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『聖痕の超共感者(エンパス)』あらすじ&1話

~あらすじ~
女子高校生のミヤコは、超常的存在『魔軍』に襲われ命を落とした。
ミヤコの魂の前に現れた『マグダラのマリア』が、私の願いを聞けば運命が変わると告げる。

「聖女となり、神の子である『光の子』と
神を裏切る『呪いの子』の戦いを止めろ」

仕方なく了承したミヤコにマリアは「人の痛みを我が物とする『超共感』を託す」と言う。

ミヤコが生き返ると、まだ魔軍が暴れていた。
するとミヤコの手と頭に傷が現れ光を発する。
それこそ光の子の痛みと力を再現する、超共感――
魔軍は光の中で消滅した。

そこに霊的国防組織籠目<かごめ>の者達が現れ、ミヤコを保護。
籠目に入ったミヤコは、彼らと共に聖女として光の子と呪いの子を追う。

■プロローグ・渋谷・高架下
  輝く光の下にたたずむ、甘南備 かんなび みやこ(通称ミヤコ)の後ろ姿。
  その掌からは血が滴っている。

ミヤコM「すごく痛い……すごく苦しい……」

  人より巨大な、爬虫類のような怪物、
  バジリスクがミヤコを見据えている。

ミヤコM「けど、人が痛いぐらいなら――」

  瞳から血を流し、手を拡げ、光を浴びるミヤコ――
  磔刑を受けたイエスの似姿。

ミヤコM「――自分が痛いほうがいい」

■渋谷・街中(数分前)
  若者が行き交うスクランブル交差点。
  真ん中で外国人旅行客らしき年配の男性が戸惑い、立ち尽くしている。
  人混みの中、チョロチョロ小動物のように、
  器用な動きで近づいてくるミヤコ。

ミヤコ「(にっこり)渋谷はじめてですか?」

男性「……?」

ミヤコ「ふぉろみーですっ」

  ミヤコ、男性の手を握って移動する。

   ×   ×   ×

  交差点を脱出し、歩道で去っていく笑顔の男性に、
  手を振っているミヤコ。
  満足ドヤ顔でいると、スマホに着信が。
  すぐに出るが、「ミヤコー!」という大声に耳が痺れる。

友人(声)「急ぎなよ、映画はじまっちゃうよ」

ミヤコ「ご、ごめん。ちょっと急用があって」

友人(声)「どうせ迷子のおじさんでも助けててたんでしょ」

ミヤコ「うっ」

友人(声)「ったく相手構わず人助けばっかして。いつか利用されるよ、その性格」

ミヤコ「あはは。そんな大げさな……」

  そのとき、背後から悲鳴が。
  ミヤコが振り返ると、バジリスクが路地裏から現れ、
  女性を踏み潰している。

ミヤコ「(スマホを落とす)ひっ……」

友人(声)「ミヤコ!? ミヤコッ!!」

男A「ま……『魔軍まぐん』だ……!」

  バジリスクと目が合うも、恐怖で固まるミヤコ。
  咆哮をあげ、暴れるバジリスク。

T『バジリスク』

  その足下にいる小学生の男の子、青ざめて動けない。
  ハッと気づいたミヤコ、次の瞬間には弾けるように走り出している。
  男の子の手を握り、

ミヤコ「逃げて!」

  走ろうとするが、男の子は動かない。
  振り向くと、バジリスクの巨大な爪。

ミヤコ「間に合わない……!」

  ミヤコ、瞬時に男の子を突き飛ばす。
  振り下ろされる爪、ミヤコの心臓を直撃。

ミヤコ「あ」

  無情に噴き出す血。
  ミヤコの瞳から、光が失われる。

ミヤコ「人って、こんな簡単に……」

■地獄の断崖
  横たわっているミヤコが、目を覚ます。

ミヤコ「……あれ」

  崖の上で体を起こし、周りを見渡すが。

ミヤコ「私、死んだんじゃ……?」

  崖の下には真っ暗な、荒涼とした大地。
  切り立った岩山、血のように赤黒い空。

ミヤコ「ど、どこ、ここ……」

声「ここは、地獄の入リ口」

ミヤコ「(振り返る)!」

  ミヤコの傍らに女性が立っている。
  香油壺を手にし、ローブを羽織ったマグダラのマリア。
  後光を浴び、その様は神々しい。

マリア「ようこそ甘南備都。私は救世主の復活を見定めし聖女、マグダラのマリア」

ミヤコ「(見とれて)マリアさん……綺麗なひと……い、いやそれより、地獄って!!」

マリア「そう、この先は最も罪深い者が落ちる最下層。死した貴方の魂は、そこで永遠の責め苦を受けることでしょう」

ミヤコ「う、うぇぇ……本当に地獄なんだ……私、そんな悪いことしたかな……」

  ミヤコ、何か思い出そうと必死。

ミヤコ「昨日、電車で男の人の足踏んだやつかな……痛がってたしなあ」

マリア「……受け入れるのが早いですね」

ミヤコ「受け入れてるわけじゃないんですけど、死んだのは確かですし」

マリア「いいえ、その余裕は私と同じ役目を持つ証――その宿命を持つ者は、あらゆる痛みを覚悟する心を持つのです」

ミヤコ「はあ……そこまで強メンタルなつもりないですけど」

マリア「そんな貴方が私の願いを受け――私を正式に継いでくれるのならば、運命も変わりましょう」

ミヤコ「願い……?」

マリア「貴方は、聖女として蘇るのです」

ミヤコ「せっ……聖女……」

マリア「ええ、聖なる女として、世に魔軍がはびこるのを防ぐために」

ミヤコ「ちょ、ちょっと待ってください、話についてけません! 聖女ってのもなんか恥ずかしいし」

マリア「(聞いてない)魔軍――それは貴方も知る通り、ここ数年で現世に現れるようになった、人に害を為す魔的な軍勢」

  周囲の光景が、様々な神話の怪物=魔軍が溢れ、
  荒れる東京のビジョンに。

マリア「もうすぐ彼らが、世界を覆い滅ぼす」

  傷つき、泣き叫ぶ人々。

ミヤコ「(愕然)魔軍が……世界を覆う……!」

マリア「詳しい話をする時間はありません。今、魔軍を止められるのは、聖女の覚悟だけなのです」

ミヤコ「いやあの、やっぱ急に言われても」

マリア「できないのならば」

  周囲が地獄の光景に戻る。
  さらに亡者達のうめき声があふれる。

マリア「地獄で永遠に苦しむしかない」

ミヤコ「う……選択肢ないじゃないですかあ」

マリア「では、やるのですね。聖女ミヤコ」

  悩むミヤコだが、亡者の声が止まない。

ミヤコ「……わかりました。やりますよぅ、 聖女でも魔女でも……」

マリア「よく決意しました。聖女の道を歩く貴方には、他者の痛みを我が物とする超共感<エンパス>の力を授けましょう」

ミヤコ「エンパス……また変な属性が」

マリア「戻ればその意味がわかります。さあ、光の子に倣いて、復活なさい」

  ミヤコの体が光の粒子に包まれる。

ミヤコ「わ……!?」

  足下から消えていくミヤコ。

マリア「まあどちらの道を選ぼうとも、地獄には変わりないのだけど」

ミヤコ「へ」

  ミヤコ、聞き返しながら完全に消える。

■元の渋谷の街並み
  ハッと気づいて起き上がるミヤコ。

ミヤコ「本当に生き返って……」

  顔を上げるが、そこには爪を振り下ろそうとするバジリスク。

ミヤコ「……って、何も状況変わってない!」

  避けるミヤコ、男の子の泣き声。
  先ほど助けた男の子が転び、足を怪我して座り込んでいる。
  ズキン、と痛むミヤコの足。

ミヤコ「!? この痛み……!」

  苦痛に耐えながらも、歩くミヤコ。

ミヤコ「あの子の痛みが……私にもわかる! これが、エンパス……」

  男の子を睨み、向かうバジリスク。

ミヤコ「…………」

  それ以上、何も起きない。

ミヤコ「(叫ぶ)……わかるから何ー!?」

  号泣する男の子、焦るミヤコ。
  そのとき、背後から銃声が。

  振り向くと、バジリスク相手に、
  光明真言こうみょうしんごんの梵字が刻印された特殊拳銃を向けている、
  金髪の女性――タオ。
  その傍らには若い青年、犬束いぬづか

ミヤコ「……!? だ、誰?」

  犬束、インカムで誰かと話しながら。

犬束「現場にて魔軍を確認しました」

タオ「分類は――『バジリスク』か。伝説の蛇の王、救世主に倒される、悪の象徴――いいねレアだね、わっくわく」

犬束「……不謹慎ですよ。任務中です」

タオ「わーってるって。それじゃあどどんと」

  改めてトリガーを握る手に力を入れるタオ。
  バジリスクと睨み合う。

タオ「討伐行動に移行しま~す!」
               
                               続く


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