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33.娘への愛②

こんなに娘のことを愛しているんだ。


私たちは 娘の家へ 向かった。

もともと 返信が遅いこともあって
会う約束をしたあとは 連絡をとっていなかった。
それに
少しおかしくなっている娘

『今回は来れるよね?』

なんて 聞けなかった。

タクシーの中で 良からぬ妄想だけが どんどん膨らんでいく。
声に出さないと その不安に押しつぶされてしまいそうだった。

主人も 
『そんなことないよ』
『寝てるんじゃないか?』
『大丈夫だよ』
と 言っていたが 
前のめりに座っている姿で 
言葉とは 反対の気持ちでいるのだと
波紋のように伝わってくる。

娘のアパートの前に着いた。

部屋は カーテンが半開き、電気は点いていなかった。
来ると思っていたから 娘の部屋のカギは持っていない。
オートロックのため 部屋の前まで行くこともできない。

ただ2人で 部屋を見上げるだけだった。
もちろん 電話もSNSも返信はなかった。

すっかり陽は落ち 温度も下がっていた。
どれくらいそこに 2人で立っていたんだろう・・・。

『とりあえず ご飯でも食べてこようか?
その間に帰ってくるかもしれないよ』

なだめるのは いつも主人。

寒空に長い時間立っていた 主人の体調も心配になっていく。

すっかり 食欲をなくした私たちは 
目に入った居酒屋にとりあえず入った。
心配で 沈んでいる気持ちに このお店は合わなかった。

そこで なにを話したか 
何を食べたか 全く覚えていない。

『また行ってみて 1時間待っても帰ってこなかったら 今日は帰ろう』

身体が温まるほど
お店に居られる余裕もなく
一段と寒くなった外気温は
不安な気持ちを さらに膨大させた。


期待むなしく 
やはり娘の部屋は 暗いままだった。

つづく

https://note.com/good_koala45/n/nc98e1d36cd77?sub_rt=share_pb








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