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言われて傷ついた言葉でも/街なかで段ボール戦争ゲーム! 台湾編①

コロナウィルスの影響のなか、海をこえた海外の福祉団体ではどんな取り組みが生まれているのでしょうか?コロナ禍で考えたこと、実際にやってみたユニークな取り組みなどを教えてもらいました。旅する気持ちで読んでいただけると嬉しいです。

今日は台湾でアート&デザインの視点から福祉活動に関わるデザインスタジオ Sandwishes Studio(サンドウィッシーズ スタジオ)の段ボール兵器で闘う戦争ごっこゲームをご紹介。お話いただくのは代表のHang Li さんです。

砂の数ほどのたくさんの願い

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写真:James Hunt on Unsplash

Sandwishes Studio があるのは台湾タイペイ(台北)市。日本で言うと東京のような首都で、いろんなカルチャーが混じり合う新たな可能性にみちた多文化都市です。

Sandwishes Studio の活動のゴールは一言でいうと”ソーシャルインクルージョン”。

「社会福祉などの現場にアートやデザインを組み合わせることで、社会的に弱い立場にある人も含めて一人ひとりを社会で取り込んで支えあう手助けになること」

約10年前の2012年に設立されたこのスタジオには、アートやデザインの経験をもつ7名のスタッフが働いています。

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写真:Denys Nevozhai on Unsplash

ちなみに名前の「Sandwishes Studio」とは、英語では「砂と同じくらいのたくさんの願い」の意味なんですって。台湾語では「3人のボランティア」の同音異義語になることもあり、当時3人のクラスメートで設立されたことにもかけて、名付けられました。

障害のある人など困難な状況にある人たちと直接働くというよりも、彼らと働くソーシャルワーカーや関係者など外部の人たちを手助けする形で、共同で働いています。

おもちゃの武器と自分を守る防御具

そんなソーシャルワーカーの人からの声がけで、昨年の2020年に一緒に行ったのが、子どもたちのための「段ボール戦争ゲーム」。

台湾では今、貧困の格差がものすごい勢いで進んでいます。

日本でいうと東京のような大都市の台北市では、親が一生懸命働いても生活が苦しい貧しい家庭の子どもたちがたくさんいて、中には両親から暴力を受けていたり、親が片親だったりして支援の手が行き届かないことも。

「子どもたちはどんな気持ちで家で過ごしているんだろう? 」

そんな疑問を形にするために、Liさんたちは声をかけてきた台北にある貧しい家庭を助けているNGO団体と一緒にストリートで、おもちゃの武器を使った子どもたちのための戦争ゲームをすることにしました。

普段はなかなか表に出せない傷ついた心を発散させたり、共有したり、また自分を守ることなどを考えてもらうための仕掛けをつめ込んで。

お金がなくても、日々の暮らしにあるもので生み出せることを伝えたくって

その初めの一歩として、まず近所の市場から“武器“の材料となる段ボールを集めました。

― なぜ段ボール?

「子どもたちには材料など何か手元にはないように思えても、必要なものは自分で工夫すれば日々の毎日から作り出すことでができるんだよ。っていうことを伝えたかった」と Liさん。

おうちにお金がないとつい子どもたちは遠慮したり、諦めてしまうけど、創意工夫をすれば生み出せるものはいつだってあるから。

言われて傷ついた言葉

そして一番最初にやったのは「武器をつくる」ワークショップ。

ソーシャルワーカーと一緒に作った武器(段ボール)に親に怒鳴られたり、傷つけられた時の言葉を書きます。そして自分たちが経験したことや、自分と家族との関係などを共有しあいました。

普段なかなか話せないことを、話してもらう機会を作ってあげたかったそうです。

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家族から言われて傷ついた言葉を段ボールの上に書く子どもたち

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子どもたちが書いた家族から言われた言葉。どんな言葉が書いてあるのか教えてもらいました。「空っぽなやつだ。なんでも参加したがるけど、みんながイライラさせられている。」(手前黒字) 「みんな大人になっているのに、あなたはいまだに遊んでいて、家族の助けになっていません」「お前は弱虫で、臆病で、怖がって一歩が踏み出せない」(奥緑字)

自分と家族というシリアスになりがちな話だからこそ、リラックスしたムードの中で、子どもたちはお互いの経験を共有しました。

自分を守るワークショップ

2番目にやったのは自分を守る防御具をつくるワークショップです。予想もしない傷つくことが突然空から降ってきたとしても自分を守れるように。

子どもたちに自分の親に叩かれたり、しかられたりして、傷ついた時にどんな反応をしたのか書いてもらいました。 

そして書いたことをお互いに共有します。

「とても傷ついた。」と話す子も、「両親は仕事のストレスで自分を叩いてしまっただけで、本当はそうしたかったわけではないってわかっている。」と話してくれる子もいました。

戦争ゲームの始まり!

いよいよゲームの始まりです。ゲームする日は週末を選びました。

みんなで街にでてまず道を清掃。その上で2つのチームに分かれ、お互いに戦います!

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どうやったら相手を叩けるのか。子どもたちはそこだけにとてもフォーカスしていたそう 笑

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意外にも子どもたちは勝ち負けは気にしないで、遊ぶことを楽しんでいました。

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彼はこの地域の村長さんです。この地域で子供たちや家族の世話をする責任があり、普段は地域のニーズに対応しています。当日みんなが楽しそうに遊ぶのをみて村長さんも嬉しそうでした。

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すごい。基地のようなものが出来上がっています、、、!

通りから眺めていた親たちもこの戦争ゲームの様子を見ていたのですが、一緒に参加したそうだったそうです。次回は親たちも一緒に参加できるものを作りたいと願っているそう。

Liさんはいいます。

「このプロジェクトは本当に嬉しかったプロジェクトの1つでした。このイベントの後に、また別の同じような段ボール戦争ゲームの開催が決まったからです。」

「自分たちの立ち位置を考えるいい兆しとなるプロジェクトでした。嬉しかったのは、自分たちがかかわった最初の1回だけで終わらず、一緒に働いたNGO団体はその後も継続してやってくれたことです。しかも自分たちのオリジナルのスタイルに発展してくれました。」

街中で大人も見ている中、思いっきり遊んでいいなんて、すごく特別な息抜きの時間になりそうです。

ところで、「子どもたちも大人もみんな伸び伸びして、マスクをしていないけれど、これはコロナは広まった後の取り組み?」と驚いてしまうのですが、このプロジェクトが行われたのは2020年の夏。日本で1回目の緊急事態宣言が発令されたのが4月なので、世界的にコロナウィルスが広まっていた時期になります。

台湾の徹底したウィルス感染防止策が功を奏して、ほぼゼロに抑えられていた時期です。

海をまたぐだけでこんなに状況がちがうことにビックリ!

その後、今年の2021年5月には台湾にも少しづつ感染者が広がって深刻になっていくので、その辺りの時期の取り組みのお話も次回以降教えてもらう予定です。

今日は台湾よりsandwishes Studio の段ボール戦争プロジェクトのご紹介でした。

↓ Sandwishes StudioのHPです

*この記事はオンラインでの「コロナ禍における障害のある人の仕事づくり情報交換会」イベントの番外編です。「同じ状況だった海外の団体にも話を聞いてみよう!」と今年の1月〜7月にかけて、たんぽぽの家事務局スタッフ数名がSandwishes StudioのLiさんと話したやりとりをまとめたものです。

(Uga)

* 本事業は休眠預金を活用した事業です *

「コロナ禍を契機とした障害のある人との新しい仕事づくり」は休眠預金等活用法に基づき、公益社団法人日本サードセクター経営者協会 [JACEVO]から助成を受けて実施しています。

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