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学生の特権

結果白々しく「あれ!帰ってきてたんだ!気付かなかった!」と祖父に話し掛ける。やはり「学校行ってないのか!?」と一喝。

二限終わりだと嘘をついて意気揚々と車に乗ったら今度は帰宅した母と丁度鉢合わせてしまった。最悪。母にも同じ嘘をつき、海に行くと宣言すると異様に心配された。約束の時間までもう間もないので大丈夫大丈夫と流し車のエンジンをつけた。

大きめの車に平日の真昼間に高校生もどきが乗っているのもおかしなもので毎回不思議そうな顔をされた。

高校生の時のようにマクドナルドでハッピーセットを頼んだ。あの時と違うのはドライブスルーであることくらい。道に迷いながら勝浦まで車を走らせた。

着いた時にはもう17時半過ぎ。日は落ちかけ、黄昏時であった。車のドアを開けると2月には珍しい暖かな陽気と共に潮風を感じる。
地元は海がない為2人して気分が高揚した。

写真を撮ったり駄弁ったり、海をただ眺めるだけがこんなに楽しくて落ち着くものだとは思わなかった。心が窮屈になったら海に来ようと決めた。火をつけて海を眺める。

高校3年生の夏。いつもの友達達と江ノ島に行ったことを思い出した。江島神社のお金入れは誰も入らないしその帰りの道で買ったラムネは噴き出すし、拭くものなんかない癖に手を繋いで海へ飛び込んだ。車は無いのでバスや電車を乗り継ぎ、それで行けないところはタクシー代を皆で割り勘したり、歩いたり。不便益だからこそ思い出に残るものがあったんだ、あれは青春と呼べるものであったのだと今になって思う。

とっくに日は暮れてしまったので車に戻った。友達が運転すると言うので任せ、帰りに渋谷でも寄るかという話をしていた、が、事故を起こした。

母に電話をかけると、一言。

「海に行くって言った時に嫌な予感がしたんだよね。」

その言葉で家を出る前異様に心配していた母の理由が分かった。

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