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広瀬友紀『子どもに学ぶ言葉の認知科学』

広瀬友紀『子どもに学ぶ言葉の認知科学』を読んだ。

主に幼児の言語獲得における"間違い"を取り上げた『ちいさい言語学者の冒険』(2017)の続編にあたり、今回は小学生の宿題やテストの間違いが題材になっている。


webちくまの連載「宿題の認知科学」のうち、国語は『子どもに学ぶ言葉の認知科学』、算数は『ことばと算数 その間違いにはワケがある』(2022)と2冊に振り分けられたそうだ。


特に鏡文字についての第2章が面白かった。
鏡文字は左利き特有の現象ってわけでもなかったんだ?!
幼児は「間違えて反転しちゃう」というより「反転しようが同じ形として認識できる」、というのが驚き。母語や文字社会に最適化される前、どんな風に世界を捉えていたんだろう。

あと、日本語のあいまいさを扱った第3・4章を読んでいて、英語が世界共通語なのは政治的な背景だけでなく構造のわかりやすさもあるんだろうなと思った。
日本は外部からの影響を比較的受けづらくて、人の流動性が低かったから、文脈に依存するあいまいな構造でも通じたのかな。

全体を通して、岩波科学ライブラリーの2冊(『ちいさい言語学者の冒険』『ことばと算数 その間違いにはワケがある』)よりも一歩踏み込んだ内容が多かった。

本書でめざしたいことは、「こんなおもしろいの出ました〜」というネタを共有するだけじゃなく、そこから人間の何がわかるのか、言語学・心理言語学・認知科学的知見でもって、もう一歩深く迫ってみることです。

『ちいさい言語学者の冒険』

と著者が書いているように、珍解答を面白がるところで終わらず、もっと学びたい人向けの文献ガイドまでついている。
興味の赴くままに独学したい人にはありがたい。

ところでこの本の編集者は筑摩書房の柴山浩紀さんだそう(あとがきに書いてあった)。読書家でもクリエイティブ界隈でもない自分ですら何度も目にするってすごい。
市民・消費者は著者ばかりに目が向くけれど、実際には出版社や編集者の影響力って大きいんだろうな。当たり前ですが…。

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