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「ヘモフィリアを語る」のデザインを終えて

「ヘモフィリアを語る」というA4版の大きめな書籍を今回作らせていただきました。依頼してくださったのは、2年ほど前に知り合いになったフリーで編集・ライターをされている山本貴緒さん。書籍に携わるお仕事をされているのは知っていましたが、こうしてお仕事をご一緒するのは初めてだったので、声をかけていただいことは喜びでした。

ヘモフィリアというのは「血友病」という生まれつき血が固まりにくい症状を持った病だそうです。私は今回初めて知りました。

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内容は対談形式になっていて、登場される方は専門のお医者さん(ご自身が患者さん)、また一般の患者さん、その親御さん、看護師さん、NPOの方々など、この病に関係する方達の声が集まっています。

読んでみての第一印象は、雰囲気が和やかで明るいことでした。現場のリアルなお話が書かれていますが、それ以上にポジティブワードたちが私にズンズンと響くのです。


「血友病は個性である」

特に印象的だった言葉は、「血友病は個性である」や「アイデンティティ」であると言った表現でした。病気と言われれば病気になる。しかしこれは私の個性なのだとおっしゃっています。

ありがたいことに私には健康で大きな病気をしたこともありません。しかし外側からでは判断しづらいハンデを抱えてる人が存在すること。それを自分の個性であると前向きに捉えられること。それを無理矢理にでなく、ごく自然に受け入れてらっしゃるのが文章から伝わってきます。登場される皆さんがこの症状を真っ直ぐ受け入れて、その上で自分たちらしく生きていることから、人としての強さも感じました。

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そう言ったことも踏まえて「デザインはポップ」にと貴緒さんからお願いをされました。医療にまつわる本だからといって真面目で固い印象はこの内容には合わないということだと思いましたし、私のようにこの病のことを知らない人たちが手にとった時にも、内容とこの本の印象とがマッチしていることが非常に大事だと考えました。


しずく+しずく=ハート

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ヘモフィリアと画像検索をすると血液の滴の形がシンボルとして扱われてることが多いようです。そこでひらめきました。滴と滴と逆さまにして合わせるとハート型に変わることに。ジャストアイデアだったのであくまでもご提案という形で見ていただいたのですが、それが見事採用されまして。あとから思い返しても内容をうまく表すいいアイキャッチになっているなあと。自分自身でもいいものが生み出せたという実感を持っています。この病に関するポジティブさや他者に対する思いやりが感じられる本であるからです。

背景は紙の白ではなく、少し温かみのあるオフホワイトにすることで柔らかな印象を与える工夫をしています。思い返せば私は最近これをよく多用しています。「柔らかい」「温かい」「優しい」という雰囲気が今のトレンドでもある気もします。そして洒落て見えるのもこの色味の良いところです。(写真では再現しきれておりませんが…)



血が自然と固まるということのありがたさ

先日、私は運動会のお父さんリレーで起こるような激しい転び方をしました。4箇所擦りむいて、そのうちの1箇所は私的に重傷でした。大判のキズパワーパッドが1日でパンパンに膨れ上がり血液やら体液が漏れ出るほどでした。しかしその瞬間に思ったことは、「自分の体は自分の力で治っていく力を与えれている」ということでした。皮膚が再生するまでに10日ほどかかりましたが、それでもゆっくりと着実に自力で治っていったのです。血液は外から入った悪い菌と闘ってくれたし、傷を塞いでくれ、なくなった皮膚は薄くゆっくりと作られていきました。この本に携わったからこそこのことが当たり前でなく、こんなにもありがたいことなのだと教わる機会になったのでした。


印刷〜流通

最後にちょっと専門的な話ですが、印刷はネットプリントのグラフィックさんで行い、直接クライアントさんへ卸されました。通常本の印刷となると、大手印刷会社さん→取次さん→書店さんという流れで皆さんのお手元に届きます。この本は市販はされないそうなので、このような形でコストと時間の節約が実現するのはいいことだと思います。今はネットで本の制作ができる印刷サービスが揃っていて、編集者さん、ライターさん、デザイナーさんとフリーで活動されてる方たちも多いですから、そう言った人たちと組んでオリジナルの本を作って流通させていくのもいいですよね。「個人で本格的な本を作ってみたい!」となれば、印刷屋さん製本屋さんと協力してさらに技巧を凝らした本を作っていくことだって可能です。これまでは出版社さんとのお付き合いがほとんどの私ですが、こうして個人が繋がっていって自由に制作する時代がどんどん増えていくことに希望を感じています。

それでは今回はこの辺で。
いつも良いお仕事をいただき感謝です。
携わってくださった皆さんどうもありがとうございました。


おわり

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