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前提を合わせる ということ

異文化理解、異文化コミュニケーションとかいう、留学生が大好きな言葉。そのことについてここ数日で感じたことを、文字にしようと思う。

私が思う異文化理解は、「前提を合わせるための努力を怠らないこと。それができるようにオープンでいること。」だ。今回は、そう考えるきっかけになった最近の2つの出来事を紹介したい。


バックグラウンドに注目したきっかけ


コペンハーゲンについてから1ヶ月ほど経過して友達ができ始めた時、同じように英語で話すにもかかわらず、アジア人が相手の方が話しやすいと感じることが多いことに気づいた。他の日本人も同様に感じているらしい。そこで考えた原因は、アジア人同士はある程度共通の文化を持つからである、というものだ。
例えば、辛ラーメンといえば、あの辛い袋ラーメンということで話が通じるし、ドラえもんといえばあの青いネコ型ロボットのことだ。人によって多少の違いはありながら、同じ知識を共有している。

しかし、相手が欧米から来ている人の場合、共有している文化は全く異なるものになる。もちろん知っている人も中にはいるが、アジア人の場合と比較して圧倒的に少ない。

オーストリア人とスイス人との会話

オーストリア人とスイス人と3人で小旅行に行った際のことだ。
3人で話している中で、途中から話についていけなくなったことがあった。その時の話の話題は「ヨーロッパの国の中で、住む国と働く国を分けている人がいる」というものだった。よく話題になる議論らしい。

しかし私は、どの国が給与水準が高いのか、どの国が安く住むことができるのか、という前提情報が全くなかった。(これは私の勉強不足による部分も否定できないけれど)
少ししてから、黙って話を聞く態勢になってしまった私を見かねて「話し込みすぎちゃってごめんね。何かわかりにくいところあった?」と聞いてくれたことで、その会話を理解するには「スイスの給与水準は他国に比べて圧倒的に高い」という前提知識が必要であったということを解明できた。

オーストリア人の友人が「そういうことだったのね!話が分からなくなったら、いつでも話を遮って教えてね!」と言ってくれたのがうれしかった。

大学の講義

また別の日。この日は大学で差別について学ぶために特別講師の講義を受けていた。そこで、人種や国籍、宗教がどのように就職活動に影響するのかという実験が紹介された。

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これらの写真の3人の女性が、オーストリアで就職活動をする中で名前(国籍を推測できる要素になる)とバンダナ(宗教を推測できる要素になる)によってどの程度結果が変わるかという実験だ。

この説明を受けた時、私は状況をすぐに理解できなかった。
真ん中の女性の名前にはウムラウト(OとUの上のてんてん)がある。ドイツ語を勉強していた私は、ウムラウトはドイツ語で使われることを知っていた。ドイツ語を公用語にしているオーストリアであれば、ウムラウトのある名前を持つ女性であれば移民ではないはずだから、有利に働くはずである。
しかしながら、一番右の女性は、ウムラウトのある名前を持ち、バンダナをしている。話の流れとしては、この女性は2つのマイノリティ要素を持つはずなのに、これでは筋が通らないと思ったからだ。

そこで、一緒に講義を受けているフランス人の友人に「左2人の女性はそれぞれどの国から来たと推測されるか」と聞いた。すると、「左がオーストリア、右はおそらくトルコ系の名前だろう」という返事が返ってきた。

見事、私の推測は外れていた。

そして、彼女は50人以上いる大教室で手を挙げて上記の認識で正しいかどうか、をプレゼンターに確認してくれた。

「ありがとう。」と私が言うと「この教室に、ヨーロッパから来ていなくて他にもわからない人がいるといけないから😊」と言っていた。かっこいい、、!

彼女のその行動は、知らないことを恥じたり、知らない自分を悪いと思いすぎたりする必要はあまりないと思わせてくれた。そして、自分から認識を合わせに行くことが大切なのだと改めて思った。

最後に

就職活動を始めてから「~というのは、○○という認識でよろしいでしょうか。」と確認することを意識してきた。企業の人事の人に対してはできても、日常生活では怠ってきた部分があったかもしれない。

来週からデンマークではイースターホリデーが始まる。日本の文化にはないイースターホリデーだからこそ、ドイツ人の友人にどのように祝うのかを教えてもらう予定が楽しみで仕方ない。

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