ひらけごま6

ACTIVITY | 東京 - IoTとFabと福祉 -

「IoTとFabと福祉」をテーマに、日本各地ではどのような実践が行われているのでしょうか。2019年7月26日~27日に開催した座談会で話題にあがった内容をもとに各地の活動を紹介します。

一般社団法人障害者・高齢者3Dプリンタ・ファクトリー」は、一人ひとりのニーズに対応するグッズを3Dプリンタを使って当事者が自分たちで楽しくつくること、さらには当事者だからこそわかる視点や工夫を生かす職種の事業化を目的に設立しました。法人そのものは2017年10月に設立していますが、活動はさらに4年前の2013年、香川県高松市から始まっています。

福祉事業所として先駆的に3Dプリンタを導入し、事業所本体が3Dプリンタ事業を廃止したことをきっかけに、福祉の領域を超えて「カガワ3Dプリンタfunコミュニティ」を2015年に設立し、地域イベントやカルチャー教室での体験講座など継続して活動しています。そこから活動の事業化にむけて一般社団法人障害者・高齢者3Dプリンタ・ファクトリー(以下、ファクトリー)を設立しました。

ファクトリーは全国の共同受注センターになりたいと考えています。「こんなものをつくってくれ」というニーズを全国から集めて、3Dモデリング・プリンティングすることを障害のある人や高齢の人の職業にすることを成り立たせようとしています。

「こんな不便を改善したい!」「こんなものはつくれないか?」など相談がありましたらぜひ気軽にお問い合わせください。

3Dプリンタで不便改善グッズ「置きBOX」

とはいえニーズは簡単には集まらないので、富山の薬売り商法のように、3Dプリンタで出力した道具を10個ほど置いて、先に使ってもらうことでニーズを顕在化する「置きBOX」を実施します。

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私たちはいま、この「置きBOX」を東京・香川・島根・大阪の4つ地域で、障害/高齢福祉施設を対象に始めようとしています。

東京では社会福祉法人東京聖労院が運営する特別養護老人ホーム桐ヶ丘やまぶき荘医療法人社団福啓会東京訪問歯科センターの協力のもと高齢者施設に、香川では高松市にある脳性マヒ二次障害を考える会の協力のもと当事者の人たちに、島根では島根県立大学人間文化学部の西村健一准教授を中心に雲南市の協力のもとホールでの展示から、そして大阪では高槻市にある自立センター前穂の協力のもと当事者の人たちに、それぞれ「3Dプリンタで不便改善グッズ置きBOX」を設置する予定です。

島根では養護学校の生徒向けに3Dプリンターを使った生活支援具をつくっています。たとえば、ここに3Dプリントに関連する企業と協働することで、材料や品質をあげ、生活に必要なものをつくることと、3Dモデリングを障害のある人や高齢の人の仕事にすることに拍車がかかると感じています。

「置きBOX」の実現にむけて、以下のパートナーを募集していますので、ぜひ関心のある方はご協力ください。また関心のありそうな方にご紹介もいただければ幸いです。

①「置きBOX」制作パートナー
 ・置きBOXの箱のデザイン、制作
 ・10種類の試作品 企画設計・3Dモデリング
 ・10種類の試作品 3D出力

②「置きBOX」設置・運営(情報収集)パートナー
 ・設置場所の提供
 ・試作品を使用した人たちへのヒアリング

③収集した情報の分析パートナー
 ・収集した当事者ニーズのデータ解析と販売
 ・データを基にした商品開発コンサルタント

④ファクトリー事業全体への支援
 ・ご寄付、ご協賛、開発協力など

【お問合わせ先】
一般社団法人障害者・高齢者3Dプリンタ・ファクトリー
sk3dpfactory@gmail.com 

当事者の視点や工夫を生かす職種の事業化

生活を便利にする「ちょっとした」グッズを3Dプリンタでつくることから始まり、自分のためだけではなく他の人の「欲しいモノ」をつくることに展開し、個人事業主として売上をたて、当事者が開発に携わったモデルが商品化された場合の権利ルールを整備して収益を得る仕組みづくりをしたいと考えています。

以下の写真は、脊髄性筋萎縮症(SMA:spinal muscular atrophy)の女性が3Dモデリングソフトを覚え始めて1ヶ月で自分でつくったものです。

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彼女にとっては、これが毎日の暮らしに必要で、それを自分でつくることができました。こういうものに出会ったからこそ私たちは今の団体を立ち上げています。私たちが思いもよらない形、用途、困りごとなど、まだ福祉市場のなかで顕在化されていないものをつくり続けます。ちなみに、このグッズの名前は「ケラレ君」。

昨年、東京の福祉事業所で週2回3Dプリンターについてレクチャーしていました。そのレクチャーを受けていたメンバーではなく、その横で別の作業をしていた2人(自閉症の人、知的障害のある人)が、自主的に3Dモデリングを勉強し、2週間くらいでモデリングソフトのFusion360を覚えて複雑な形までできるようになっていました。「どうやって覚えたのか」と尋ねたら「インターネットで見てつくりました」とのこと。このような人たちに仕事のフィールドをつくりたいと思いファクトリーは活動しています。

福祉市場だけを考えても、全国の特例子会社(461社 ※2017年6月時点)とその親会社、高齢福祉施設、障害福祉施設、特別支援学校、そして外出することが難しい人など、当事者が必要とするアイテムは様々にあるため、仕事となるフィールドもたくさんあると考えられます。

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総合商社のような仕組みの必要性

ファクトリーだけでなく、「IoTとFabと福祉」プロジェクト全体として1つの会社にして、「IFF(IoTとFabと福祉)総合商社」みたいに進めたほうがもっとパワーがでるのではないかとも考えています。

全国各地の事例を知ると、デザイン、各種素材の加工、商品化、ライセンス、販売方法、販路拡大など、連携することができると思います。仕事のメニューづくりに困っていたり、働きがいのある職種に困っていたりするところは多くあります。

また、業務運営(機材の知識や操作、モデリング、メンテナンスなど)で困っているところも多くあります。業務運営のサポートの事例として、今年7月からDMM.makeとXYZ社が7月に新しいサービスも開始しています。大型3Dプリンターなど装置を購入後の管理・運用・保守の全てを代行したり、投資リスクを削減するためのレンタルなど、業務運営に関して企業も動いています。 

3Dプリンタと素材・マテリアルは発展し続けるのですが、当事者にとって大切なデータは誰かがつくらないといけません(AIがデータを生成するといった話もありますが横に置いておきます…)。

メンテナンスのためだけに何万円も払って人は雇えないけど、仕事をつくりだすために、データ設計、デザイン、販売などをチームとして仕組みをつくることが大事だと思っています。

【参考URL】
■一般社団法人障害者・高齢者3Dプリンタ・ファクトリー
 https://sk3dpfactory.jimdo.com/

■IoTとFabと福祉 - 東京 -
 https://iot-fab-fukushi.goodjobcenter.com/area/tokyo

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