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【先進企業の事例①】Henkel(ヘンケル)から学ぶ、サステナビリティ事業への社内の巻き込み方

このnoteのポイント
社内でサステナビリティ事業を推進するにあたってのポイントは社内のサステナビリティ活動の「ハブ」となることを目指して;
 ①社員を深く理解すること 
 ②サステナビリティの活動をスタートする際に十分な準備や情報を提供
  すること 
 ③社内ですでに行われているサステナビリティ活動を承認し、「難しいこ
  とではない」という気づきを与えること
の3つ

あけまして、おめでとうございます!Good Tideチームリーダーの太田です。

2020年は、プライベートでも事業としても、コロナ禍の中あっという間に過ぎていきましたね。
ただGood Tideとしてはチームの立ち上げをきっかけにサステナビリティ事業を推進する事業会社の皆さま、そしてそれをサポートするパートナー会社の皆さまと多様なディスカッションができ、コロナとは違う側面で印象的な1年となりました。

そうしたディスカッションの中で出てくるお悩み第1位・・・と言っても過言ではないのが「上長にSDGsの取り組みを推進するように言われたけど、どうやって事業部と話したらいいかわからない」「事業部からは手間と思われ協力を得るのが難しい」という最初の一歩をどう踏み出すか、というお話でした。

そこで、サステナビリティにすでに積極的に取り組まれている先進企業としてヘンケルジャパン株式会社にお話を伺いました!

サステナビリティ事業に取り組むすべての方にとってとても参考となるアドバイスやご経験をお話いただいたため、「ぜひ最初の一歩に悩んでいる方に知っていただきたい」とnoteへの掲載についてご相談したところ、ご快諾いただきました。
一部とはなりますがぜひご紹介したいと思います。


ヘンケルが行うサステナビリティ活動とは

ヘンケルジャパン株式会社の主な事業内容
ヘンケルは、世界120カ国以上で事業を展開する国際企業で、日本法人では主に下記の2つの分野で事業を展開しています。

1) アドヒーシブ テクノロジーズ(接着技術)事業部門:
ヘンケルの接着技術・ブランドの製品は、製造業、メンテナンス、一般消費者向けアプリケーションにおいて幅広く使われています。
消費者にとって身近な商品としては、「Pritt」というスティックのりがあり、個人のパッケージングニーズから産業用の接着・シーリングニーズまで幅広く対応しています。
2) ビューティーケア事業部門:
一般消費者向けと、ヘアサロン向け事業を展開し、シュワルツコフやサイオスといった代表的なブランドを中心に、ヘアカラー、ヘアスタイリング、ヘアケアなどの製品を展開しています。

ヘンケルのサステナビリティ活動
2050年には人口が90億人に到達する予測である地球では、限られた資源の中でいかに豊かに暮らせるかという問いに対して答えていくことが、ヘンケルのサステナビリティの戦略の指針となっています。
ヘンケルはサステナビリティのリーダーとして、責任を持って事業を拡大し、事業の成功に向けて取り組むと同時に、持続可能な発展のための新たなソリューションを生み出すことを目指しています。
実際、SDGsの17の目標の中でもヘンケルの事業と関連性の高い項目を見てみると、その解決がヘンケルの企業目標の達成につながっていくことが確認されました。その実現に向けて積極的に取り組み、全17項目のSDGsの達成をサポートしています。

具体的には環境フットプリントに対して、事業を通して3倍の価値を創出することが2030年までの目標です。
持続可能な発展の課題を反映した6つの注力分野を設けて、事業プロセスに活かしています。
実際ヘンケルでは、開発のプロセスの様々なチェックフェーズにおいてその製品がサステナビリティに貢献していることを証明する義務を課しています。

図1

こうした取り組みを継続的に実施するために社員のサステナビリティへの理解も不可欠です。
そのために全世界の社員がeラーニングで「サステナビリティワークショップ」の受講をし、サステナビリティアンバサダーになります。
サステナビリティアンバサダーは拠点のある地域の学校やコミュニティなどで出張授業の開催やイベントなどを通じて、子どもたちにサステナビリティとは何か、を教える役目を担っています。

図2

ヘンケルのサステナビリティ活動の詳細は下記まで


ヘンケルジャパンにおいてそうした活動を支援・推進しているのが広報部です。
今回はその広報部で中心となりサステナビリティ活動の推進と情報配信を担当しているヘンケルジャパン株式会社にて広報を担当している小野尾さんにお話を伺いました!

図3

ヘンケルでは全世界共通の企業文化として「サステナブルな価値の創造」と表現するほど、かねてから事業だけでなく拠点がある地域を中心とした社会活動も行ってきました。
しかし小野尾さんがヘンケルに入社した2017年当初は、日本法人では目立った活動が行われていなかったそうです。

そんな中、入社早々に日本でも企業活動としてヘンケルのサステナビリティについて発信していくことが重要だと感じた小野尾さん。
企業文化として「サステナビリティ」は社員に理解されているので事業部に相談すればサステナビリティ活動へ協力してもらえる体制は整っていましたが、実際の活動実績は限られていました。
そこで小野尾さんは日本法人全体の取り組みの推進や広報を担当していく中で下記の3つに気を付けたそうです。

ポイント1:普段からコミュニケーションを取り、社員のバックグラウンドまで理解しておく

ヘンケルジャパンでは、相談すればサステナビリティ活動に社員が協力してくれるものの、ヘンケルの取り組みをわかりやすく、効果的に伝えるためには誰でもいいというわけではありません。
話すテーマや相手によって依頼する事業部も異なれば、話す人の選定にも配慮が必要です。

そこで小野尾さんは普段から社内のいろんな部署の方々と話せる広報のポジションを活かし、社員の皆さまと密にコミュニケーションを取り、それぞれのバックグラウンド(経歴や興味関心)の理解に努めたそうです。
その上で、社会活動に関心のある社員やサステナビリティに貢献している事業に携わる社員を覚えて、「こういうテーマだから、こういう理由でこの方に参加してもらいたい」と、各事業部の責任者に明確な依頼が出せるようになりました。

ヘンケルのサステナビリティ活動の1つとして、主に小学校低学年向けにサステナビリティについての教育を行うというものがありますが、これを初めて日本で行った際はサステナビリティ活動への理解がより高い海外からの赴任者の協力のもと、社員の子どもが通う小学校で実施できたそうです。
「サステナビリティ活動にそもそも理解がある方」、「普段の業務内容・役割とサステナビリティ活動が直結する方」を知っておくと、スムーズに最初の一歩を踏み出せそうです。

ポイント2:「丸投げしない」「自分が活動の主体」という意識を忘れない

小野尾さんはお話を聞く中で、何度も「人に助けてもらいながらやってきた」と繰り返し言っていました。
小野尾さんは企業のサステナビリティ活動に関しては企画をリードする役割で、最適な社員のアサインをしています。
技術的な話や事業部の取り組みに関しては他部署の協力が必要になります。
「そこは私の専門外だから」と丸投げせず、そして「自分が主体で実施している」という意識を失わず、社員の方々が登壇や資料提供をしやすいように「なぜこの活動を行うのか」「何を話してほしいのか」というベースの資料や情報を用意した上で依頼することを心がけています。

そういえば、私がお話を伺った時の打ち合わせでも事前に「どのテーマで話せばいいか」とご質問をいただいて小野尾さんご自身も準備されていたな・・・と思いだしました。

こうしたハブとなる人がいるかいないかで企業のSDGsの取り組みの進捗は大きく変わると思います。
小野尾さんは広報のご担当ですが、人事や事業部でももちろんその役割を担うことは可能です。

ポイント3:事業部の「サステナビリティ」に関わる活動についての情報をストックしておき、「自分ゴト化」してもらう

サステナビリティ活動や事業を新しく始める際、社員の多くからは「よくわからない」「プラスアルファの取り組みはコストがかかる」と敬遠されがちです。
そこで小野尾さんが取り組んだことが、本社などからリリースされるサステナビリティ関連の情報収集を怠らないことです。

グローバル企業だと海外ではやっているけど日本ではまだやっていないことや、日本のマーケットでは実施が難しいグローバルの取り組みがあると思います。
そのため、日本の社員が自分の事業部は関係ないと感じてしまう場合があります。
しかしヘンケルはグローバル企業であり、社員はその一員として日本の活動に限らず情報を発信していくことが必要です。
ヘンケル社員として「あなたはすでにサステナビリティに貢献している」ということを意識してもらい「自分ゴト化」してもらうことも協力をもらう際のアプローチに大切になります。

例えば、接着事業部の技術は私たちの生活の中でどこに使われているのか、接着剤がサステナビリティにどう貢献しているのか、イメージしにくい部分があると思います。
そこを消費者目線の身近な事例を用いて紹介することで「自分ゴト化」への一歩になった事例があります。

ヘンケルジャパンは10月末に埼玉県戸田第二小学校にて、サステナビリティクラスを実施しました。
そこで紹介した「① 紙ストロー用 水系接着剤」「② PETボトルラベル用 ホットメルト型接着剤」「③ 包装用荷崩れ防止用 ホットメルト型接着剤」「④ 軟包装用 機能性コーティング剤」の4種類の接着剤についての話は、社内報で紹介したり、授業の様子がTVや新聞で紹介されました。
露出記事などを見たヘンケルジャパンの社員からは「そうやって説明すればわれわれの技術を身近に感じてもらえるのですね」、「他事業部のテクノロジーがどうサステナに貢献しているか知るいい機会になった」、「ヘンケルってすごい!」など、ポジティブな感想をもらい、社内にもいい影響を生むことができました。
ボランティアとして参加した社員が現場で味わった達成感や充実感を同僚に伝えてくれることで、社内インフルエンサーとしての役割を担ってくれると思います。
これらにより、『機会があれば自分の担当している製品についても伝えていきたい』と思ってくれる社員が増えていくと信じています。

図4

事業部がお客様のために提供しているサービスが、見方を変えると実は社会や環境に貢献しているというものは少なくないかもしれません。
そうした活動を発見し、承認することで、いい意味でサステナビリティの取り組みに特別感というハードルが無くなり、社員が取り組みやすくなるということもあると思います。



いかがでしたか?

小野尾さんが実践されてきたことは、いずれも高度な技術や経験を必要とするものではなく、社員みんなが取り組みやすいようにするにはどうしたらいいか、という「社内コミュニケーション」を考えた結果のアクションだと思います。
また、最初に一緒に取り組みをスタートしやすい人を見極めて実績を作った上で徐々に巻き込む範囲を拡大していっているのもポイントです。

ぜひ皆さんも、参考にしてみてください。

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