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大人になるということ

「まだ子供だな〜経験が足りないんだよ」とついていたお客様に言われた。

ラストのお客様で、最初はうまい棒なんかのよく分からない話をして盛り上がってハイタッチなんかしてワンタイムを過ごしたのだが、延長の言葉を皮切りにしんみりと人生観の話が始まった。

期待しちゃいけないんだって学びました。とその言葉を呟いた私に、お客様はその言葉を笑いながら伝えてくれた。
自分でも子供だと思う。たまに大人だねと言ってもらえるけれど、大人ぶってるだけでふた周りも長い年数を生きている人に経験で叶うわけがない。

けれど、あの彼氏の経験は出来ないと思う。お互い前向きになろう、頑張ろう、元に戻ろう、ちゃんと治そうと言われ距離を置いて誓った言葉の裏で何人もの女の子に話しかけ浮気をしていた。
知らなくていい事もきっとある、浮気をしたいなら私にバレない様に、するなら墓場まで持って行ってくれと伝えた私に真っ直ぐ、そんなことしないしバレなきゃ良いなんて考えもしないと伝えてくれた彼は何処へやら。そんな諸々。

全てを知らないと思っている彼は涼しい顔して久しぶりと喫茶店へやって来た。

彼の呪縛あっての今の私である。好きだったことに間違いは無いし、重ねて嘘をついていたとしても少しの期間でも本当にお互い好きでいられた時間はあったのだと思う。全て経験だ、と今は思えるけれど、あの時は今以上に子供だったのかもしれない。彼を純粋に信じて心から思う気持ちは子供だったのかもしれない。そう考えると今の私は少しでも大人に近づけたのだろうか。

そんなことを考えながら送迎の車から降りてコンビニで軽食と、お酒を買った。未成年であるが故、免許証はあるが見せられたものじゃない。お財布はあるのに免許証は無いですと嘘をつくのに気が引ける。

煙草やお酒は普段、周りに買ってきてもらっていた。年齢確認をされる事で、お前は子供に見えるとレッテルを貼られた様な気持ちになってしまう。現段階子供であるしお酒を買える年齢でもない、が10代と20代の狭間、大人に見られたい時もある。こういうのが子供なんだろうなと思いながら年齢確認のボタンを押した。

コンビニを出て煙草へ火をつけ、好きな曲を流しつつお酒片手に家路を辿った。

嫌な事は出来たら経験したくないし、全て経験だと割り切るのも難しい話かもしれない。本当は子供か大人かだなんて重ねた年数でしか証明できないのかもしれない。

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