味は「ときめき」です。どんなものができるだろう?どんな音がするのだろう?そんなことを想像しながら作るのは楽しいです。そしてそれが、よし作ろうというモチベーションにも繋がると思うんです。ある程度、たくさんの物を作り経験を積んでいけば一般的には、当然こんな風にすればこうなると分かってきて簡単に作れるようになっていきますが、同時に「ときめき」も溶けていきます。「ときめき」がなくなってくると物を作ろうというモチベーションもなかなか上がりません。

「ときめき」をどのように見出すか?

僕の考えた結論は「何か新しいことを始める」でした。もちろん笛を何本も作っていく中で、新しい発見やアイデアはあって常にチャレンジしてるのですが、もっと強烈な「ときめき」が欲しい。何する?となってもなかなかアイデアが湧いてこないんですね。そんな中、笛を作っていると、一本の煤竹が、どう見ても尺八作るしかないでしょうという形してるんですね。根っこの部分でちょっと反っている。普通は、建材にするのであれば、根っこのところや曲がってるのは避けると思うのですが、そして太さもちょうど良いし、何より割れてない。しかもこの煤竹は、かつて酒蔵だった竹で、毎日の酒造りの煙で燻されてきたものです。尺八制作者であり奏者である友人に、こんな竹は見たことないと言わしめた逸材です。もうね尺八にしろと竹が叫んでる気さえしたのでした。

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酒蔵だった煤竹で作った人生初の尺八

しかし大きな問題があリました。

僕は尺八が吹けないのです。いろんな笛を吹き作りもしますが、尺八だけはうまく音が出せなかったのです。時々友達の持っている尺八をトライしてきたのですが、うまく音が出せないし、興味が湧かなかったので楽器も持っていませんでした。

そもそも音が出せないものを作るというのは無謀です。しかもこの素材、二度と手に入らない煤竹で、失敗したらおしまいです。僕の周りには尺八製作者がいるので、彼にアドバイスをもらい作れば良いのですが、ときめいてしまったのです。この作りたいという衝動が抑え切れず、すぐにネットで造り方を検索しました。便利な時代ですねー。どうやって作れば良いのかを詳しく解説してくれている先生方が簡単に見つかります。あとは自分の経験と勘を信じて作り始めました。

出来上がり吹いてみると、、、

音が出たー!しかも簡単に!すごくいい良い音がするー!!!

人生初の出来立て尺八を吹いてみました。下手くそなんですがその辺はよしなに!

あー、もう楽器作りの醍醐味はこの瞬間ですね。音が出た。どんなに美しく作っても音が出なきゃ話になりません。

調子に乗って2本目の尺八も作ってしまいました。もっと長いやつですね。

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右が一作目煤竹の尺八、長さは2尺くらい。左が2作目。2尺8寸くらい

歳を取っても好奇心を失わず新しいことにチャレンジしていきたいと常々思っているのですが、今回、尺八をつくるたのしさを発見でききたこと、そしてnoteを始めたこと。これもコロナがなかったらやらなかったと思います。まだまだ社会は混乱してますし、落ち込みやすい世の中ですが、逆にいろいろなことを見出すチャンスでもあると感じています。

これ作りたい!この最初の衝動は「ときめき」です。そして実際に作る前に諦めてしまう人も多いです。まあ、僕も実際そうです。でも、ちょっとのモチベーションで意外に作れてしまったりします。失敗を恐れずにどんどんチャレンジしていきたいです。そして、楽器を作り音楽をやるというとハードルが高そうに思われますが、そんなことありません。僕でもできるのだから、誰でも気軽に楽しめるんだよということを広めていきたいです。

人類はこれから先も、様々なものを作り出していくでしょう。こんな世知辛い時代だからこそ、愛を込めて、ものつくりを楽しむことが増えていくといいですね。

さて、次は何をつくろーかな






ー「喜捨」の意味は功徳を積むため、金銭や物品を寺社や困っている人に差し出すこと。ー あなたの喜捨に感謝いたします。