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#1 なぜ那智勝浦なのか

ご存じの方もそうでない方もいるかと思いますが、8月に和歌山県那智勝浦町に移住して、10月頃におにぎり屋さんを始めようと今準備中です。なお、とても長い記事になる予感がするので、時間があるときにコーヒーでも片手に眺めるのをおすすめします。

簡単に自己紹介をすると、三重県伊賀市出身で、2023年7月に約3年間勤めた星野リゾートを退職し、那智勝浦町に移住した25歳の左利きです。

そして、那智勝浦に移住して、一番良く聞かれるのが、「なんで地元ではなく那智勝浦でおにぎり屋さんをするのか?」という質問。

米農家として

私の実家は代々続く米農家。といっても年間2.5トンほどの生産量で大規模農家というわけではありません。米の消費量は年々減少傾向にあり、消費者としてそれを実感することはなかなか難しいのですが、生産側にたってみると、付近の田んぼが年々耕作放棄地が増えてきていたり、農協による米の買取価格が年々減少していたり、一方で農薬は価格高騰だったり、、。

米だけに限りませんが、生産者はどの分野でも今はとても苦しい状態にあります。私の実家も例外ではなく、毎年生産量が減少しています。小学生の頃は1週間位かけて家族全員で田植えや稲刈りをしていた記憶があるのですが、今年は2日間ですべて刈り取ったそう。
米の消費量が減少すると、米農家として収入が減少してしまうということはもちろんですが、田んぼが減少しているともとれるので、里山の原風景が減ってしまったり、貯水機能を果たしていた田んぼが減ることで、水害が起きやすくもなるのです。

少し話は戻りますが、私は米農家としての実体験もふまえ、お米の消費量を今よりも向上したいと思っています。理由はとても簡単で「美味しいお米だから」。
美味しいからこそみんなにもっと食べてほしいし、お米をたくさん食べることで、農家さんや地域全体を応援することにもつながると思います。
農業従事者の平均年齢は年々増加しており、どれだけ美味しいお米を作っていたとしても、その価値を既存の販路以外でみなさんに届けることはできません。

ホテルマン時代


もともと、「農家や地域を観光を通して元気にしたい」という思いが大学生くらいのころからあり、新卒入社で星野リゾートを選んだのも同じ理由でした。私はリゾナーレ那須という栃木県の施設で働いており、「アグリツーリズモ」という直訳すると「農業×観光」というコンセプトの施設で、アクティなどを担当していました。

お米の学校というイベントの様子(たぶん今でもHPで見れるはず)

しかし、実際に働いてみて感じたことは、観光客との距離は近いが、地域との距離が遠く、星野リゾートが那須にあることで地元の農家さんや那須という地域全体が元気になっている実感がなかったということ。
そもそも大前提としてホテルという職場であるため、まずは宿泊に来てくださったゲストに満足してもらうことが重要ではあるのですが、自分の中での目達成に向けては、とても遠回りしている気がしていました。


学生時代


大学は京都府山科区にある京都橘大学というところに通っていました。結果的に在学中4年間で6回ほど那智勝浦に来ることになるのですが、そのきっかけは大学1回生の夏に学会の研修で那智勝浦に訪れたことでした。夏休みを使って4日間ほど那智勝浦に滞在するのですが、研修という名目ではあるものの、実際には現地の方と少しお話をして観光をして帰るという内容です。

初めて那智勝浦に訪れた大学1回生当時の藤井。
今では考えられないくらい短髪だしメガネもかけてない。

今でもよく覚えてますが、初日の夜にホテル浦島で懇親会があり、そこで地元の方とたくさん話す機会がありました。那智勝浦町の観光における現状や地域住民の高齢化、災害についてなどその日初めて会った自分にこの地域のことをありのままに話してくださったことを覚えています。そこから、学会の研修が終わってから京都に戻っても、何名かの方とは交流が続き、その年の秋に開催された天空ハーフマラソンに出場したりもしました。最初はなんの思い入れもなかった町ですが、何度か訪れていくうちに、とても好きな町になっていました。

「なぜ那智勝浦町なのか」


一番最初に戻りますが、「なぜ那智勝浦なのか」と聞かれて、私が答えるのは「ソフトの部分」に惹かれたから。大学生のときに訪れて以来、ずっと気にかけて連絡をしてくれる地元の方や、訪れるたびに面白い人に繋げてくれる方。いつしか那智勝浦へ行くことがとても楽しみでワクワクしている自分がいました。

ちょうど昨日、大学生が複数名那智勝浦町に研修で来ており、そのうちの1名と話す機会があったのですが、まだうまく言葉にはできないものの、彼も「なんとなく都会と比べると那智勝浦の方が温かく人柄が良かった。」と話しており、大学生の頃の自分と少し重なるところがありました。

よく「うちの町にはそんな移住してくるような魅力はないよ」と聞きますが、この那智勝浦町は実際に移住してくる人や、移住はしていないけど定期的に町に遊びに来てくれる関係人口の状態の方が本当に多いと思います。
移住を決定ずけるハード的な魅力は無いのかもしれませんが、個人的にはそれを上回るソフトな魅力がこの町にはたくさんある気がしています。

地元でおにぎり屋さんを開業することももちろんできましたし、金銭的な部分で考えてもそのほうが良いです。ただ、大学を卒業して社会人になり、一度那智勝浦町との関係が薄くなりました。しかしホテルで働いてみて、自分が実現したい目標に対してなかなか近づくことができない、そして心のどこかで学生時代の那智勝浦での思い出が残っており、このまま関係性が途絶えてしまうのがすごく寂しくなりました。

そういった理由が重なり、「お世話になった地域への恩返し」という思いも込めて、那智勝浦に移住し、おにぎり屋さんを始めることにしました。

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