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星の時間に、こんばんは。 ― 福祉の中心でIoTをさけぶ ―

「星の時間て、なんなの?」

「いいか、宇宙の運行には、あるとくべつな瞬間というものがときどきあるのだ。それはね、あらゆる物体も生物も、はるか天空のかなたの星々にいたるまで、まったく一回きりしかおこりえないようなやり方で、たがいに働きあうような瞬間のことだ。そういうときには、あとにもさきにもありえないような事態がおこることになるんだよ。
 だがざんねんながら、人間はたいていその瞬間を利用することを知らない。だから星の時間は気づかれないままにすぎさってしまうことがおおいのだ。けれどもし気がつく人がだれかいれば、そういうときには世のなかに大きなことがおこるのだよ。」

『モモ』 ミヒャエル・エンデ(大島かおり訳)


『モモ』はドイツの作家ミヒャエル・エンデによって1973年1月に世に現れた児童文学作品ですが、年齢を重ねて読んでみると「時間節約を強いる社会に対する風刺のきいた小説」であることも感じます。

経済活動が進めてきた省力化、短縮化、大量生産・消費・廃棄に疑問を提起された当時から47年のときを経て、スローライフやサステナビリティなど別の価値が見直されているように(見直されていたのはもっと前からですが今もなお)、今後の経済活動が進めるIoT [Internet of Things] も同じように疑問を提起されるかもしれません。

親友や家族でもたまには距離を置きたかったり、SNS疲れだったり、介護疲れだったり、監視組織だったり、暮らしのなかで「つながり続けることのしんどさや負の部分」を感じることがあります。IoTは新しいつながりをつくる可能性を秘めていますが、ともすれば「つながり続けることを強いる」ことにもなりえます。

IoTを否定したいわけではなく、つながること、新しいつながりの可能性があること、身体的なつながりをつくれること、これらを支える大切な技術だと感じています。だからこそ、この技術を社会全体でもっと大切に育てていくために何かできることはないかなと考えたときに、ケアやアートの視点からIoTを語りあい、福祉の現場でIoTを積極的に(よく分からないながらも)実践していくことが大事ではないかと考えています。

日々の暮らしや、人の生死に近しい福祉のなかで現れてくるさまざまな出来事に向き合い、新しいつながりを考えて語り、腑に落ちるかどうかをとことん語りあう。ときには「逆に離すことでつながる」「つなげないほうがいいときもある」など「つながらないことの大切さ」についても面とむかって話せるかもしれません。

そんなこんなで、福祉事業所ではたらく3人が IoTについて、いや「新しいつながり」について語ってみようというのが今回のトークです。

星の時間に、こんばんは。― 福祉の中心でIoTをさけぶ ―
2020年10月8日(木)19:00~20:00
https://youtu.be/S_MDJwjOT2g

[話者]
石丸 徹郎(株式会社フォーオールプロダクト/長崎県佐世保市)
池永 健介(NPO法人まる/福岡県福岡市)
小林 大祐(一般財団法人たんぽぽの家/奈良県奈良市)

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自分たちで「福祉の中心」と言ってるのはおこがましいですが、要は福祉現場からIoTを語ろうという意気込みです。石丸さんと、池永さんの立ち位置としては(本当に勝手ながら)次のように考えています。

■石丸さん
「IoTってこういうことかな」と自分なりに再定義しながら模索・実践している人

■池永さん
IoTに興味はあるが「どうしたもんかなぁ」と考えている人

話す流れは次の①~②のような感じです。

流れ① 基調
情報科学芸術大学院大学 [IAMAS]の小林茂さんが再定義した「IoT = 物事をインターネットのようにつないで価値を創出すること」を軸に、何の技術をどう使うかとか、どんな仕事になったか、ではなく、今回は「新しいつながり」の部分にフォーカスをあてて話を深めていければと考えています。このあたりの基調について10~15分ほど小林(たんぽぽの家)から話します。

流れ② 話題提供とディスカッション
石丸さんから下記2つの取り組みやアイデアについて話題提供いただき、池永さんと一緒に深めていきます。
・ 「ふくらむプロジェクト」と遠隔ワークショップ
・ オンライン上の福祉施設

IoTに関する技術的なことは語れないかもしれませんが、福祉現場から考える新しいつながりや、腑に落ちるつながりについては語ることができるかもしれません。

生活すること、表現すること、ものをつくること、他者を気づかうこと、はたらくこと(はたらきかけること)など、福祉の活動から生まれてくる「新しいつながりの必要性」と IoTが実現できる「新しいつながり」がうまくつながるように、語りと実践を続けていきたいと思います。

技術についてのアドバイスや協力は、技術者とも相談しながら実践していき仕事にも展開していく。そんな流れができればなと妄想しています。

そういえば思い出したのですが、

ガートナー ジャパンから「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル2020年」が9月10日に発表されました。

テクノロジのハイプ・サイクルというのは、その技術が「黎明期(形になる前の始まりの時期)」「過度な期待のピーク期」「幻滅期」「啓発期」「安定期」どれに当てはまるかといったものを表した図です。

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目をこらして見てみると、IoTは幻滅期にさしかかっていて、主流の採用まで要する年数(つまり普及するまでの年数)は5~10年を要することが見てとれます。

個人的には「いや、まだ分からなすぎて幻滅すらできないんですけど…」という「告白してもないのにフラれた」みたいな気持ちですが、時代的には幻滅期にきているようです。

「IoTエッジ・アナリシス」は黎明期となっていますが、個人的には「IoT エッジ・アナリシスって何や?!」というレベルです。

ポジティブにとらえると、黎明期や幻滅期の今だからこそ、福祉と技術の関係をしっかりとつくれる時期なんだろうなとも感じます。

疑問を持ったまま安定期にさしかかるともはや経済活動を止めることが難しいことは、今のスローライフやサステナビリティのように大きな社会課題になっていることからも想像できます。

そうなる前にも、福祉の現場からIoTを語り実践する、そんな時間を増やしていきたいと思いますので、今回の3人だけでなく、今後も別の福祉現場の人たちとも語りあいたいと考えています。

(一般財団法人たんぽぽの家 小林大祐)

《引用》
・IoTとFabがめざしたい世界観
https://note.com/_kotobuki_/n/nb712c44ffb37

・日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2020年
https://www.gartner.com/jp/newsroom/press-releases/pr-20200910

・IoTとFabと福祉
https://iot-fab-fukushi.goodjobcenter.com/

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