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2020年度フォーカス・イシューのテーマを発表しました

こんにちは。グッドデザイン賞事務局です。
2020年度グッドデザイン賞の応募受付は、一昨日(6/2)で終了しました。
たくさんのご応募ありがとうございました!

速報値をみると、このような社会情勢のなか、昨年と変わらない数の応募をいただいていて、改めて、デザインによって暮らしや社会をよりよくしていくためにできることを考え、実行していこう、と事務局一同気持ちを新たにしています。

そんな2020年度グッドデザイン賞は、昨日から一次の書類審査期間をスタート(〜7/1)していて、その後二次審査に進んだデザインを対象に、愛知県国際展示場で実物による審査を行い(8/18〜20)、10/1の受賞発表に向けて進んでいきます。

2020年度グッドデザイン賞スケジュールはこちらから

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昨年度の二次審査会場風景

改めて、フォーカス・イシューとは


グッドデザイン賞では、このような審査の過程を通じて得られた知見やインサイトを共有する方法の1つとして、賞を通じて「デザインが社会においてできること」を示していくために、「フォーカス・イシュー」という取り組みを行っています。

フォーカス・イシューでは、2015年度から毎年、グッドデザイン賞審査委員による特別チーム(フォーカス・イシュー・ディレクター)を編成し、審査ユニットを横断して応募対象を観察しながら、受賞デザインに込められた意図を読み解き、社会課題解決に繋がるヒントを見出して、提言として発表しています。

これまでのフォーカス・イシューの提言はこちらからご覧ください


2020年度テーマを発表します

そして、このたび今年度のフォーカス・イシューディレクターとテーマが決まりましたので、紹介します。

2020年度フォーカス・イシューテーマ/ディレクター
しくみを編むデザイン / 内田 友紀さん
つながりを広げるデザイン / 川西 康之さん
とおい居場所をつくるデザイン / 原田 祐馬さん
環境改善に寄与するデザイン / ムラカミ カイエさん
新たな社会の道しるべとなるデザイン / 山阪 佳彦さん

今年度フォーカス・イシューのポイントを紹介

この5つのテーマは、各ディレクターが独自の観点から設定したものですが、今回さらに、それぞれがテーマに込めた意図と、特に掘り下げて見ていきたいポイントを明らかにしてくれました。

社会が大きな変革の時を迎えるいま、ディレクターのみなさんが抱えている問題意識と、未来に向けて思い描いているデザインの可能性をご覧ください。

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しくみを編むデザイン
内田 友紀さん

成熟社会である日本のような国においては、風土、習慣、人などの様々な既存の資源を新たな眼差しで捉え直し、次なる価値を作ってゆくことが求められています。折しも、ものの作り方、社会制度、地域のネットワークなど、社会のあらゆる局面でサステナビリティを失っていた既存のしくみのいびつさは、コロナ禍によって大きく認識されました。いまこそ、新たな文化やテクノロジーを組み合わせ、「しくみ」の再構築を考える時ではないでしょうか。
いまある環境を耕し、しくみ同士も組み合わせ、絶えず更新しながら、多様な人がともに新たな価値を生み出し続けるデザインの可能性を後押ししてゆけたらと思っています。

つながりを広げるデザイン
川西 康之さん
デザインに期待されていることのひとつに「課題を解決できるか?」という問いがあります。これは、私たちの文化的な生活・生命を維持する上で必要なポイントです。単独での課題解決は厳しいものの、広くつながりをつくり、多くの人たち・団体から少しずつ手を差し伸べてもらえれば、解決することは多い。ただ、より多くの人たちに気付かせ、惹き付け、振り向かせ、さらに手を伸ばし続けてもらうための、持続可能性の担保はとても難しい。そこにデザインが期待されています。
経済や政治ではどうにもならない課題を解決する手段としてのデザイン、これが「つながりを広げるデザイン」です。

とおい居場所をつくるデザイン
原田 祐馬さん

新型コロナウイルスの流行以降、誰もがアクセス可能な居場所だけでなく、誰かと誰かが繋がれる小さな居場所から、特定の興味やマイノリティの人たちが繋がれるようなものまで、もっと繊細にかつ大胆に考えていく必要があると思うようになりました。高齢の人、障害のある人、養護の必要な子どもたちなど、あまり外からは、見えなくなっている人たちの生活を支えるようなデザイン。そこから、「とおい居場所のデザイン」という言葉が出てきました。
親密に近しいものを守ろうとする世界と、SNSなどで知らない人たち同士が争っている世界。ファクトとフェイクが混じり合ったような複雑な世界で、生きる居場所について考えてみたいと思っています。

環境改善に寄与するデザイン
ムラカミ カイエさん

コロナ禍で世界の経済活動がストップするなか、私たち人類は多くの行動変容を求められましたが、同時に、水の都ヴェネチアではエメラルド色の運河が蘇り、インドでは数十年ぶりに200キロ離れたヒマラヤ山脈がくっきりと見晴らせるようになるといった「環境問題が改善された世界」の一端を一時的に垣間見ることになりました。英国の環境メディアCarbon Briefによると、今年の温室効果ガスの排出量は昨年比で16億トン減少(これは約3億5000万台もの車が減ることに相当)しますが、危険な気候変動を食い止める指標である毎年22億トン減少の目標にはそれでも遠く及びません。
経済だけでなくクリエイションやプロダクションの場が物理依存型から仮想空間にシフトし、オンライン上のプロダクションが介入することによって、環境問題を考慮した仕組みの実装もより加速化していきます。そんな時代の新たなモノの在り方や仕組みについて、掘り下げていきたいと考えています。

新たな社会の道しるべとなるデザイン
山阪 佳彦さん

世界中のすべての人が当事者となった新型コロナウイルスは、人類がはじめて経験した共通の脅威。戦争や震災や原発事故にさえも、どこかで他人事だった人たちにも、今回ばかりは自分ごととして、生き方を見つめるきっかけを投げかけました。これまでの常識が通用しなくなったとき、人はどんなベクトルで、どんな経路で、どんな未来に向かうのでしょうか。SDGsはもちろん大事?社会やひとは、どっちへ進む?どんな道順をたどろう?
先が見えない時代にこそ必要なコンパス。指針になるデザインが、未来へと踏み出す勇気をくれるのではないかと思います。

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2020年度フォーカス・イシューは、最終的にはディレクターによる提言及び、グッドデザイン賞発のキーワードとして、広く社会へ発信します。
今後の展開にご期待ください!