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Vol.7 地域のものづくりを豊かにする、沖縄発アップサイクルプロダクトのしくみ

rubodan(ルボダン)は、ダンボールを水に浸して、糊を溶かし、層になっていた紙を一枚一枚の紙にもどし、そこからノートやレターセット、ステッカーなどを作る沖縄発のプロジェクトです。アーティストとして活躍する儀間朝龍(ぎまともたつ)さんに、取り組みをお聞きしました。

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[写真]アーティストの儀間さん。持っているバナナも段ボール!

儀間さんはダンボールをつかった作品で国内外で注目されている沖縄在住のアーティストです。ReebokやBEAMSなど、ファッション・スポーツブランドとのコラボも。取材でお伺いしたときも制作の真っ最中。「家の中が段ボールだらけです」と笑いながらお話ししていました。

― そもそもどんな経緯ではじまったのですか?

2009年に地元沖縄の牧志公設市場で雨に濡れたダンボールに気付いたのがきっかけです。それは糊が溶けて、層になっていた紙が剥がれていたのです。

家に帰り、実験をすると、ダンボールは水に浸けると簡単に一枚一枚にすることが分かりました。そして、それに「SIMPLE PAPER MADE」と製法名を名付け、「これで何かできないか」と、ノートなどの試作品を作り始めました。

幸運なことに2010年にはJICAの芸術家派遣事業に参加させていただき、サモアの小学校でダンボールを使って、ステーショナリーを作るワークショップを行いました。

子どもたちも、先生もゴミだと思っていたものが、使えるものになり、環境にもいい!と感想をいただき、それがきっかけで、2011年にrubodanを立ち上げました。

そこから、沖縄の障がいのある人の就労にもつながるように、製法をシェアして、実際に地域の障害者福祉施設での製品づくりがはじまりました。

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[写真]段ボールを薄く剥がすのにも技術がいる

― ノートやステッカーなど、さまざまなものに展開していますが、最近ではどんな取り組みがありますか?

大人気の沖縄のアイスメーカー「ブルーシール」とのコラボですね。ブルーシールさんで出る段ボールをひきとり、ノートブックやステッカーなどに生まれ変わらせ、ふたたびブルーシール本店さんで販売するという流れです。

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[写真]もともとのロゴマークがしっかりと見えるように

また、製法をYOUTUBEでシェアしているので、ブラジルから突然やっていると連絡があり、アドバイスをしたら製品がぐんとよくなったり。広がりを感じました。

― 最近は製造する施設や販売するショップも増えたのでしょうか?

現在は3施設で製造を行っています。扱っているショップは、札幌、東京、大阪、沖縄、石垣島と少しずつ増えています。

すごい売れているわけではないのですが、興味を持ってくれている方に出会えています。いまは需要と供給がちょうどいいバランスですね。

― 協働する障害のある人たちとの関係はどうでしょうか?

とてもいいです。つねづね、上からお願いして作ってもらう、というよりは、興味をもってやってみたい、という人たちと連携したいと思っていたので、一番うれしいです。私がディレクションをしているので仕上がりの確認などもしますが、ある程度まかせる部分もあります。たとえば柄のとり方などで「これはアウトかな?」と自分が思っても、意外とそれが売れたりするんです。

― 今後どんな展開をしていきたいですか?

さきほどのブルーシールのような、企業連携の事例を少しづつ増やしていきたいですね。

そして、全国でも展開できるような取り組みにしていけたらと思います。

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儀間さんにお話を伺った翌日、rubodanの製造を担っている「障がい者活動支援センター泉崎」を訪ね、担当スタッフの新垣仁貴さんにお話を聞きました。

― 日頃はどんな活動をしているのですか?

おもに精神障害のある人たち約10人と、古紙回収やダンボールのリサイクルの仕事、清掃活動や地元のお茶のパッケージなどをしています(取材した2019年6月時の活動です。現在はリサイクル作業は廃止、EM洗剤の製造販売と沖縄県の委託作業を請け負う仕事などをしています)。

― ダンボール!さっそくつながりますね。

ええ、もともとダンボール回収で、素材自体は身近にあったのですが、その先の可能性があるのでは、と思っていました。儀間さんとは共通の友人がいて、rubodanの担い手を探しているというので思い切って手をあげたんです。

― 現在rubodan製造に関わっているのは何名くらいですか?

メインでは2人、前田さん、神山さんがやってくれています。前田さんは特に全行程を責任をもってやってくれるので頼もしいですね。

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[写真]さすが沖縄。乾燥は外で。すぐに乾きます!

― rubodanに関わって、何か変化はありましたか?

はい、メンバーとダンボール回収にいっても、「この部分使えないか?」など、視点がまったく変わりました。また、前田さんが製造工程で自分でいろいろと工夫しながら方法を編み出しているのが嬉しいです。

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[写真]仕事に誇りを持って取り組んでいます

実際に製造を担当している前田さんの様子を拝見しました。水に浸したダンボールを一枚一枚剥がし、道路で干す作業。イメージしていたものより丁寧に作業をしないと、すぐに破けたり、段ボール同士がくっつきます。干し始めて30分もすれば乾いてしまうのは沖縄の気候ならでは。前田さんは集中しながら、「丁寧にやるのが一番です」と。実直な性格が伝わってくるような作業でした。建物の中では神山さんが裁断の最中。「ずれないように切るのが難しいですが、すぐに慣れました」とのこと。販売店への納品時に同行することもあるそうですが、そこで売れている様子を見るのがいちばん嬉しいそうです。

儀間さん、障がい者活動支援センター泉崎のみなさん、ありがとうございました!

※『障がい者活動支援センター泉崎』は、2020年5月より『福祉サービス事業所あかちち』に名称変更しています。

(取材:岡部太郎)

■rubodan(沖縄)
 http://www.rubodan.com
■ダンボールから紙を簡単に作る製法
 http://www.rubodan.com/simplepaper/

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