【超短編小説】25点中の1点
昨日の春高バレー一回戦。
私の学校は苦戦しつつも相手を退け、二回戦にコマを進めた。
試合が終わった瞬間、私は仲間たちと喜びに浸った。
だって全国の舞台で勝てたのだから。
私はほとんど試合に出ていないけれども。
でも、主力じゃなくても凄く嬉しかった。
なぜなら、私もベンチでみんなと一緒に戦っていたから。
試合中は全力で応援した。
味方が点を取ったときは大声で喜び、点を失ったときは全力で励ました。
私だけでなくほかのベンチメンバーも。
ベンチも一体となって試合に臨めていた。
でも、本音を言えば、私もコートの上でたくさん活躍したかった。
たくさんスパイクを決めたかった。
そうなるために、3年間朝練も欠かさず参加して、地味なトレーニングもさじを投げずに取り組んできた。
でも、結局試合に出れたのは2回だけ。
しかも、どちらもワンポイント起用で即交代。
しかし成果はあった。それは、1ポイント決められたこと。
そのときは、つい舞い上がってしまいそうになった。
でも、試合はまだ中盤。ほかのメンバーはもう次に切り替えていた。
なので、私も浮つくわけにはいかなかった。
私の唯一の成果はそれだけ。
つまり、次に進めるのは主力メンバーのおかげ。
私は、ただキャリーされて、良い思いをさせてもらえている一番おいしいポジションなわけである。
自分を恨みたくなる。
なんで、私にもっと才能がないのかと。
楽をすればするほど自分が嫌いになる。
そんな昨日のことを思い出しながら、私は体育館に向かっていた。
すると、ばったり顧問の先生と鉢合わせた。
先生は私を褒めてくれた。
でも、私は到底嬉しいわけはなく、つい反発してしまった。
私はほとんどベンチに座っていて、何もしていないと。
すると、先生はこう言ってくれた。
試合はみんなの頑張りを積み重ねていくことで、勝利という頂点に届くことができる。
吉田さんの1点がなければ、あと数センチのところで勝利には届かなかったかもしれない。
たかが、1点などではない。
飛ばすことのできない勝利への階段に、その1点があったからこそ、私たちは辿り着くことができたのだから。
私は周りを気にせず、泣いた。
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