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御朱印というデザインを紐解く

西国三十三所をご存知だろうか。
近畿と岐阜県に点在する33か所の観音信仰の霊場である。これらの巡礼は日本で最も歴史があり、草創1300年になるそうだ。

僕は数年前から西国三十三所の巡礼を始めた。
巡礼はスピリチュアリティが目的というよりも、
御朱印ブームに乗っかったという安易な目的だ。
何かバチが当たりそうだが、
子どもの頃に夢中になった「キン消し」や「ビックリマンシール」集めの感覚に似ているのだ。

僕なりの御朱印の楽しみ方がある。
御朱印は巡礼の思い出を振り返るためというより…行った霊場を忘れないためという理由も大きい。
しかし、何より魅力なのは御朱印のデザインのカッコよさである。
B5サイズ位の白紙に墨と朱印でダイナミックに描かれた御朱印は同じように見えて、それぞれの霊場によって独自性や特色があるのだ。
また、書き手の経験値や性格、その場の忙しさなどによって書体の良し悪しが表れているのも面白い。
忙しくて明らかに雑だと思う書体もあれば、繊細に書かれて感動する物もある。
ちなみに経験値と良し悪しは比例していないが、書くスピードには比例していると思う。

書き手の良し悪しや好みも含めて御朱印のデザインは各霊場のイメージを僕に植えつけている。
「字は体を表す」「書は人なり」等とよく言われるが、御朱印はその霊場を表す鏡だと思う。
笑い話ではあるが、以前、どんな人が書を書いているのかネットで調べた事がある。西国三十三所ではなかったが「バイト募集」の広告を見たときには、色んな意味で衝撃を受けた。

昨年、会社のロゴマークを一新するプロジェクトチームに所属していた。
記憶に残り、メッセージ性のあるロゴにするために、プロのデザイナーとディスカッションを繰り返しながら、アイデア出しやデザインのバランスを調整しながら半年ぐらいかけて作成した。
その中でデザイナーの方の言葉が印象に残っている。「イラストと字体を両方崩すとふざけたイメージになる、逆に両方かっちりしたデザインにすると堅いイメージになる、デザイナーは崩す所とかっちりさせる所のバランスを考えるのが難しいけど、一番楽しい部分でもある」
シンプルなデザインになればなるほどバランスが大事だろうし、難しい作業だろうと素人ながらに思う。また、記憶に残るデザイン、メッセージ性のあるデザインというのを考えると、デザインする動機や場所、コミュニケーションといったプロセスの中にある物語性が重要になるのかもしれない。

御朱印は物語性を兼ね備えている。
創生1300年という歴史、巡礼という非日常、人との出会いや交流、もちろん信仰心もある。
そして、かっちりしたデザインの中にダイナミックさや繊細さがあり絶妙なバランスを醸し出している。
そう考えると、書き手の良し悪しも、紛れもないデザインであり、物語性として捉える必要がある。

西国三十三所は第一番から第三十三番までの巡礼道は約1,000kmあるそうだ。
まだ2分の1しか巡礼できていないが、これからも続く巡礼の旅で新たな出会いや発見を大切にしながら楽しんでいきたい。

One’s destination is never a place, but a new way of seeing things.
目的地というものは決して場所じゃなく、物事の新しい見方なんだ。 - Henry Miller -

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