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不動産のもやもやがスッキリするフレームワーク集(其の2)-収益還元法-

こんにちは。

今日は難しそうに見えて、わかるとかんたん。
しかもけっこう便利な不動産の考え方(フレームワーク)をお話します。

「収益還元法」!!

はい、自分に関係ないと思って立ち去らないでください。笑

あと、よくある不動産コラムとかで解説されているものより、
実践的な内容になっていると思います。

こんな方が知っておくとパワーアップするやつです!!

・不動産に資産性をもたせたい方
・割安な不動産を狙っている方
・賃貸で住宅や店舗を借りている方


3は、意外と思うかもしれませんが、
オーナーの気持ちがよく分かるようになるので、交渉力がつきます。

自分が入居していたほうがオーナーにとって特なのか損なのか。
相手の考えがわかると交渉もスムーズ。

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ということで、いきますね~。

(以下、鑑定士さん不動産業者さんからすると用語の定義がちょっと違う、というツッコミもあるかもしれませんが、一般の方向けに少し用語を柔軟に使っていますのでご了承ください。汗汗)

収益還元法のざっくりした考え方

すごく簡単にいうと

「その不動産を持ってることでどれだけ儲かるか」

という視点で、価格を決める考え方です。

なので、賃貸物件(住宅にしろ、商業ビルにしろ)の価格を見積もるときによく利用されます。

図で表すとこんな感じです。

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どれだけ儲かるか

というのがとても重要です。

よく、収益還元法の要素を浅く拾った概念で、
「表面利回り」による価格
というのがあります。

その不動産から得られる「賃料売上(収入)」だけに注目したものです。

図で表すとこんな感じ。

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これはこれで使える場面もあるのですが、
これを指標にして判断するのはめちゃくちゃ危険です。


会社でも家計でもそうですが、

収入ー費用=収益

ですよね。

なので、
表面利回りでは費用の観点がスッポリ抜けてます。

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収入<費用

だったら収益はマイナスですよね。

ということはその不動産を持てば持つほど赤字となる恐ろしさ。

余談ですが、なぜか古風な(もしくは悪どい)不動産会社だと、
表面利回りしか説明せずに、投資不動産を販売するものだから、
「買った途端赤字になったんですが・・・」という相談がよく寄せられます。


あとは、収入という言葉ですが、
賃料収入だけに注目するのも危険です。

実は賃料収入以外にも、毎月収入が発生することもありますし、
数年後にその不動産を売却したときの収入も入るはずです。

メルカリを利用した方ならわかると思いますが、

ある新品の服を購入して、1シーズン楽しんだあとに、
どのくらいの価格で売れるか、で実質的な出費が決まりますよね。

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このへんのことも表現したのが「利回り」(正確には「還元利回り」)というやつです。

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なので、価格の計算式としてはこうなります。
価格=純収益/利回り

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難しい言葉が並んできたので、一旦おさらいです。

・「収入」には賃料収入以外もある(再販収入、その他収入)
・「費用」のことも忘れずに(純収益が重要)

2つだけです。

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今から不動産の種類ごとにこの項目にどんな差があるかだけ列挙します。
それぞれの立場で、項目がどんな風に影響しそうか想像みてください。

収入・費用から想像してみよう

毎月発生する収入・費用

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その他、ときどき発生するけど大きい収入・費用

収入:再販収入
費用:大規模修繕費用等


ざっくり分けたわりにけっこう項目が出てきちゃいましたね。笑
安心してください。
ポイントはこのあたりです。

【収入】

賃料収入

オーナー目線:賃料上がるor下がる可能性がないか
入居者目線:自分が払っている賃料は相場以上なら交渉で安くならないか

再販収入

オーナー目線:いつ頃再販するか、そのときに高くなりそうか、安くなりそうか、
入居者目線:オーナーが売ろうとしたとき、自分はいたほうが物件の価値が上がるなら賃料交渉できないか


【費用】

テナント募集費

オーナー目線:あまり短いサイクルで入れ替わるとコストが嵩む
入居者目線:借りている部屋は人気かどうか。人気ないならテナント募集費もかさむので、自分が退去すると困るから賃料交渉できないか。

大規模修繕費用等

オーナー目線:建物の安全確保のため、もしくは入居促進のためにどんな費用が必要になるか
入居者目線:自分たち入居者の安全や快適性、販売促進のために何をしてくれているか。してくれてないなら、賃料安くならないか


利回りから想像しよう!

住宅と商業ビルで若干利回り感は異なりますが、
日本最大手の不動産鑑定事務所では、このようなデータを提供してくれています。(ほかにもデータがたくさんあって、個人的にいつも頼りにしています)

以下が投資家が求める利回りの基準です。

やっぱり、銀座の高級店は利回りが低いですね(価格が高いということ)
このあたりも基準にしながら、立地や建物の質などで利回り水準を把握します。

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出典:一般社団法人日本不動産研究所「不動産投資家調査」

利回りによる考察

オーナー目線:最終的にどのくらいの再販価格が見込めそうか
入居者目線:自分の今の賃料から逆算するとオーナーがどのくらいの金額で売りにだそうとしているのか

その他いろいろな不動産について参考までにざっくり話します。

・オフィス
・物流施設
・ホテル
・ヘルスケア施設(老人介護系施設など)
・ゴルフ場

住宅や商業ビル以外にも世の中にはいろいろな不動産がありますが、
だいたいはこの収益還元法の考え方で価格が付けられて取引しています。
(逆に例外は、一番身近な自分が住むための住宅の価格ですが、これは別途お話したいと思います)

収益と費用の項目や留意点もほぼ同じ感じです。
(ざっくりすぎだろ!)

とくに、ホテル、ヘルスケア、ゴルフ場はオペレーショナルアセットと言われていて、
不動産賃貸というよりは、経営(オペレーション)が重要になるので、
その分、一般的にリスク・リターンの変動性が高くなります。

いまコロナによって、まさにリスクの部分が強く出てしまって、
収益性が落ちているので評価がガクンとさがってしまっています。

さらに

このあたり、この前お伝えしたフレームが活きてくると思います。

市場参加者の視点からて「効用」が発揮するポテンシャルがあるか
その収益が長続きしそうかどうか

などが立体的に見えてくるかもしれません。

歴史が語る収益還元法の重要性

さきほどもお伝えしましたが、いまはほとんどの不動産が、収益還元法で評価されています。


大きな理由にバブル崩壊があります。

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あれは収益のうらづけのない幻想だったため、その教訓が活かされているわけです。

「住宅 不動産業 激動の軌跡50年」(不動産経済研究所)
という国内不動産のこの50年をその時の時事評論原文を載せてまとめているマニアックな(でもめちゃくちゃ面白い)本から、創刊者の故・柴田射和氏のこの言葉を引用させて頂いて締めくくりたいと思います。

1987年1月26日「狂乱地価」の章より

「世界の金融、情報センターとして成長しつつある東京の都心商業地区の価格が上昇するのは、その利用価値が国際的にも承認されていることを示すもので、そのいみでは理解できないこともない。だが、経済的地盤の沈下が伝えられている大阪や京都でも50%をはるかに超える上昇を見せているのは、一体何故なのだろうか」


今日はここまでです!

次回はこれをもとに
商業ビルなどで、いまコロナの保証で何をしようとしているか、
どのような施策が筋がよさそうか、
具体的な各行政の保証内容も確認しながら勉強したいと思います!

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