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最終的なゴールは「スケスケ化」 互いをほめ合う「ほめ活」で高める社内のコミュニケーションと結束

企業・団体名

株式会社コラボスタイル

取り組みの概要

「他者貢献」や「ありがとう」の共有を目的として 、互いにほめ合う活動「ほめ活」を実施。専用の管理アプリとして「ほめアプ」をサイボウズ社の kintoneで構築し、社内全員で共有。業務をしている中で誰かを「ほめたい」という気持ちになったときに、このアプリに投稿していく形で運用している。

このほめ活自体がこれまで部門間でのコミュニケーション不足を解消し、お互いに腹を割って話せる環境づくりに役立っている。またこのコミュニケーションから新機能の開発案が生まれるなど業務面でのプラスにもつながっている。

取り組みへの思い

「だれかに助けられたことを多くの人に知ってもらいたい!その人の良さを伝えたい!!」と部内のエンジニアが声を挙げたことがきっかけで、「ほめ活」が生まれました。その人の「人となり」を「ほめ」として発信し、他部署に頑張りを伝えたいという思いがスタートでした。

ほめ活を全社で行うことにより、他部署の「ほめ」も見える形で共有されるようになりました。また、ほめ活をきっかけに新たな会話の発生を促し、話す機会が少なくなりがちなテレワーク下でも、コミュニケーションが活発になっています。
(石川ナナさん/株式会社コラボスタイル 開発部)

▲今回インタビューに応じてくれた鬼頭さん(左)、石川さん(右)

開発チームで始めた「ほめ活」を全社に

オフィスワークを効率化するワークフローシステム「コラボフロー」の開発・販売を行っている株式会社コラボスタイル。「ワークスタイルの未来を切り拓く」を理念として掲げる同社が自らの社内で取り組んだ「ほめ活」と、その活動を全社員で共有するためのアプリ「ほめアプ」。誰かが誰かをほめるという行為は何をもたらしたのか。

システム開発系企業という特性かつコロナ禍で更に進んだリモートワークの中で生まれた「ほめ活」、きっかけはひとりのエンジニアの提案によるものだった。

声を上げやすい「肯定ファースト」の社風がほめ活を実現

株式会社コラボスタイル開発部でエンジニアとして働く石川ナナさんが同社に入社したのは2021年1月。未だ続くコロナ禍の最中かつエンジニアという業種の特性もあり、初めて本社に出社したのは数カ月後という状況だった。

「入社した時点から、開発部の中ではもっと自分の言いたいことを本音で言えるようにならないと良いチームにはならないよねという意見がありました。私自身、これまでの他社での経験も含めて、腹を割って話せる環境を作りたいと考えていました。そういった環境を作るには?というところがほめ活の出発点になっています」(石川さん)

ほめ活は、仕事を進めていく上で助けてくれた、手伝ってくれた、教えてくれたといったことを共有する活動。業務上の評価には一切影響しない。社員全員が使用しているサイボウズの業務改善プラットフォーム「kintone」上に、ほめ活を投稿・管理するアプリ「ほめアプ」を作成することで、全社員に「ほめ」を共有している。

▲実際の「ほめアプ」画面

2022年1月、こうして始まったほめ活は、開発部からの発信で実施した。

「営業などの他の部署、全社的に広げていきたいと考えたときに、私たち開発部からこれまであまり接点がなかった営業部の方にいきなり『何でも言おうよ』というのはちょっと違うなと。まずは自分たちの活動を他の部署の方に広めていこうと。始めるにあたっては、何のためにほめアプをやっているかを皆に知ってもらわないといけないと思っていました。白紙の状態から『こういうアプリ作ったからみんなほめてね』と言っても絶対にやってくれないだろうと思ったので、『こういうものを全社展開したから、みんな開発部の中のことをほめてくれ!』という、いわばサクラ的な形で1レコードずつ投稿しました。それも、『テンパっているときに助けてくれた』といった些細な内容にしました」(石川さん)

これらの投稿がほめアプに対するハードルを下げることになり、スタート時点から各部署からの投稿がポンポンと出てくるようになった。それにしても、入社早々の1エンジニアのアイデアを会社が全社的に採用することはあまり一般的ではないように思える。そこにはコラボスタイルの社風も大きく関係しているようだ。

「弊社が特殊なのかもしれませんが、誰かが声を上げればまずは『肯定ファースト』というスタンスで話を聞いてくれます。だから言えたというところはあります。ちゃんと筋が通っていれば認められやすい社風、積極的に取り組もうという下地です。ほめ活がこの会社に必要だと思いましたし、それがちゃんと伝わったから実現できました」(石川さん)

▲ほめた後にはさまざまなダイアログが現れる工夫も

入社したばかりの社員の正論でぶちかましてほしかった

ほめ活を運用するアプリ「ほめアプ」をkintone上で作成したのは、当時石川さんの直属の上司だった鬼頭昌孝さん(開発部)である。

石川さんがほめ活を提案する前段階には、鬼頭さんの思いがあった。開発と営業をはじめ、部門間の情報共有はマネージャークラスに限られ、社員同士が直接接する機会は少なかった。

社内でのコミュニケーションを密にしたい、風通しの良い業務環境を作りたいと考えていた鬼頭さんは、入社したばかりの石川さんに別の部署のミーティングに参加してもらった。他部署の社員がミーティングに参加するというのはコラボスタイルの中で日常的に行われていることではあったが、鬼頭さんはそこに参加する石川さんにミッションを与えていた。

「マネージャーとしてチームの雰囲気を見たときに、お互いに意見を言い出しにくい空気がありました。石川さんに他部署のミーティングに参加してもらうことでチーム内のコミュニケーションに関する課題点を感じてもらい、それを率直にチームで話してもらいました。ジョインしたばかりで現状に染まっていない石川さんに、正論をぶちかましてもらって、変化のきっかけにしてもらいたいという意図もありました(笑)」(鬼頭さん)

鬼頭さんの思いは、石川さんのほめ活というアイデアに形を変え、チーム内にとどまらず全社的な取り組みとしての提案となった。鬼頭さんはほめ活という活動自体をどう見ていたのか。

「弊社は『ワークスタイルの未来を切り拓く』を企業理念として掲げています。今回の活動もその考えに通じていて、コロナ禍もありいろいろな働き方をしている人がいる中で、まさに新しいワークスタイルを補完するものであると考えています」(鬼頭さん)

モチベーションアップ効果と「機能要望アプリ」

ほめ活、「ほめアプ」が開始してから1年弱。社内での認知が定着した現在は、各部署、各チームからの状況報告が活発になり、全社的な情報の共有に役立っている

開発部からは「◯月◯日にコラボフローの新機能として■■をリリースしました。担当は△△さんです。新機能でこれまでよりもこんなふうに使いやすくなりました。ほめてあげてください!」、

営業部からは「今月、新規クライアントとして☓☓社さんが契約されました。担当は▲▲さんです。売上もこれだけ上がっています。▲▲さん、お疲れさまでした!」といったように、特に月次の報告がまとまる月初には投稿が連なるという。

こういった報告は単に情報の共有だけではなく、それぞれのモチベーションアップにつながっていると石川さんは言う。

「開発側の人間からすると、どんなクライアントさんに使ってもらえて、どのくらいのユーザーさんが増えてという話を聞けるのは、自分たちが関わった製品がどう使われているのかが目に見えて実感できるので、とてもやりがいを感じられます。」(石川さん)

マーケティング・広報チームの水野雅元さんも効果について実感している。

「コミュニケーションが深まったと同時に、それぞれのモチベーション向上にもつながっていると思います。営業側からの報告の際にも、単に数字を説明するのではなく、『こういう機能が評価されました』といったように、誰かをほめたり何かをほめるような形の報告にすることで、部門間の協力で結果が出ていることを伝えるようにしています」

▲「ほめアプは社員のモチベーションアップにつながっている」と語る

ほめ活により社内コミュニケーションのハードルがさがり、各部門間でのキャッチボールが一杯になった。この機に、新たに運用を開始したのが「機能要望アプリ」だ。営業の現場から上がってきた機能改善に関する要望を開発部と直接ディスカッションすることができる仕組みである。現状の課題、問題点を指摘するものでもあり、ともすればネガティブな内容になる可能性も含んでいる「機能要望アプリ」だが、ほめ活を通じてコミュニケーションが向上した現状なら生産的な議論ができると石川さんは考えている。

「ほめ活を始める当初も、並行して課題点を指摘し合う『モヤモヤ』というアプリの運用を考えていて、開発部内で試用も行いました。ただ、ネガティブな内容は当時なかなか上げづらく、数も集まりませんでしたが、ほめ活で社内の空気感が変わった今、『機能要望アプリ』はポジティブに活用することができています」(石川さん)

ほめ活の先にある「情報がオープンになる」というゴール

良いこと尽くしのほめ活。社内コミュニケーションが向上し、風通しの良い空気感も生まれた。コラボスタイルとしては、何を理想としているのか。

「先を見据えることも重要ですが、日々のほめ活ももっと充実させたいです。結果だけを見るとなかなか評価されづらい人がいたとして、『この人実は自主的にこういうこともしていますよ』というように、見えづらい個々のがんばりを共有していきたいですね」(鬼頭さん)

最終的なゴールは情報をオープンにすることです。私たちは『スケスケ化』と呼んでいます」(石川さん)

同社の考えるオープンというのは、「見ればわかる」ということだという。それぞれの業務や製品、置かれている状況などがすべて共有されている状態である。

「スケスケ化に向かっていく中で、ほめ活はあくまで入り口だと思っていますが、これからも社員みんなのそばにほめ活があれば、私は勝ちだと思っています(笑)」(石川さん)

WRITING:斯波 戌

※ 本ページの情報は2022年11月時点の情報となります