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22.癌を知ったその日から


私たちは 別居した。

主人は 治療に専念するため
東京へ行くことにした。

その日の朝
荷物を持って 普段と変わらず
『行ってきます』
と出ていく後ろ姿が 堪らなくて
主人に抱きついた。
そっと 抱きしめ返して

『ちゃんと治して帰ってくるから』

と言って 部屋をあとにした。

さあ、娘には なんて伝える?
運良く(?)
大学に通うため
東京で 一人暮らし。

でも この緊急事態を
伝えないわけにはいかない。

夫婦で 散々考えた。

なんの答えもでない。
出るわけない。

そんな中、東京のある喫茶店へ
娘を呼び出した。

主人の顔は
強張っていた。

私に “癌” である事を
告げた時以上に つらい顔をしていた。

そんな横顔を見ながら
私の手は震えていた。


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